イナズマイレブン1・2・3!! 雷電真太郎伝説   作:睾丸Jリーグ

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作者の内なる肉体戦士が枯渇した結果、まあまあ体調を崩しました。
これからもデブの火を絶やさないように様子を見ながら頑張ります。



雷電十五太郎 セーブは手だろ!腹出すな!

 

 

 フィジカルだけで蹂躙するような雷電のプレーによって、空気が止まった状態のまま。

 ゴールエリアにボールが置かれ、試合は尾刈斗のゴールキックから再開する。

 

「……お、おい、みんな落ち着け!」

 

「あ、ああ……」

 

 しかし、未だ現実を受け止めきれていないのか、ざわめきが飛び交うグラウンドには。

 試合が再開してなお、どこかフワフワとした空気が漂っていた。

 

「くっ……」

 

 そんな状況を仕切り直すように、尾刈斗イレブンはディフェンスラインでゆっくりとボールを回していく。

 

「……ッ、ここっ!!」

 

 そして、その隙をつくようにスライディングを仕掛けたマックスが、敵陣の高い位置でボールを奪ってみせた。

 

「!! こっちだ!」

 

 依然として豪炎寺を警戒する姿勢を崩さない様子の尾刈斗DFに、マックスはボールを染岡へ回す。

 

「……フッ」

 

 ゴール前、フリーでボールを受けて絶好のシュートチャンスを迎えた染岡に、正対した鉈はそれでも不敵な笑みを浮かべてみせる。

 

 そして、水晶玉に手をかざす占い師のように、胸のあたりに構えた両手を動かし始めた。

 

 

「へっ、ここでもう1て…ッ!?

くっ……ド、【ドラゴンクラッシュ】ゥッ!!!」

 

 先の得点シーンと全く同じ状況に、染岡の表情が緩み───鉈の奇妙な動きが視界に入った瞬間、僅かに体勢が崩れる。

 

「───【ゆがむ空間】」

 

 それでもなんとか放った太い光線は、キーパーの両手の間に発生した力場に吸い込まれ、あっさり止められてしまった。

 

「な───」

 

「よし、今度こそだッ!! ───マーレマーレ、マレトマレ……!」

 

 尾刈斗がボールを保持した途端、監督から再び呪文のような声が飛ぶ。

 

 それに呼応するようにして、尾刈斗イレブンが立ち位置を入れ替えながら自陣を駆け上がっていき───

 

「───ゴーストロック」

 

 今回もまた、雷電以外は為す術もなく移動を封じられてしまった。

 

「……そうだ、これこそが尾刈斗のサッカーなんだ。さっきのアレ(ノーダメ爆走デブ)が異常だっただけで…!」

 

 そして、自らに言い聞かせるように小声でブツブツと呟きながら、

 文字通り足止めを食らった雷門イレブンの隙間を幽谷がすり抜けていく。

 

「う、おおっ───!」

 

 流石にもう油断はしていないのか、若干慌て気味なドリブルでさっさと敵陣を突破し。

 相変わらず全く拘束されていない雷電が待ち構える雷門のゴールへと、今度こそたどり着いた。

 

 

「む……」

 

(……今回は前に出ても間に合わないか)

 

 ペナルティエリア外で対応することを諦めた雷電は、真新しい巨大なキーパーグローブに包まれた両手を威嚇するようにバッと広げる。

 

「くっ───いくぞ、【ファントムシュート】ッ!」

 

 その巨体が放つ威容に若干気圧されながらも、決然とした表情で雷電を睨み据えた幽谷は、

 ヒールリフトで軽く浮かせたボールをボレーで蹴り込み───その瞬間、妖しい光を纏ったシュートが幾つもの光球に分身した。

 

「むっ───!?」

 

(これは……まずい!!)

 

 スピニングシュートと同じ、キーパーを幻惑するような必殺技。

 円堂が新たな必殺技(グレネードショット)を習得してしまうほど何度も打ち込んでもらったにもかかわらず、雷電はこの手のシュートに対抗する手段を未だ確立することができていなかった。

 

 打つ手がない雷電は、一か八かで分身したボールの1つに狙いを定めると、

 その軌道上に腹を突き出し───ダミーだったその光球は、触れる寸前で掻き消えてしまった。

 

「なっ───」

 

「ゴ、ゴォォォォルッ!!! 尾刈斗、前半終了間際に1点を返しました! これで試合は振り出しに戻ります!!」

 

 自分がヤマを張った方とは逆サイドのネットに突き刺さったボールを見つめ、呆然と立ち尽くす雷電のもとに。

 キーパーの先輩である円堂が慌てて駆け寄ってくる。

 

「ら、雷電!? 何やってるんだよ!!!! せめて横っ飛びくらいしなきゃ!!!」

 

「あ、ああ。……そう、だよな」

 

(確かに、今回はキーパーグローブもあるんだし、わざわざ腹で受け止めようとする必要って全然なかったな……)

 

 そんな、あまりにも今更なことに彼が思い至ったところで。

 相手に失点を許してしまったという事実が変わるわけではなかった。

 

 

「……やった、あのバケモノから点を取ったぞォッ!!!!!」

 

 今の今まで忠実に守っていた怪しげな世界観すらかなぐり捨てて、幽谷は喜びを爆発させる。

 

 実際は雷電のオツムの弱さが原因だとしても、帝国のデスゾーンを止めるほどのキーパーを破ったことは事実。

 

 

 長年"北東京エリアの古豪"という位置に甘んじている尾刈斗にとって、

 絶対王者・帝国学園に何かひとつでも勝っている部分があるという功績は大きな意味を持つ。

 

 全国大会で優勝し続けている隣接校と比べれば、あまりにもスケールの小さな話ではあったが。

 王者帝国が同じ地域にあることにより、どう頑張っても地区予選で負け続ける40年間を過ごしてきた彼らにとっては、それが全てだった。

 

 

 或いは、彼らがオカルトに傾倒したのも、そして日本では未だ盛んではない必殺タクティクスを生み出すに至ったのも、それが理由なのかもしれない。

 

 その実態は分からないが、源田本人ですらない"帝国のシュートを止めたキーパー"に一矢報いたくらいで狂喜していることを見るに、

 何かしら溜め込んでいるものがあるのは確かなのだろう。

 

 

 …もしくは、単に化け物じみたプレーを見せたデカブツキーパーからゴールを奪ったことが嬉しかっただけなのかもしれないが。

 

 とにかく、先程までの不気味なオーラが雲散するほど爽やかなスポーツ少年らしい笑みを浮かべ、チーム全員がものすごく喜んでいる。

 

 彼らのあまりの温度差に呆然としている、その他大勢の人々からすれば。

 今の状況から読み取れる情報はそれだけだった。

 

 

「やったな、幽谷……!」

 

「ああ、俺たちは成し遂げたんだッ…!」

 

 そんなわけで、どこか浮ついた雰囲気のまま、尾刈斗イレブンは自陣に戻っていった。

 

「……」

 

 ボールを拾い上げながら力なく項垂れる雷電の首元で、形見のペンダントがチャリチャリと乾いた音を立てる。

 

 そして、そのまま前半は終了し、雷門イレブンは同点に追いつかれた形で試合を折り返すことになってしまった。

 

 

 

§§§

 

 

 

「クソッ、どうなってやがるんだ……!」

 

 やり場のない感情を爆発させ、染岡は自身が座るベンチに拳を突き立てた。

 

 それを横目に、風丸が俯いたままボソリと呟く。

 

「突然みんなの足が動かなくなった。…ただ1人を除いて」

 

 雷門イレブンの視線が、ギチギチのペンダントでこすれて赤くなった首の皮膚を気にしている雷電に集中する。

 

「…逆に聞くが、お前たちの方こそどうしたんだ? とくに何も感じなかったんだが……」

 

「「「……」」」

 

 あまりにも超次元すぎる感想に、何かを期待するような顔をしていた一同は諦めたように黙り込んだ。

 

 

 そんな空気をよそに、先程から考え込むような素振りを見せていた豪炎寺がおもむろに口を開く。

 

「……なあ、染岡。後半、最初のシュートだが───」

 

「…あぁ!? テメェ、豪炎寺! オレのシュートじゃ不満だってのか!?」

 

 やっと手にした必殺シュートが早速通用しなくなるという事態に、焦りを隠しきれないといった様子で貧乏ゆすりが止まらなくなっていた染岡が、焦ったように声を張り上げる。

 

 

 夏未にサラッと宣告されてしまったことで印象は薄いが、この試合の勝敗にもサッカー部の廃部が懸かっている。

 そんな状況下での不甲斐ない有様に、彼が焦燥感に駆られるのも無理はなかった。

 

「……いや。それより、シュートの瞬間になにか異変を感じなかったか?」

 

「あん? ……まあ、確かに。軽く体勢が崩れたような気はしたが…」

 

 その予想外の問いかけに、豪炎寺へと詰め寄ろうとしていた染岡は、気勢を削がれたように再びベンチに腰を下ろした。

 

「なるほど。……次にシュートを打つ時、気を配っていてくれ」

 

「…何かあると睨んでやがんだな?」

 

「……ああ」

 

「ケッ、そうかよ……」

 

 再び考えを巡らせ始めたのか、それきり応答しなくなった豪炎寺をよそに、染岡は静かに闘志を燃やしていた。

 

(アレが何なのかなんて分かりゃしねえが、とにかくこの俺がゴールを決める。それだけだ…!)

 

 

「……なあ、雷電。分かってるよな? キーパーは手でセーブするんだ。腹じゃない。……今度こそ、大丈夫だよな…?」

 

 その巨大な顔をしきりに覗き込みながら、円堂が心配そうに声をかけてくる。

 

「……ああ、任せておけ」

 

(本当に何を考えていたんだ、あの時のオレは……!!)

 

 今すぐ巨体を地べたに横たえて悶絶したい気持ちをグッと堪え、雷電は静かに返答する。

 

「本当に、本当に大丈夫なんだな? ……お前がその腹にどんだけ信頼を置いてるのか分かんないけど、キーパーの武器は手なんだよ!

……そうだ、復唱してみよう!せーの、"キーパーの武器は───」

 

「ああ、いや……大丈夫だ」

 

 いっそ煽られているのかと思うほど深刻そうな顔で迫ってくる円堂に、引きつりそうになる表情筋を必死に押しとどめ、雷電はできる限り頼もしそうに見える顔を作る。

 

「ッ───」

 

 そして、それでも言葉を続けようとする円堂に業を煮やしたのか、バッと立ち上がって声を張り上げた。

 

「───みんな、さっきは済まなかったッ!!!!!」

 

「え……」

 

「帝国戦での成功体験があって、咄嗟に手ではなく腹が出てしまったッ!!!!!

しかし、次からは必ず手を使う! 手を使ってシュートを止めるッ!!!

……どうか、どうか信じてくれッ!!!!!」

 

 鍛え上げられた声帯による、グラウンド全体に響き渡るような大声で、雷電は堂々と言い放った。

 

「え、ああ……」

 

 しかし、キーパーとしては当たり前にすぎるその宣言に、ベンチにはどこか白けたような空気が漂う。

 

「……と、とにかく。あのゴーストロックとかいう技が効かないのはお前だけなんだ。後半も頼むぜ、雷電!」

 

 このまま試合が始まってはたまらないと慌てた円堂がそれっぽい言葉をひねり出し、どうにか事態を収めてみせた。

 

 

「……」

 

 それきり誰も口を開かなくなり、なんとも重く沈んだ空気が流れる雷門イレブンに、審判から声がかかる。

 

 そうして、相手のオカルトじみた必殺技に打開策が見つからないまま、後半戦が始まってしまったのだった。

 

 

 




先日、雷電の顔面がオドシシというポケモンにかなり似ていることに気付きました。
下膨れ、鋭い目、変色した鼻、頭部上方の意味不明な突起と全ての要素が一致します。目元に至っては瓜二つです。
雷電とは、類人猿というより鹿のような獣に近い生命体なのかもしれません。
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