イナズマイレブン1・2・3!! 雷電真太郎伝説   作:睾丸Jリーグ

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雷電三太郎 相撲は、サッカーだ!

 

 いきなり一悶着ありつつも、バトルはサッカー部のキックオフで始まった。

 

 ピッチ中央で染岡からボールを受け取ると、風丸が大江戸の守る相撲部のゴールめがけて一直線にドリブルを仕掛けてくる。

 

 そして、恥辱(公衆面前ごわす)による耳の赤みも引いてきた雷電が、その面前に立ち塞がった。

 

(む、これは……どうすればいいんだ?)

 

 これまで相撲一筋で生きてきた雷電は、サッカーのディフェンスのやり方など何ひとつ知らなかった。

 

(……とりあえず、四股でも踏んで威嚇してみるか)

 

 いくら知識がないと言っても、接敵してまず最初にとる行動が威嚇とは、もはや獣同然である。

 

「むぅぅぅんッ!!!」

 

 ズドッ!!!!!!!!!

 

「うわっ!?!?」

 

 ディフェンダーらしい動きを一切することなく、突然真横に足を振り上げた相手(雷電)の奇行にあっけに取られていた風丸は、

 しこふみの衝撃によって発生した、立っていられないほどの地響きによって転倒し、

 相撲の作法に則って律儀に手刀を切っていた雷電にボールを奪われてしまった。

 

「いま、一体何が……??」

 

 名の知れた力士だけあって、非常に滑らかな四股踏みの所作に目を奪われたと思ったら、

 次の瞬間には、轟音とともに視界が青空でいっぱいになっていた。

 

 風丸がこの意味不明な状況を必死に理解しようとしている間にも、雷電は見よう見まねのドリブルでピッチを駆け上がっていく。

 

 

 そして、巨体を揺らしながら獣のようなスピードで迫ってくる雷電にも臆せず、壁山が立ち塞がる。

 

「行かせないッス!!」

 

(今度はこちらが攻める番か。よく分からないが、ひとまず先程のように威嚇を───)

 

 さっきとは状況が違うというのに、1度成功した行動を繰り返す。

 肉体戦士・雷電が誇る、猪並みの知能のなせる業である。

 

 

 そうした安易な考えのもと、雷電は壁山の目の前で足を振り上げ───

 

「むっ!?!?」

 

 あっさりとボールを掠め取られてしまった。

 

「それはもうさっき見たッスよー!」

 

 壁山もまた、巨体に似合わぬ軽快なボール捌きを見せると、ゴール前の染岡へとセンタリングを上げる。

 

「ッシャア!ドンピシャだ───うおおっ!?」

 

 染岡が浮き球にダイレクトボレーで合わせようと飛び上がったところに。

 その頑強な肉体に鞭打って、猛烈なダッシュで強引に自陣ゴール前まで駆け戻った雷電が、空中の染岡に追い縋ってきていた。

 

「ッお、お前、さっきまであそこに……!」

 

「フ……オレの肉体にかかれば、このくらい───「よっ、と」

 

「…え?」

 

 無理をして追いついたはいいものの、ディフェンスを知らない雷電はクロスをインターセプトしたわけでも相手にプレスをかけていたわけでもなかったため、

 ボールを冷静にトラップした染岡にシュートを打たれてしまった。

 

「あっ───」

 

 そしてそのボールは、雷電に隠れてボールの行方が見えないからと、試合中にもかかわらず気を抜いていた大江戸の脇をすり抜けていき───

 

 ふわりとゴールネットを揺らした。

 

 

「ゴォーーール!!!!見事に相手の隙をついたシュートだァ!!!!!!よって、サッカー部の勝ちィ!!!!!」

 

「ウオオォ!!!!!見たか!!!これが"雷門の点取り屋"だッ!!!!!」

 

 

「……ぁ」

 

 染岡がゴールパフォーマンスをしながら宙返りではしゃいでいる傍ら、雷電はあまりにも鮮やかなゴールの衝撃に立ち尽くしていた。

 

(肉体では圧倒的に勝っていたはずのオレが…反応することすらできなかった、だと…?)

 

 相撲においてもスピードやテクニックで翻弄するタイプの力士がいないわけではないため、その対策として動体視力は完璧に鍛え上げていた。

 いや、鍛え上げたと思っていただけだった。

 

 

 全国大会の、あのとき以来感じたことのないほどの圧倒的な敗北に、しかし雷電は自分の口角が釣り上がるのを感じた。

 

(これだ……!!!)

 

(このサッカー部の連中(こいつら)にも勝てるほどの肉体を手に入れた時、オレの相撲は、更なる高みに到達する……!)

 

 

 心の奥底から沸き上がる感情の昂りに任せ、退屈そうにゴールの中のボールをつついていた大江戸に告げる。

 

「……おい大江戸、オレは──────サッカー部に入るぞ!!!」

 

「…えっ、ちょ、はぁ!?!?何言ってんスか!?!?え、相撲は???」

 

「クッ、フフ、オレの相撲の未来は、サッカー部にあるんだ!!!」

 

「相撲の未来なんか相撲部にしかないに決まってるじゃないッスかぁ!……ちょ、冷泉せんぱぁい!なんか雷電先輩壊れちゃったんスけど!?!?!?」

 

 

「フ、ハハ、ハハハハハハッ!!!!!!

 ……そうかッ、相撲は、サッカーだ!!!!!!サッカーだったんだッ!!!!!!」

 

 鍛え上げられた声帯から、大気がビリビリと震えるほどの音量で高笑いを撒き散らして支離滅裂なことを口走る雷電の姿に、

 流石の大江戸も表情が曇ってくる。

 

「……これ、僕が人前で恥かかせ(ごわすって言わせ)ちゃったせいとかじゃないッスよね……??」

 

「…………いや、それはないだろう。こんなアホの悪役みたいな言動の方がよっぽど恥ずかしいからな」

 

「ッはは、確かに! じゃあ大丈夫ッスね!」

 

 冷泉の指摘で肩の力が抜けたのか、パッと表情を明るくした大江戸は、

 未だに高笑いを響かせて、周囲をドン引きさせ続けている雷電を担ぎ上げると、

 そのまま弾むような足取りで相撲部の部室の方へと駆けていく。

 

 

 

 

「いや、ヤッバ…………えぇ…………?」

 

 雷電についてきた相撲部チーム3人衆のうち、1人だけ雷電に毒されていない(マトモな)阿後は、

 あまりのことに呆然と立ち尽くすサッカー部の面々、そしてギャラリーの生徒らとともに。

 もう完全に思考を放棄していた。

 

 




犬系ちょんまげデブ、大江戸
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