イナズマイレブン1・2・3!! 雷電真太郎伝説 作:睾丸Jリーグ
そして、尾刈斗中との練習試合当日。
「「「───えぇっ!?」」」
当たり前のように豪炎寺を連れて現れた雷電に、どうやって説得したのかと皆が詰め寄る一幕もありつつ。
今度こそ全員で対戦相手を迎え入れた雷門イレブンは、頬に簡素なフェイスペイントを施した、どこか顔色の悪い男性に声をかけられた。
「練習試合の申し出を受けていただいてありがとうございます…!
尾刈斗中サッカー部監督、
実のところ、尾刈斗中は"申し出"とは名ばかりの
「……」
そんなことなど聞かされていない円堂は、それでも愛想よく微笑む監督の目元に色濃く刻まれたクマを見つけ、
彼らがオカルトに傾倒しているという噂は事実なのだと確信した。
「……不気味だ」
ぐるぐる巻きの包帯に御札、火のついた蝋燭。
そんな監督が引き連れる、いかにも怪しげな装飾が目につく尾刈斗イレブンを見て。
長髪を垂らした陰気な男、影野から思わず声が漏れる。
「お前が言うなって……」
その自分の容姿を棚に上げた発言に、呆れた様子の半田から半目で見つめられつつ。
長い髪に覆われた影野の目線は、異様なオーラを放つ対戦相手に、警戒するような色を宿していた。
§§§
「君が豪炎寺くんですね? 帝国との試合で見せた、あのシュート!見させていただきました。
今日は、お手柔らかにお願いしますよ…!」
整列する雷門イレブンのもとに地木流が歩み寄ってきて、その慇懃な声を響かせる。
「ふ、ふふ……」
その背後では、尾刈斗イレブンの面々が不気味な笑みを浮かべてこちらを見つめていた。
これからサッカーが始まるとは思えないほど湿度たっぷりな空気感に、ギャラリーから戸惑いの声が上がる中。
雷門のキックオフで、練習試合が始まった。
「───こっちだ、少林!」
「はい、染岡さんッ!」
「……ふ」
前回の帝国戦とは違い、しっかりパスが通る。
いくら超次元サッカーとはいえ、やはり簡単にパスカットを成功させてしまう帝国の方が異常だったのだと内心安堵しつつ、彼らは細かくパスを繋ぎながら攻め上がっていく。
軽快にパスを繋いでいく雷門イレブンに対し、なぜか大して焦る様子を見せない尾刈斗の面々に疑問を覚えながらも。
ゴール前に到達した染岡は、新たな必殺技をお披露目しようと足を振り上げる。
「うおおおっ!【ドラゴンクラッシュ】!!!」
極太の青い光線が、龍とともにゴールへ向かって一直線に進んでいく。
「なっ───【キラーブレード】ッ!!!」
すると、豪炎寺以外から放たれた必殺シュートに驚いた様子の相手キーパーがとっさに手刀の構えを取り、
そこにエネルギーによる刃渡り15cmほどの青く透き通った刀身が形成される。
勢いよく振り下ろされた腕と正面から激突したシュートは、コンマ数秒だけ拮抗した後、あっさりと手刀を弾き飛ばし───
「ゴォォォォルッ!!! 雷門、鮮やかな先制! 染岡の必殺シュートがキーパーを打ち破りましたァ!!!!」
「ッシャア!!!! どうだお前ら! この俺、染岡竜吾こそが"雷門の点取り屋"だッ!!!!」
「「「す、すっげぇ!!!!」」」
わっと沸き立つ1年の姿を見つめ、ご満悦な染岡をよそに。
顔を覆う仮面に、
「フッ、こんなもんかい? ストライカー」
「……あぁ?」
その言葉が唯一聞こえた染岡は、しかし負け惜しみかなにかだと思ったのか、首を傾げつつ自陣の方へと戻っていった。
そして、試合は尾刈斗のキックオフで再開される。
「…。いつまでも、調子に乗ってんじゃねえぞッ!!!!」
その瞬間、尾刈斗中のベンチから1人の人物が勢いよく立ち上がった。
「思い上がったザコどもには、地獄を見せてやらねえとなァ!?
行くぞテメェらッ!!!───マーレマーレ、マレトマレ…!」
わざわざフェイスペイントを違う紋様に塗り直したらしい尾刈斗中の監督が、
試合前の穏やかな態度をかなぐり捨てて奇妙な呪文を唱え始める。
すると、その声に呼応するようにして尾刈斗イレブンが不規則なポジションチェンジを繰り返し、こちらを惑わすような動きを見せる。
先頭が目まぐるしく入れ替わる陣形に、彼らの首から上だけが瞬時に切り替わっているかのような錯覚を受ける。
「え、あれ…?」
その様子を油断なく見つめていたはずの雷門イレブンは、自分の目がおかしくなってしまったのかとしきりに目を擦り始めた。
「───ゴーストロック」
「な、なにっ!?」
そして、目元に奇っ怪なバンダナを巻いた尾刈斗のキャプテン、
「これは…ッ!?」
雷門イレブンの面々はその場でピタリと止まり、底なし沼に足を取られたかのように動けなくなってしまった。
「フッ……やはり為す術もない、か」
その間を縫うようにして、余裕綽々といった様子の幽谷が、ゆったりとしたドリブルでピッチ中央を突破してくる。
そして、1歩も動けないことに動揺を隠せない様子のチームメイトをよそに、雷電は。
「……む?」
いかにもなんともない様子で首を傾げていた。
「え───」
肝心の相手キーパーにチームの切り札が作用していないというまさかの事態に、幽谷は思わずバンダナの奥の目を見開く。
「……?」
鍛錬の果てに研ぎ澄まされた雷電の強靭な精神力は、オカルトという名の催眠術に付け入る隙を与えなかった。
「…何をしたのかよく分からないが」
そして、正面から向かってくる雷電に気付き、呆然と立ちすくむ幽谷に向かって足を振り上げると───
「むぅぅぅぅんッ!!!」
ズドッッッ!!!!!
いつものように超次元な肉体から放たれた四股踏みで、あっさり相手を転倒させる。
そして、律儀に手刀を切ってから、弾き飛ばされたボールを足元に落とすと。
未だ1歩も動けない雷門イレブンを尻目に、敵陣へとドリブルを開始した。
「なっ!? ───【おんりょう】!」
「ぬるい!」
「うわあああっ!?」
足元に絡みつかれれば、一息に引きちぎり。
「くっ───ド、【ドッペルゲン───うわぁッ!」
「むっ、何かしたのか?」
「ッ!?!?!?」
発動しかけた必殺技の黒いモヤの中を突っ切っても、なんの痛痒も感じない様子で平然と前進してくる。
そうして、尾刈斗DFの必殺技をもろともせず。
雷電は、その下手くそなドリブルで戦車のように敵陣中央を粉砕しながら直進していく。
「こ、これはッ!?!?」
彼らの慌てふためく様は、ゴーストロックが発動した際の雷門イレブンの姿と瓜二つだった。
「むううううっ!!!!」
そして、ペナルティエリア付近から放たれた雷電のシュートはといえば。
枠内に飛ぶ気配すらなく、そのまま脇に逸れていき───直撃したゴールポストをひしゃげさせた。
「「「はァ!?!?」」」
「「「……ヒッ!?」」」
必殺技のエネルギーにも耐えられるように設計されたはずのゴールを、一撃で歪めてみせた雷電の馬鹿力に。
味方からは驚愕の声が、敵からは悲鳴が飛び交う。
「ッ……!?」
いつもやかましく実況の声を響かせる角刈りの少年、角間すら言葉も出ない様子だった。
そんな阿鼻叫喚の中、審判から相手方のゴールキックを宣告された雷電は。
「むう……」
シュートを外したことに肩を落としながら、とぼとぼと自陣ゴールの方へ歩いていったのだった。
ゴーストロック、原理もなにも理解していないただのバケモノに完全敗北