僕のヒーローアカデミア ~MAN OF STEEL~   作:スルタン

17 / 34
今回で職場体験は終わりにします


エピソード 15

 

職場体験が始まって数日、今日も今日とて出動要請がない限りは訓練に明け暮れている。今は雨が降りしきる中安全に山肌を昇る訓練をしている

 

「濡れた岩は兎も角水分を含んだ土はオイルの様に滑りやすい、足元と手元に注意して登るのだ」

 

「はい!」

 

虎がピクシーボブが用意した訓練用の山の上から健を指導する。土、岩、砂が絶妙に配置されている出っ張りに手足を掛け昇っていく

 

「あの子この環境にもだいぶ適応してきたみたいね」

 

傘をさしたマンダレイが健を見ながら話す、その横では同じく傘をさしているピクシーボブとラグドールもいる

 

「最初はつたない動きだったけど結構早く順応してきた、今は確認を怠らなければスイスイ登っていける。いいセンスね!」

 

「んじゃこれクリアしたらもっと難易度上げちゃう?」

 

「そうね、もう少し上げてもいいかも」

 

しゃがんでみていたピクシーボブがそう提案する。マンダレイは肯定すると自身の個性であるテレパスで健の頭の中に直接語り掛ける

 

(おゝとりくん、これクリアしたらもう少し難易度上げてみようか)

 

健は下方を向きマンダレイに向かって頷く、だがその直後雨足が強まってくる。スマホを取り出し気象アプリで確認した後、ヘッドセットの無線機で虎に通信する

 

「虎、これから雨が強くなるみたい。これくらいにして切り上げようと思うからおゝとりくんにもそう伝えて?」

 

「うむ・・・よし!全身タイツ野郎!!まだまだギアを上げていくつもりだったが雨が強くなってきた、午前中はここまで。次の指示があるまで事務所で待機!撤収!!」

 

「はい!」

 

虎が丁度登り切って立ち上がった健に指示を飛ばす。直ぐに返事をして先に飛び降りる虎に続いた。訓練を切り上げ事務所へと戻った健は一度コスチュームを清掃した後着用し直す。ラグドールによるとこの後一日中大雨が降り続くのでこれから虎による座学になった

 

「・・・であるからして不安定な場所や損傷が激しい建築物での個性の無暗な使用は却って事態を悪化させる場合もある、貴様の怪力は非常に有用だが常に周りに気を配り、慎重に且つ臨機応変に使え。わかったな」

 

ホワイトボードに所狭しと災害の状況とそれに適切に対処する為の理論が書かれ虎がそれに爪を指しながら教鞭を執る。健はそれをノートに書き留めながら質問をする

 

「ということは過去に個性による二次災害が起こっていたと・・・」

 

「そうだ、例をいくつか挙げれば火災現場で風を操るプロヒーローが火を掻き消そうとしたが燃料による火災であったがために余計に酸素を供給してしまい被害が大きくなってしまった。他には市街地でヴィランが路面を破壊して埋まっていたガス管が損傷しガス漏れ、居合わせた火を使うヒーローの個性でガスが引火した爆発事故、どれも現場の状況を理解できていれば十分対処可能だった事だ。一時期それでヒーローに批判が集まった」

 

虎が自身が知る事故でもっとも質問に適したケースを説明する

 

「ヒーローはヴィランを無力化するのも使命の1つだが、その過程で財産は元より生命を危機に晒してはならない。いいな」

 

「わかりました」

 

虎による座学が終了し、今日の訓練も取りやめとなり事務所で緊急の連絡に備えて待機することになった

 

 

日が落ち夜になっても依然として激しい雨音を響かせながら照明に照らされた雨粒は圧迫感を覚えさせる

 

「全然収まらないわね」

 

「私達の敷地は大丈夫だけどこの雨だと他の所が気になるよね」

 

事務所でプッシーキャッツのメンバーはソファに座り健は窓を開け外の様子を見る

 

「ラグドール、これからの天気はどうなっている?」

 

「ん~と、今の所は朝方までには止む予定だね。確証はないけど」

 

虎に聞かれたラグドールはスマホで天気を確認する。その時事務所に設置されている通信機からアラームが鳴り響いた。マンダレイは直ぐ様スイッチを押し回線を繋ぐ

 

「此方プッシーキャッツ、どうぞ」

 

『繋がった!此方長野県警!!豪雨による山崩れによるトンネルの崩壊が発生!至急救援を頼む!場所は・・・』

 

無線機からの緊迫した声に全員が立ち上がる、警察からの情報を聞いたマンダレイは通信機を切り振り返る

 

「ここから1時間程の場所で山崩れが発生、その影響でトンネルの出入り口が崩落と土砂で完全に埋まってる、中の状態も確認できないそうよ。おゝとりくんも一緒に来て、洸汰、ごめんけど留守番お願い!」

 

「・・・」

 

現場に急行する為大型バンに飛び乗り虎の運転で事務所を離れる、幸い深夜に近い時間帯だけあって車も少なく、他の車両もプッシーキャッツの車と別れば道を譲って来れたり警官による交通規制で半分の時間で到着する事ができた。雨があちこちにある緊急車両のランプを反射させている

 

「これは・・・」

 

「予想はしてたけどかなり酷いわね」

 

「片側二車線・・・もう一本のトンネルが無事であって欲しかったけど、両方とも塞がってる」

 

「中に人がいる、深夜だからそこまで多くないけど怪我人もいるね」

 

ラグドールの個性、サーチでトンネルに閉じ込められている人達を確認する。それによると幸いにも死者はおらず車も少なく救助者も大量ではない

 

「プッシーキャッツの皆さん!来てくれて助かりました!」

 

レインコートを着た警官達が此方へ走ってくる

 

「遅れてすいません、トンネルの中はラグドールの個性で確認はしました。直ぐに救助を開始します」

 

「実は目撃者の情報で中に燃料を積載したダンプカーが一台が中に入ったとの事です。山崩れで内部が崩壊しているはずですので注意してください」

 

(・・・!!ピクシーボブ待って!)

 

それを聞いたマンダレイは個性でタイムラグなしで土流で土砂を動かそうとしたピクシーボブを止める

 

「どうしたのマンダレイ!」

 

「トンネルの中に一台燃料を積んだ車両があるみたい、この山崩れで内壁はかなりダメージを負ってるはず。無暗に動かして爆発なんてしたら・・・」

 

「くっ・・・」

 

ピクシーボブは地面に着けていた両手を離す

 

「でもこのままだと埒が開かないよ、電気も止まってるし空気を取り入れる穴も完全に塞がってる。それに少しづつだけど弱ってきてる」

 

「せめて人一人通れる穴さえあれば我が中に入り詳しい状況を策を確認できるのだが」

 

虎の人一人入れる穴があればという言葉に顔を上げマンダレイ達に近づく

 

「マンダレイ、僕にいい考えがあります」

 

「?」

 

 

健とプッシーキャッツのメンバーは埋まった入口から離れライトを照らしながら林の中を進むと土砂崩れで露出したトンネルの外壁が見えた

 

「運がいいわ、土が流れてくれたおかげで直接坑内にアプローチできる」

 

「あちきの個性は生物にしか効かないけど、おゝとりくんはそういう個性なの?」

 

ラグドールの個性はあくまで個性を持つ生物を探知できるのであってソナーやレーダーみたいな能力はない。その質問に健は自身の左眼を指さす

 

「個性ではありません、僕の左眼は訳あって義眼なんです。まぁ義眼なんですけど中に色々機能がありまして一種のサポートアイテムですよ」

 

ラグドール達は左眼のデバイスよりなぜ義眼なのかが気になったが今は救助が先である。健は外壁を左眼で探査する

 

「ラグドール、この壁の向こうに人がいるようですが」

 

「うん、あちきにもわかる。マンダレイ」

 

ラグドールにも確認を取り彼女がマンダレイに目配せする。直ぐにテレパスで下がるよう促す

 

「・・・退避させたわ。それでどうするの?破壊する?」

 

「いえ、この雨と地滑りで地面が弱っています。ちょっとした魔法を使います」

 

「魔法?」

 

健は左眼を閉じ右眼だけを開く、眼球から赤い光が漏れ出しそこから熱線が発射され特殊コンクリートと鉄筋、防水シートを一度に貫き人が1人通れる程のスペースを溶断する。溶断した部分に手を突っ込み一気に引き抜き横に放り投げる

 

「さ、今の内に!」

 

右眼から熱線を発射して分厚いセグメントを容易に切断した能力に驚愕したが直に思考を切り替えトンネル内に突入する

 

助けが来たぞ!プッシーキャッツだ!!

 

私達、助かったのね!!

 

良かった・・・ほんとによかった・・・

 

真っ暗のトンネル内には車のライトと殆ど頼りにならない非常灯、備え付けの懐中電灯が疎らについている。閉じ込められた人達が歓喜の声を上げる中マンダレイは素早く指示を飛ばす

 

「皆さん!救助にきました!直ぐに避難してください!虎とピクシーボブは怪我人の補助を、私はテレパスで応援を呼ぶ!」

 

「応!!」

 

「オッケー!」

 

虎とピクシーボブは真っ暗の坑内をライトで照らしながら怪我人の避難の補助を行う

 

「ラグドールとおゝとりくんは非常口を経由して向かい側のトンネルへ行って救助をお願い!」

 

「任せて!」

 

「はい!」

 

ラグドールが先頭に、健はその後ろを付いて行く形で非常口の扉を開け向かい側に坑道に入る

、扉が開く音に救助者達が反応する

 

「助けに来ました!この非常口を通って向かい側に向かってください!出口があります!」

 

ラグドールの指示に従い救助者達はスムーズに脱出口に移動を開始する。健は取り残されている人がいないか確認する為左右に広がる通路を左眼でスキャンしながら走る。1.5キロ程のトンネルを走り道中発見した救助者に脱出口を教え更に奥に進む、一番奥に進んだ所で崩れた壁にぶつかり立ち往生したダンプカーがあった、これが例の燃料を積んだ車両だ。運転席を確認すると運転手が頭部から一筋の血を流し気を失っていた

 

「大丈夫ですか」

 

「う・・・俺は一体」

 

「山崩れに巻き込まれたんです。今はプッシーキャッツが救助に来てくれています、そして貴方が最後です」

 

車両のドアを引き剥がしシートベルトを千切り運転手を助け出す、負担を掛けないように背負いその場を後にしようとした瞬間、天井の壁が崩れ落ちタンクに直撃する

 

「・・・」

 

健は静かに振り返り燃料タンクを照らす、へこんだタンクからガソリンと同じ色の液体が漏れ出している、そして悪い事に剥がれ落ちた壁面から電気配線が露出している。その状況に健は静かに呟く

 

「マズい・・・」

 

運転手に負担を掛けないように走る、非常口で待っているラグドールが見えると健が声を上げる

 

「ラグドール!僕らも急いで避難しましょう!」

 

「え!?」

 

「問題の燃料車のタンクが損傷してガソリンが漏れ始めてます!それに電気配線が露出していてショートなんかしたら大爆発です!急いで!」

 

ラグドールは事態を素早く呑み込み出入り口に向かおうとした瞬間、強烈な爆発音が響く、2人が音のした方を見ると燃料車が爆発し爆風が道中にあった車を吹き飛ばし熱が車の燃料タンクに引火し炎を大きくしながら迫ってきた、条件反射の様に非常口に飛び込み長い通路を走り元来た道を戻る、其処にマンダレイ達が音を聞きつけて走ってこようとしたがラグドールが大手を振って阻止する

 

「急いで逃げて!!燃料が爆発した!」

 

「・・・っ!!みんな脱出よ!」

 

救助者は全員外に出ており残っているのはプッシーキャッツ達だけ、ちょうどその時にこの爆発。運が悪い、刹那向かい側の非常口が吹き飛び熱と爆風がこちらに迫って来た

 

「!!!」

 

ラグドールが咄嗟に身構える、マンダレイ達が二人を助けようと走り出した瞬間健は虎に自身が背負っていた運転手を放り渡す。虎が即座に反応しキャッチ、健はラグドールの前に立ち息を大きく吸い込み、吹く、極低温の液体窒素の風圧が迫る爆炎を掻き消し、冷気と風圧が熱を奪い車両から燃え上がる火を消し止める、残ったのはプラスチックや金属や有機物が合わさった顔を顰めたくなる匂いと壁や床、天井にこびりつくスス、炎上して強度を失った車の部品が落ちる音が奥から響いていた

 

「すっご・・・」

 

「もうなんでもありなのね」

 

ピクシーボブとラグドールが驚愕する中いち早く冷静さを取り戻したマンダレイと虎げ二人の肩に手を置く

 

「兎に角ここを出ましょう、あれだけの爆発だから向こうに酸素を持っていかれてるはず、早くしないと酸欠になるわ」

 

マンダレイの言葉に2人は頷き、全員が侵入口から外に出た。外に脱出すると空が少し明るい、東の方角を見ると陽の光が見え夜が明けたのだとわかる。少し離れた場所で警察と救急隊員が救護活動をしているのが見えた

 

「でかした、よく頑張ったな」

 

健の肩に虎の手が置かれる

 

「いえ、皆さんの適切な指示があったからこそですよ」

 

「それでもだ。あの人達を見ろ、お前が救った命だ、誇れ」

 

救助された人達がプッシーキャッツ達に感謝している場面を見る

 

「そうですね、今だけでも誇っていいかもしれません」

 

TO BE CONTINUED




急足で書いたので文章に変な所があれば教えていただければ幸いです。次は救助訓練レースの導入部分に行ければと思います
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。