イナズマイレブン1・2・3!! 雷電真太郎伝説   作:睾丸Jリーグ

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雷電六太郎 くたばれ!クソゴミ栗頭!

 

 

「───このデブ、誰でやんすか?」

 

 

 これから始まるサッカー人生に、期待で胸を高鳴らせ。

 少しの不安と、それ以上に込み上げる高揚感に、自然と笑顔を浮かべながら、

 サッカー部の部室に初めて足を踏み入れた雷電に向かって。

 

 雷電に負けず劣らず珍妙な髪型をしたダミ声のチビ(くりまつ)が、雷電の全身にジロジロと無遠慮な視線を向けながら、不躾にそう言い放った。

 

 

 異常な大きさの富士額に、毛深く口角の辺りまで伸ばされたもみあげ。

 そこに頭頂部を鋭く尖らせた明るめの茶髪も相まって、頭部全体がひと粒の栗を連想させる。

 

 ゲジゲジ眉毛の下から覗く、極端に丸い金壷眼が、どこかマスコットキャラクターのような間の抜けた雰囲気を醸し出している。

 

 口を閉じていても、常に外気に触れている深刻な出っ歯と、鼻頭に貼られた小汚い絆創膏。

 

 それらのパーツ全てが、横に長い顔面の中でそれぞれ強烈な存在感を放つ、小柄な男である。

 

 そしてなにより、その内面が外見と同様にイカれたものであることが一撃で伝わってくる、

「〜でやんす」というザコの舎弟のようなぶっ飛んだ口調。

 

 そんなイジりしろの宝庫としか形容できない人物が、容姿に見合わぬ険しい表情でこちらを睨みつけてくる様子は、いっそ滑稽ですらあった。

 

 

「む……」

 

(…随分な歓迎だな)

 

 雷電は心の中で皮肉げに呟く。

 

 

 サッカー部員からの印象が良くないことくらい、当然覚悟していたはずだった。

 

 しかし、太陽の如く包み込むように接してくる円堂の態度によって。

 そんな覚悟はすっかり跡形もなく溶かされてしまっていた。

 

 

 栗松の言葉で思いのほか傷ついている自分自身に内心驚きつつも、雷電はなんとか言葉を返そうとして───

 

「お、おい! やめろよ栗松! コイツはこれからオレたちの仲間になるんだぞ!」

 

 慌てて割って入った円堂が、栗松を宥めるように声を上げた。

 

 

「……え? じゃあ、このデカブツが最後の1人でやんすか?」

 

「ああ、そうさ!

───みんな、コイツの名前は雷電! 全国大会に出るような凄腕の力士なんだってさ!」

 

 部室までの道中に談笑して聞き出した情報をもとに、円堂が雷電に代わって彼の人となりを紹介する。

 

「ふーん。ま、いいでやんす。

とにかく、この栗松様の足引っ張るようなマネしたら承知しないでやんすよ、新入り!」

 

「……ああ、よろしく頼む」

 

 そう言い捨てて去っていく栗松(ゴミ人間)の背中を、2人揃って呆然と見つめる。

 

 

 

(1人目に出会う部員がこれでは、先が思いやられるな……)

 

 雷電は、周囲に悟られない程度に小さく表情を歪めた。

 

 

 

「えーっと、あいつも悪いヤツじゃないんだけどな。ハハ……」

 

 栗松の言動により、あっと言う間に部室内の空気が死んだことを肌で感じた円堂は。

 なんとか栗松をフォローしようと試みたが、当然のことながら失敗していた。

 

 

 サッカー部での未来に若干暗雲が立ちこめてきたところで、先日のサッカーバトルでも対戦した、青い長髪の男と雷電の目が合った。

 

「あっ、ああ。アンタ、この前の……」

 

 仮にも新入部員に対して、優しさの欠片もない振る舞いを見せた栗松に、ゴキブリの産卵を見るような冷えきった眼差しを向けつつも。

 彼は軽く微笑んで、こちらに手を差し出してくる。

 

「DF2年の風丸だ。

…実は、俺も陸上部からの転向組なんだ。分からないことがあったら、なんでも聞いてくれ」

 

「───! あ、ああ!

相撲部3年、雷電 真太郎だ。よろしく頼む!」

 

 ちゃんとマトモな人間もいたことに心から安堵しつつ、雷電は風丸の手を取った。

 

「いやあ、助かったよ。廃部の危機だってのに、メンバーが足りないんじゃ試合もできないからな。

それじゃあ、これからよろしく、雷電!」

 

「ああ! こちらこそ───「円堂くーん!!!」───ぬ?」

 

 

 

 黒目がちな瞳と、前髪を留めるピンクのヘアピンが特徴的な少女。

 

 バタバタと慌ただしく部室に駆け込んできた彼女は、雷電の前を平然と通り越して声を張り上げる。

 

「む……」

 

「おお、どうした? 秋!」

 

 円堂が気安い様子で言葉を返すと、秋はいかにもご機嫌な笑顔を浮かべて口を開いた。

 

「ついに、11人目のメンバーになってくれるっていう人が見つかったの!!」

 

「……え? あ、いや…」

 

 

 あまりにもタイミングが悪い報告に、思わず口ごもる円堂にも気付かず、秋は機嫌よく話し続ける。

 

「目金くんって言うんだけど……あ! ほら、自分で自己紹介して?」

 

 その言葉と共に、なぜか自信に満ち溢れた笑みを浮かべた貧相な体格の少年が、秋の陰から胸を張って歩み出てくる。

 

「ふふん。仕方なく、ほんっとーに仕方なくですが! この目金 欠流が、雷門サッカー部に加わってあげましょう!」

 

「いや、あの、「ただしッ!!!」」

 

「……」

 

「ボクにエースナンバーの10番を譲ることが条件です! さあ、どうしますか!? 」

 

 

「あー、その、秋?」

 

 明らかに話が通じなさそうな目金を一旦放置して、円堂は喜びを隠しきれない様子のマネージャー、秋に声をかけた。

 

「その……最後の1人だけど、もう見つかっちゃったんだ!」

 

「へ……えぇっ!?」

 

 素っ頓狂な声を上げる秋をよそに、ぽかんと口を開けた目金が円堂に詰め寄る。

 

「ちょ……ちょっと、どういうことですか!?散々拝み倒されて来てみればッ───「目金くん、ちょっと黙って」───ッ!?」

 

 ギャアギャアと文句を喚き散らし始めた目金は、円堂に目線を固定したまま制してきた秋に気圧され、続く言葉を飲み込んだ。

 

 

「円堂くん! どういうことなの? 見る限り、新入部員なんてどこにも……」

 

「…いや、ずっとそこにいるだろ?」

 

 呆れた様子で雷電を指し示す円堂の、その視線の先へと、秋は緩慢な動作で顔を向けていき───

 

 

「へ───ひゅわっ!?

こ、これ、棚かなにかじゃなかったんだ……!」

 

「た、棚って…ぷぷ。こんな丸っこい棚、あるわけないじゃないですか!」

 

 興奮のあまり周りが見えていなかったのか、その場から飛びすさってトンチンカンなことを口走った秋に、

 半笑いの目金がめげずに茶々を入れるが、案の定無視された。

 

「……それで。円堂くん、どうするの? 試合には一度に11人しか出られないけど…」

 

「いや、秋には悪いけど、普通に雷で───「ちょおっと待ったあッ!!!!!」───へっ?」

 

 目金をスタメンから外す方向で話があっさりまとまりかけた瞬間、当の本人が円堂と秋の隙間に滑り込んできた。

 

「ふ、ふふん! まだ伝わりきっていなかったみたいですねぇ、ボクの秘めたる実力が…!」

 

「…あのー、よく分からないけど、とにかくオレは雷電が───「にょわぁっ!?!」」

 

 彼のチーム加入を即座に断ろうとした円堂は、再び飛び込んできた目金の奇声によって、強制的に口をつぐまされる。

 

 

「……よく分からないが、オレとコイツ(目金)で直接対決すれば話が早いんじゃないか?」

 

 あまりにも進展しない会話に、ここまでずっと沈黙を保っていた雷電がようやく口を開いた。

 

「えっ、ちょ、それは……」

 

「おー!! いいな、それ! お前のプレー、また見たかったんだよ! 雷電!」

 

 かなり動揺した様子の目金には目もくれず、雷電の口から飛び出した提案に円堂が顔を輝かせる。

 

 

「あの、ボクはまだやるだなんてひと言も……」

 

「それじゃあ、円堂くんと私は、2人が対決するための場所を探してくるね!

その間に、動きやすい服に着替えておいてもらえるかな?」

 

「む、了解した!」

 

「……」

 

 それきり、話は済んだとばかりにさっさと部室から出ていく2人の背中を見つめながら、

 目金は諦めたように制服のボタンへと手をかけ───

 

 

 

 

 

 数分後、圧倒的なフィジカルの差によって、格の違いをあっさり理解(わか)らされた目金の耳に。

 

「なあ、円堂。そんなに邪険にすることもないじゃないか。コイツだってわざわざ志願して来てくれたんだろ?」という、野太い声が飛び込んできた。

 

 声の主たるその巨漢は、思いきり身体を動かしてスッキリしたのか、とても上機嫌な様子で目金の背中をバシバシと叩きながら、

 突然彼を擁護するような調子のいいことを言い始めた。

 

 そんな雷電に先輩の余裕を見せつけられる形で、なんだかんだとスタメンの座を譲ってもらったものの。

 サッカー部のエースとなって注目を浴びようという魂胆など、目金の中からはとっくの昔に雲散していた。

 

 それでも、爽やかに笑いかけてくる周囲の目に追い立てられるようにして。

 心底怯えながら、彼は震える手で10番のユニフォームを受け取ったのだった。

 

 

 

 

§§§

 

 

 

 

 その後、体格が違いすぎて予備のものでは明らかに入らない雷電のユニフォームをどうしようかという話になった際。

 

 

 雷電のあまりにも規格外な図体に、さっさと計測を諦めた秋が、物は試しと壁山のジャージを着せてみたところ。

 

 試着して数分後には、壁山とは比べ物にならないほど膨れ上がった雷電の下半身に耐えかねて、ズボンが真っ二つに引きちぎれてしまった。

 

 その結果、雷電愛用の赤ふんどし越しにくっきりと浮かび上がるアレ(真太郎スティック)の形状を目にしてしまった、

 秋とついでに目金が甲高い悲鳴をあげたことで。

 

 何事かと駆けつけた教職員たちに、鍛え上げた不動の精神で落ち着いて事情を説明した雷電は、

 即座にふんどしが丸出しのまま正座させられ、こってりと絞られるのであった。

 

 

 

 

 




栗4
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