イナズマイレブン1・2・3!! 雷電真太郎伝説   作:睾丸Jリーグ

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更新が滞っている間に、この作品が一瞬ランキングに載ったり、イナズマイレブンの映画公開が決まったりと色々なことがありましたが、これからも変わらず頑張るつもりです



雷電十七太郎 主将!無能!ゴボウ!

 

 

 部活動が盛んな学校にしては珍しく、雷門中には朝練の文化というものが存在しない。

 そのため、生徒たちは同じような時間にまとまって登校してくるのが通例だった。

 

 制服に身を包んだ子供たちが談笑しながら歩いてくる、のどかな稲妻町おなじみの光景である。

 

 私立らしく、それなりに立派な校門を埋めつくす程度には、人でごった返している。

 そんな、いつも通りの朝を迎えた雷門中の正門を。

 

「───ぅぉぉおおおッ、フットボールフロンティアァァァ───!!!」

 

 その瞬間、とてつもない爆音が通過した。

 

 

 校門の向こうの方から、信じられない音量の雄叫びが聞こえてきたと思ったら。

 その声の主が、付近の生徒をかき分けながら猛スピードで通り過ぎていく。

 

 道端でヤン車に遭遇した時のような、あからさまに彼我の距離の変化が分かるほどの爆音に、思わず首を傾げながらも。

 

 雷電による騒音被害(デカブツ超次元サッカー)で耐性がついてきている生徒たちは、何事もなかったかのように昇降口を上がっていった。

 

「…………おい、今の。お前のとこの部員じゃないのか?」

 

 その一部始終を、人混みに紛れて全部見ていた冷泉は、ここまで一緒に登校してきた巨漢の膨れた顔を見上げる。

 

「む、あ、ああ。…あれが、ウチのキャプテンだ」

 

 1つの部活に、大声迷惑人間(サイクルホーンバカ)は2人も要らない。

 

 サッカー部内で自分がその不名誉な称号を欲しいままにしている現状には、雷電自身も頭を悩ませていた。

 

 しかし、そんな頭のネジが外れた人物がもう1人、この瞬間に彗星の如く現れてしまった。

 

 その受け入れがたい事実に言葉をつっかえさせながらも、あの一瞬の間にオレンジのバンダナをバッチリ視認してしまっていた雷電は、あの奇人が自身の関係者だと認めざるを得なかった。

 

「あれが、か。……お前、ちゃんとサッカー部でやっていけているのか?

人前であんな大声をあげるなど、まともな人間の振る舞いには見えなかったが…」

 

「……」

 

「…………っあ、すまん。そういうつもりでは…」

 

「……お前がオレのことをどう思っていたのか、今の言葉でよく分かったが。

まあ、大丈夫だろう。そんな似た者同士なわけだし」

 

(だからこそ不安なんだが……)

 

 それきり黙り込んでしまった冷泉の、心配そうな目線には気付きもせず。

 雷電は、キャプテンの奇行の原因でもある、サッカー部のこれからに思いを馳せた。

 

 

§§§

 

 

 フットボールフロンティアとは、中学サッカー日本一を決める全国大会である。

 日本中から名だたる強豪校が集うこともあって、中学サッカー界では最も権威ある大会であることは間違いない。

 

 つい先日まで、部員数が11人にも満たない超弱小チームだった彼らにとって、ここに出場することなど夢のまた夢だった。

 

 しかし、事態はここに来て急転する。

 

「こちらが提示した廃部の危機を、2度も乗り越えてみせたんだもの。……まあ、私からのご褒美よ」

 

 そんな言葉とともに、夏未がフットボールフロンティアの参加費を払ってくれたことで。

 廃部寸前の同好会レベルだった雷門中サッカー部は、いきなりその地方予選に出場する機会を得るところまで漕ぎつけたのだった。

 

 

「みんなッ!! とうとうフットボールフロンティアが始まるんだ!!!」

 

「「「おうっ!!!!」」」

 

 放課後、部室に集まった仲間を前に、感極まった様子で円堂が声を上げる。

 

 その様子に感化されたのか、部員たちの声も自然と揃う。

 

 彼らの間には、夢への切符を手にした者に特有のギラついた熱狂が充満していた。

 

「それで、相手はどこなんだ?」

 

 いつもより心なしか明るい声色で、風丸から肝心の質問が飛ぶ。

 ミーティングの核心に突入したことで、緩みきっていた円堂の表情もキリリと引き締まった。

 

「ああ、対戦相手は───」

 

 今後を大きく左右する、対戦相手の発表を前に。

 雷電イレブンは、一様に固唾を飲んで円堂を凝視する。

 

「「「ッ……!」」」

 

「───知らないッ!!!」

 

 思わぬ肩すかしを食らい、深いため息をついてしょぼくれる仲間たちの様子を見て。

 朝からここまで、何も知らないまま勢いだけで突っ走ってきてしまった円堂は、ただ照れ笑いを浮かべることしかできなかった。

 

 

 その背中に、呆れたような声がかかる。

 

「……野生中ですよ」

 

「え?」

 

 その言葉とともに、1人の大人が部室へと入ってきた。

 

 どこか陰気な態度と、ヒゲの剃り残しが目立つ冴えない顔つきに、明るい茶髪のデザインパーマが不釣り合いな中年男。

 くたびれたスーツの中心には、渾身のおしゃれアイテムであろう気取ったループタイが鈍く光を放っている。

 それに加えて冬海(ふゆかい)という苗字がなんとも哀れなこの人物こそ、かねてより雷門サッカー部の顧問を務めている教員だった。

 

 また、サッカー部の廃部の危機には一切手を差し伸べてくれなかったことで、部員たちからは色々と諦められている存在でもある。

 

 そんな彼は、弱小チームの顧問らしく、運動神経の気配を欠片も感じさせない仕草で眼鏡を押し上げてみせる。

 

「……野生中は、その卓越した身体能力を武器に、毎年フットボールフロンティア関東地区予選でも好成績を残す強豪です。……皆さんに、対抗手段があるといいのですが」

 

「「「……」」」

 

 顧問にもかかわらず、ねっとりした口調で嫌味な言葉をかけてくる冬海に、部室内には早くもうんざりしたような空気が漂い始めた。

 

「む……?」

 

 そして、"卓越した身体能力"という言葉を受けてか、周囲の視線が雷電の方に集中する。

 

「……ああ、身体能力といっても、野生中の特徴はその跳躍力です。彼とはまた方向性が違うでしょうね」

 

 実のところ、雷電の脚力であれば雷門イレブンの誰よりも高く飛び上がることができるのだが。

 そんなことなど知る由もない彼らは、彼の突き出た腹を一瞥すると、揃って雷電から目を逸らした。

 

「……つまり、ファイアトルネードが通用しない、と?」

 

 そんな仲間たちをよそに、風丸が冷静な口調で話の続きを促すと、冬海はもったいぶった様子で口を開いた。

 

「まあ、そういうことです。勝つつもりなら、別のやり方を生み出すべきでしょうね。……無理だとは思いますが」

 

 嫌味な口調でありながらも、彼の言葉は雷門イレブンの問題点を浮き彫りにしている。

 

 染岡や円堂が徐々に育ってきているとはいえ、雷門イレブンは未だ決定力を豪炎寺の空中から放つシュート(ファイアトルネード)に大きく依存している。

 

 全国を見据えて戦っていく上で、彼らは新たな得点源を生み出す必要に駆られていた。

 

「しゃらくせえ! そんなもん、この"雷門の点取り屋"たる染岡様に任せとけってんだ!」

 

 基本的に誰からも呼ばれていない称号を強調しつつ、染岡がバッと立ち上がる。

 

「……でも、こないだの尾刈斗にすら通用してなかったよねぇ」

 

 そんな根拠のない自信を募らせる染岡に、マックスがじっとりと冷たい視線を送った。

 

「次の試合、オレにボールを集めろ! 豪炎寺が使い物にならなくても、雷門には染岡がいるってことを証明してやる!」

 

「……まあ、試合までに新しい技が生まれるかもしれないしさ! とにかく、その答えを探すには練習だ!」

 

 熱血漢な割に、サッカーに関することには案外シビアな円堂が、染岡の言葉を肯定することなくミーティングを締めた。

 

(……オレだって)

 

 その言動の裏には、円堂の『自分も点を取らなきゃ』というFWとしての意識の芽生えが存在したのだが。

 初の大会出場に思いを馳せる他のメンバーからすれば、そんなことは知る由もなかった。

 

 

「───あの。そういえば、なんで冬海先生がそんなに色々ご存知なんですか?」

 

 そのタイミングで、先程からチラチラと冬海の方を伺っていた秋が、おずおずと口を開いた。

 

「これでも、一応サッカー部の顧問なんですがねぇ。…まあ、理由は単純です。

トーナメントの抽選には、顧問が出席しなければならなかったというだけですよ……」

 

 高層ビルの屋上に設置された、吹きっさらしのサッカーボール型オブジェの上で、不気味なうさぎの被り物をしたバニーガールたちが抽選する様子を、監督一同総立ちで見せられただけ。

 そんな意味不明だった開会式の光景を必死に脳裏から振り払いつつ、冬海は自身がまともに顧問の仕事をしていることへの言い訳を並べた。

 

 

「ああ、そういうことなら……」

 

「……」

 

 ここまで説明しないと納得してもらえない背景には、確実にこれまで見せつけてきた顧問としての無能っぷりが響いているのだが。

 そんな日頃の行いからは目を背けつつ、冬海はサッと話題を切り替えた。

 

「ああ、それと。……皆さんにお客さんですよ?」

 

 そんなもったいぶった言い回しで周囲の注目を集めた冬海が、部室に誰かを招き入れる。

 

「こちらの物好きな転校生くんが、うちのサッカー部に入りたいそうなのでね」

 

 その言葉と共に、尖った縦長の頭や土気色の顔がゴボウのような印象を与える、痩身の男が意気揚々と入室してくる。

 

「オレ、土門飛鳥! 一応、DF希ぼ───ふげっ」

 

 

ゴスッ!!!!

 

「……む?」

 

 そして、床にゴミを見つけて屈み込んだ雷電の頭部と激突し、部室の壁まで思い切り吹き飛ぶと、

 壁面をずり下がるように落下し、その場に力なく倒れ込んだ。

 

「「「あっ……」」」

 

「だ、大丈夫ッ!?!? ……って、まさか土門くん…!?」

 

「えっ…知り合いか、秋?」

 

 一瞬止まった空気の後、慌てて駆け寄った秋が声を漏らす。

 

 それにすかさず円堂が反応し、どんどん収拾がつかなくなっていく。

 

 

「い、今、なにが……?」

 

 試合を1度も見に来なかったせいで、この場で初めて目にすることになったおなじみの状況(デカブツ大迷惑)に、冬海は呆然と立ち尽くす。

 

 そんな役立たずには誰ひとりとして目を向けることなく、土門の介抱が進められていく中。

 

(力士と違って痩せ型の場合あんなに吹っ飛ぶとは……申し訳ないことをした)

 

 全ての元凶であるバケモノは、まるでかりんとうのような極太の人差し指でポリポリと頬を掻いた。

 

 

 

 




なんか奇人枠ばっかりどんどん増えていく
それと、なぜかここまで音無の出番が一切ないまま進んできてしまっているのが響いてきたので、次話以降のどこかで既出キャラかのようにしれっと登場させると思いますが、ご了承ください
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