イナズマイレブン1・2・3!! 雷電真太郎伝説 作:睾丸Jリーグ
いつもは高飛車な夏未が見せたしおらしい姿に、興奮した栗松がなぜか目金に覆いかぶさろうとするという一幕もありつつ。
相変わらず校内のグラウンドを借りられなかった雷門イレブンは、特訓のために河川敷のグラウンドへとやってきていた。
「なあ、この中に必殺シュートが打てるヤツはいないか?」
そしてボールなどを準備し終えたところで、雷電から突然声がかかる。
(あの時、デスゾーンを止めた感覚。忘れないうちにモノにしておきたい)
必殺シュートを前にすれば、あの極限状態での動きを身体に落とし込むことができるかもしれない。
雷電が新たな肉体操作を会得するにあたって、その行程は必須事項だった。
「そんなヤツがいたら、帝国戦でとっくに打ってるでやんすよ……」
「まあ、ゴール前までたどり着けたとも思えないけどねぇ!」
嫌味なことを言い合う栗松と目金をよそに、何やら考え込んでいた様子の風丸が声を上げる。
「いや、それなら。───おーい、円堂!」
そうして風丸に連れられてきて、事情を説明された円堂は、どこか恥ずかしそうにはにかむ。
「いや、あれは昔ふざけて作ったヤツで……」
「それでも、必殺シュートには変わりない。……どうだ、雷電? 試しに円堂のシュートを受けてみる気はないか?」
「ああ! 願ってもないことだ!!」
「……そんな良いもんじゃないんだけどなあ」
ぶつくさ文句を言いながらも、ゴールに陣取った雷電の前に、円堂はボールを置いて───
逆立ちすると、そのままコマのようにに回転し始めた。
「むっ!?」
(なんだ、あの無駄しかない動きは…!?)
「いくぞぉ───【スピニングシュート】!」
奇っ怪な動きとともに放たれたボールは、強烈な回転によって不規則な軌道を描きながら、ゴールに向かって飛来してくる。
「む───ぅっ!?」
その予想外に珍妙なシュートに目を奪われていた雷電は、その場から動くこともできず───ボールはネットに突き刺さった。
(……なんだ、これは)
単なる力押しではない、キーパーを惑わせるような未知の必殺シュートに、雷電は頬が吊り上がるのを感じた。
「円堂───もう一度頼むッ!!」
「え、ええーっ!?」
その後、スピニングシュートの動きが理解できなくて、雷電から何度も何度も必殺シュートをせがまれた結果。
「お───おおっ!?」
高く高く足を振り上げると、ボールに青く光るエネルギーが収束する。
そのまま蹴りつけると、更に光量を増したボールはまっすぐゴールネットに突き刺さる。
円堂は、なぜか新しい必殺シュートまで習得してしまったのだった。
「───!! 円堂、俺にもその技教えろ!!!」
そう言って胸ぐらを掴み上げながら詰問した染岡が、円堂から聞き出したコツをもとに見よう見まねでシュートを放つと。
ゴ、オオォッ───!!!!
円堂の時と寸分違わず青いエネルギーが発生し、彼は必殺技をあっさり成功させてみせた。
「〜〜!! ヨッシャアァ!!!!!!!!」
しかし、染岡のシュートには、なにか獣の咆哮のような残響が伴っていたような気がしたものの。
とにかく、ついに念願の必殺シュートを手に入れたと拳を突き上げる染岡をよそに、目金がフチなしの眼鏡を光らせる。
「ふふん。先程とは打って変わって全く無駄のない動き……【グレネードショット】と名付けましょう!」
「……おお! いいな、それ!」
思わぬネーミングセンスを発揮する目金に、雷門イレブンが軽く湧いたところで。
「……なあ、円堂。
───お前、フォワードに転向するべきなんじゃないか?」
「えっ───」
雷電が突然言い放ったその言葉に、場の空気が一瞬止まる。
「…なっ、い、いきなり何を言うでやんすか、このデカブツ!!!
確かに、この前の帝国戦ではオマエが活躍したでやんすが、チームの要はキャプテンでやんしょ!?」
それまでの雷門サッカー部では有り得ない大胆な発想に、思わず栗松が口角泡を飛ばして雷電を詰る。
「……チームの要が、必ずしもゴールキーパーである必要はない」
「そ、それは……」
「……いや、もちろん言いたいことは分かっているんだが。
───ハッキリ言って、今の雷門には決定力が足りない」
「なッ!? テメェ、この俺じゃ不満だって言いてぇのか、アァ!?」
掴みかからんばかりの勢いで詰め寄る染岡にも臆せず、雷電は冷静に言葉を返す。
「……もっと言えば、豪炎寺が居てもなお足りない。
必殺シュートを打てるメンバーが少なすぎて、2人にボールが渡らなければその時点で詰みだからだ」
「そ、それは……」
「この問題は、2種類のシュート技を使える円堂がフィールドプレイヤーになるだけで、一気に解決に近づく。
常に3人分のパスコースを潰していられるほど、DFも暇じゃないからな。
どうだ、効率的だと思わないか?」
顔に見合わず流れるような雷電の説明に、雷門メンバーは思わず考え込む。
「……しかし、その作戦ではキーパーがもう1人必要になる。誰が円堂の代わりをやるんだ?」
「……円堂。さっきのシュートをもう一度打ってくれないか?
───今度は、オレに向かって」
「───」
その言葉を待っていたとばかりに動き出した雷電は、サッカーボールを手に取ると、未だ考えに沈む円堂に声をかける。
雷電が放ってきたボールを反射的に受け取ってしまった円堂は、
なぜか余裕の笑みを浮かべて待ち構えている雷電の方に顔を向けると、渋々シュートモーションに入った。
「……行くぞ」
「うむ、来いッ!!」
「食らえッ!【グレネードショット】ッ!!!」
エネルギーの高まりから青い燐光を纏ったボールが、砲弾のような勢いで雷電に向かって飛んでいく。
空気を切り裂くような甲高い音とともに飛来するシュートに対して、雷電はグッと脇を締め───その大きな腹を突き出した。
「……は?」
「───ムゥンッ!!!!!」
───モニュッ。
気絶していてデスゾーンとの対決を見ていなかった円堂の、あっけに取られたような声をよそに。
脂肪と筋肉がふんだんに詰まった雷電の腹は、障害物にぶつかってもなお進もうとするシュートの推進力にも負けず、
その場で1歩も引かずに受け止め続ける。
両者はそのまましばらく拮抗して───ついに、雷電の腹がシュートの勢いを殺しきった。
「───」
「…どうだ。円堂には及ばないかもしれないが、代わりくらいは務まると思わないか?」
「「「……」」」
心なしかカッコつけながら向けられた、雷電渾身のドヤ顔には、誰一人として目を向ける余裕などなく。
仮にも必殺シュートが
実のところ、
円堂のシュートのみならず、帝国学園の切り札である合体技すらも難なく止めた雷電のプレーは、
超次元サッカーの常識から大きく逸脱したものだった。
「えっ、ちょ、はぁ……?」
目金が思わずと言った様子で漏らした声が、静まり返った河川敷に響き渡る。
こうして、円堂が正ゴールキーパーの座を退くことになり。
その後釜には、不敵な笑みを浮かべたデカブツ、雷電真太郎が収まることとなった。
§§§
悪魔のビラ配り作戦を自信満々に実行してしまうような頭の弱い雷電が、
どうして突然こんな筋の通ったことを言い出したのかというと。
「なあ、冷泉んんん……!!」
「…………なんだ、気持ち悪い」
自分のおつむの出来が相当悲惨なものであると自覚した雷電が、仲間内で1番頭が良い冷泉に泣きついたからだった。
「…………お前、こんな脳みそでどうやって雷門に合格したんだ?」
「む? そんなもの、当然スポーツ推薦だ! 受験勉強なんて全くしていないぞ!」
「…………」
スポーツ推薦の弊害に、頭を痛ませつつも。
以前、偶然に円堂のスピニングシュートを見かけたことがあった冷泉の作戦に全のっかりする形で、
雷電は見事に正ゴールキーパーの座を勝ち取ってみせたのであった。
相撲部唯一の有能イケメンキャラ、冷泉