イナズマイレブン1・2・3!! 雷電真太郎伝説   作:睾丸Jリーグ

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自分でも完全にエタったと思っていましたが、奇跡的に次の話を書くことに成功しました


雷電十八太郎 救急搬送! 新入部員・土門飛鳥!

 

 

 

 壁にもたれるようにして気を失っている土門を、円堂がゆっくりと床に寝かせる。

 

 そして、秋が引っ張り出してきた救急箱を、彼の頭の近くにゴトリと置く。

 

「う、ん……?」

 

 すると、その音に反応したのか、土門がうっすらと目を開けた。

 

 

「ッ!! 土門くん、大丈夫!?」

 

 それを見て、真っ先に駆け寄ってきた秋の強ばった表情を、土門は不思議そうな目で見つめた。

 

「いてて……って、あれ、秋がいる。ねえ、これってまだ夢の中?」

 

「夢じゃないよ、もう!! ほんとにびっくりしたんだから…!」

 

 そしてそのまま、何やら面識があるらしい秋と、起きて早々気の抜けるような会話を交わす。

 

「びっくりしたってのは、しばらく会わない間に、オレがこんなイケメンになっちゃったから?」

 

「もう、土門くんったら…」

 

 そんな風に、普段通りに誰にもウケない軽口を叩きながら、土門はいかにも何ともなさそうにひょいと身を起こしてみせた。

 

 

(((((よ、よかった……!)))))

 

 その様子に、どこか硬い表情で彼の様子を見つめていた部員たちは、内心胸を撫で下ろす。

 

 

 壁に当たった時の勢いからして、遮るものさえなければもっと飛距離が伸びていたことは想像に難くなかった。

 

 それだけの勢いがあったし、生半可な人間に耐えられるような威力ではなかった。

 たまたま彼が、雷電によるゴミ拾いアタックに耐えられるだけの肉体を備えた「帝国学園サッカー部出身の一流アスリート(ハイパータフネス・太ゴボウ)」だったからよかったものの、

 もし仮に、ただの「一般参加ヒョロガリ中学生(栄養失調・細ゴボウ)」だったとしたら、部室は今ごろ大惨事になっていたことだろう。

 

 いや、無事だったからどうこうではなく、そもそも入部希望の生徒をこんな目に遭わせている時点で充分大惨事ではあるのだが。

 

 

 これまで数々の問題を引き起こしてきた雷電だが、他の生徒に直接危害を加えるような大ごとに発展したのは初めてのことだった。

 これだけ聞くと、雷電がとんでもない不良生徒かのように聞こえるが、その実態は自分の肉体スペックを理解できていない愚かなデカブツでしかない。

 

 本人の意思で事件を起こさないようにできるだけ、前者の不良生徒の方がマシな気もするが、

 雷門中サッカー部が抱えているのは、後者のバカデブである。

 

 

 また、今回の件に関して付け加えるなら、これは他校との試合をするとなった際にも問題となる。

 

 このような雷電と他プレイヤーの衝突が試合中に発生した場合、ぶつかった相手は何メートルも吹き飛んでしまうことになるからだ。

 

 実際は大した接触がなかったとしても、視覚的な印象が悪すぎるせいでファールは免れなかったに違いない。

 その上、今回のように敵選手を気絶させたとあっては、退場処分にまで発展してもおかしくない状況である。

 

 肉体が規格外に強すぎるということは、マイナスに働くこともある。

 その事実を、雷門サッカー部の面々が(ひとりを除いて)真に理解す(思い知らされ)るきっかけとして、これ以上のものはないだろう。

 

「物を拾う」という日常の動作だけで同い年の相手を吹き飛ばし、そのまま昏倒させてしまうなんて、物理法則に反しているとしか言いようがない。

 そんな現実離れした光景を生身で引き起こせてしまうほど、雷電のフィジカルは他の生徒と隔絶した力を秘めている。

 とにかく、肉体が強すぎるというのも考えものである。

 

 

 この問題は、雷電真太郎という選手を扱う上で注意しなければならない重要な要素のひとつだと言える。

 これ(雷電アタック)を公式戦で引き起こし、大事件になってはじめて知るようなことにならなかっただけよかったと、そう思うしかない。

 そうでなければ、初対面の人たちの目の前で意味もなく吹き飛ばされた土門があまりにも可哀想だ。

 

 

 その土門は、痩せぎすの身体にどす黒い顔色、そして爬虫類のように鋭い下三白眼が特徴の男だ。

 そんな薬物中毒者にしか見えない容姿のせいで、初対面の人からの第一印象が悪くなりがちな彼は、

 雷門サッカー部の部員たちから向けられる、不自然なほど愛想のいい微笑みに内心混乱していた。

 

「か、歓迎するよ、土門!」

 

「ああ、そうさ! もちろんだよ、へへ、へへ!」

 

「なぁ、我慢してないんだよな? ほんとは死ぬほど痛いのを無理に隠してるとかじゃないんだよな…!?」

 

 異様に卑屈な態度で、彼らは口々に気遣うような言葉をかけてくる。

 

「え、あ、ああ……」

 

 なぜ自分が気絶していて、部室の床に寝かされていたのかすら未だ理解できていない土門は、

 ぽかんとした表情のまま、辛うじて返答のような音を口から漏らした。

 

「そうか…! よかった、よかったよ……!!」

 

 たったそれだけの反応に、大げさなリアクションが返ってくる。おまけに少し涙ぐんでいる生徒までいる始末だ。

 

(……なんなんだこれ??)

 

 全く理解が追いつかないながらも、自分が自己紹介の途中だったことだけは思い出せた土門は、痛む身体に鞭打って立ち上がろうとする。

 

「よ、よーし! それじゃあ、他の先輩方にもご挨さ───ぁれ?」

 

 そうして、土門は他の部員にも挨拶しようと1歩踏み出し───

 

 そのまま目を回し、その場に崩れ落ちてしまった。

 

「ッ!? おいッ、死ぬな、土門!!どもーん!!!!」

 

 

§§§

 

 

「───あのねえ、いくら学校と隣接してるからって、この病院はあなたたち雷門中の生徒のためだけにあるわけじゃないんですからね?

こんなに何度も何度も来られたら困りますッ!

……とにかく、この子はしばらくお休み! 様子を見ながら1週間は休ませてください! いいですね!?」

 

「え、何度もって、どういう───」

 

 そんな声が、朧気に聞こえてくる。

 

「あ、その節は、その、本当に───」

 

 徐々に浮上していく意識の中で、土門は不機嫌な年配の女性の声と、それに平謝りする野太い声を聞いたような気がした。

 

「ぅ、う……」

 

「あ、土門くん! 無事でよかった…!」

 

「え、この声って……」

 

「そう、私だよ! 土門くん、私が分かる…?」

 

「分かるもなにも……って、あれ? まさか、また夢…?」

 

「もう、だから夢じゃないんだってば!」

 

 心なしか、目元が腫れて赤くなっているように見える秋が、いつも通りの態度を装って無理におどけてみせる。

 そんな風にして、2人は早くもお決まりになりつつある気絶明けのやり取りを済ませた。

 

 すると、部屋の隅の方にいた誰かが、不意に病室の扉を開く。

 

「…ともかく、目が覚めたようでよかったです。

それじゃあ、土門さん。また何かあったらナースコールで呼んでくださいね!」

 

 そんな言葉と共に、愛想良く微笑んだベテラン看護師が病室を出ていく。

 

(さっきめちゃくちゃキレてたのって、あの人だったんだ…)

 

 そんな彼女の声を聞いた土門は、どこか奇妙な納得感を覚えた。

 

 

「…それで、これってどういう状況?」

 

 あらぬ方向に逸れかけた意識を再び目の前のことに戻すと、

 病室にずらりと並んだ部員たちの顔ぶれを、土門は不思議そうに眺めた。

 

「そ、それについては当事者から…」

 

 未だ卑屈な笑顔を貼り付けた円堂が、雷電の肉厚な背中をポンと押し───全く動かない雷電を全体重をかけて動かそうとし───それでも微動だにしないデカブツに対して必死に目で合図を送り───そこまでしてようやく、事件の犯人を土門の目の前に連れ出すことに成功した。

 

「その、実は…」

 

「…え? あ、うん。な、何があったのかな?」

 

 たった今繰り広げられた一連の小競り合いに、彼は一切触れないことにしたようだ。

 当たり前のように本題に入った雷電に若干面食らいながらも、土門はどうにか相槌を打った。

 

「土門、オマエのことを、壁まで吹き飛ばして気絶させてしまったんだ…!!」

 

「ん…、」

 

「地面のゴミを拾おうとした時の頭が、オマエの身体と軽く当たってしまってっ…!!

 

「んん……??」

 

「本当に、申し訳なかった!!!!!」

 

 人里に降りてきてしまったバケモノこと、雷電による全力の平謝り。

 彼は、自身のでっぷりと肥え太った腹の底から力強く謝罪の言葉を発しつつ、勢いよく頭を下げる。

 

ゴオッ!!!!!!!!!!!

 

 すると、あまりの音圧、風圧によって窓やベッドなどがブルブルと震え、しまいには土門に掛けられたタオルケットがぶわりと持ち上がった。

 

 それらの勢いがひとしきり収まってから、土門がゆっくりと口を開く。

 

「う、」

 

「う?」

 

「うるせえぇぇぇぇえええええ!!!!!!!!!」

 

 全く理解できない説明の後、とんでもない音響兵器を浴びせかけられた不憫な男こと、土門による魂の雄叫び。

 その声が、病室に、そして病院中に響き渡る。

 

 

 そしてその瞬間、病室に訪れた沈黙は。

 

「───こっちのセリフだぁぁぁぁ!!!!!」

 

 病室に怒り心頭で駆け込んできたベテラン看護師によって、すぐさま破られることになった。

 

 

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