僕のヒーローアカデミア ~MAN OF STEEL~   作:スルタン

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今回は実技試験終了までです


エピソード 18

 

荒野の中に廃墟が点在する僻地を模した演習場、その中の潰れかけた建屋の屋根が豪快に吹き飛ぶ。そこから一人に影が飛び出す。影は地面にぶつかり背中を擦りながら止まる

 

「ぬぅ・・・」

 

健がむくりと起き上がり片膝立ちをしているとそこに建屋から飛び出したミルコが降り立つ

 

「おい・・・さっきっから守ってばっかじゃねえか。やる気あんのかテメェッ!!」

 

取り敢えず蹴るがポリシーであるミルコからすれば逃げに徹している健は面白くないようで苛立っている。健はゆっくりと立ち上がる

 

「いえ、スピードでは貴女には敵いません。今は耐えて対策を考えているのです」

 

「へぇ、大した余裕だな。じゃあその我慢がどれだけ続くか・・・」

 

ミルコが屈み強靭な脚力で跳び込む

 

「試してやるよぉ!!」

 

前方胴回しからの回転蹴りで脳天を狙うミルコ。健は左腕を掲げ攻撃を受け止める。その瞬間健の着いていた地面が亀裂と同時に僅かに沈み込む、叩き込んだ反動を利用して高速後方宙返りからの飛び後ろ廻し蹴りを繰り出す。健は右腕を顔の横に立て攻撃を受けた瞬間横方向へ勢いよく吹き飛ぶ

 

「あ~あ、ミルコ先輩容赦ないなぁ・・・」

 

岩の上でしゃがみこんでホークスが呟く。防御する健と荒々しく追撃するミルコを用意したヘッドセットカメラで捉える

 

「どうですリカバリーガール、ちゃんと映ってます?」

 

「ああ、ばっちりさ。それにしても景気よくやってるねぇ」

 

試験場の外ではリカバリーガールが救護テントの中で医療待機とA組全員の試験をモニタリングしている。健のだけはタブレットだが

 

「おゝとりくんでしたっけ?あの先輩の猛攻を凌いでるなんていいセンスしてますよ」

 

「あんたもそう思うかい、でもそれだけじゃないよ」

 

リカバリーガールの指摘にホークスは興味をしめす

 

「といいますと?」

 

「ミルコの手足首が見えるさね?」

 

「はい、今回の試験で用意したウェイトですよね、自身の体重の半分が加算されるやつ」

 

「実はあの娘のだけはその重さが更に半分なのさ」

 

その言葉にホークスが僅かに目を細める

 

「・・・なぜそのように?」

 

「これまでの学習期間で彼の直接的な戦闘場面を教師陣は見たことがない、USJ襲撃事件の時は同じクラスメイトからの口伝えでしか情報を得られていないさね。あの子には申し訳ないけれど少なくともある程度の戦闘力・・・自衛できるところを見せてくれないと評価が付けられないって教師もいるから」

 

「ではなぜウェイトを本来のヤツにしないんです?その方が彼の実力も見やすいでしょう、ミルコ先輩の動きも鈍りますし」

 

「加減された状態で試験じゃ全力が見れないってことだろうさ」

 

「あ~・・・なるほど」

 

ホークスとリカバリーガールが健の試験について話している頃、地上では土煙の中でミルコの蹴りを健が紙一重に受け流す。身体には当たっていないがスレスレで避けているため所々体操服が破れている

 

「へっ、当たるやつだけ防いで他はギリギリで避けてやがる。お前素人じゃねぇな」

 

「まあ・・・随分と鍛えられましたから」

 

回し蹴りを屈んで躱し素早く下がる。ミルコがそれを見逃す筈がなく飛び込み前蹴りを繰り出し健はそれを下から手の甲で踵を押し上げ受け流す

 

「お前を鍛えた奴か、会って蹴ってみてぇ」

 

「それはあまりお勧めできません。自分も今まで一撃も入れた事ありませんから」

 

反撃に健はミルコに接近し背中での体当たりで後方へ飛ばす。ミルコはそれを軽くいなし地面に着地する

 

「なら尚更蹴ってみたくなった!」

 

強者がいる事にテンションが上がったミルコがペースを上げ中段胴回し蹴りを健が防ぐ

 

「っ・・」

 

先程より威力が上がっている事に僅かに眉を動かす

 

「オラオラァ!!守ってばっかじゃ何時までも終んねぇぞ!!」

 

その時演習場の拡声器からリカバリーガールの声が響く

 

『報告だよ。条件達成の最初のチームは轟・八百万チーム!』

 

どうやら轟達が試験をクリアしたようだ。これを加味するならばその数分後には他のチームもクリアするだろう

 

「へぇ!噂には聞いてたが今年の1年は強いってのも強ち間違ってねぇようだな!!」

 

ラッシュをしながらも息を切らさないミルコ

 

(轟君達が最初・・・こちらもできるだけ早くクリアしなければ。だがミルコの追い込みをどう躱す・・・)

 

スピードでは完全に敵わない、空を飛んでも速さもそこまで出ないので叩き落とされる。だからと言ってこのまま格闘戦をしていては時間切れになる

 

(ならば出し抜いて振り切るしかない・・・か)

 

結論を出した健はミルコの攻撃の隙を突き地面に足を突き入れ振り上げる

 

「んっ!?」

 

強靭な脚力で振り上げられた土がバラバラに吹き飛び大量の土煙が舞い上がる。ミルコはすかさず距離を取り顔を腕で庇う

 

「さ~て、どこから来る」

 

やっとやり合う気になったのかと考えるミルコ、土煙の中からの奇襲に警戒する・・・が数秒経っても仕掛けてこない

 

「あぁ?なんだ怖気づいたか?」

 

煙が晴れると健の姿は何処にもない

 

「ちっ!」

 

ミルコは辺りを見回す、ちょうど廃墟の建物が目に入る。耳を動かし物音を確認すると足音が聞こえた

 

「そこかぁ!!」

 

脱兎のごとく兎が走るフォームで建物に突入するミルコ、それから暫く経ち健は物置部屋を見つける。音を立てずに素早く入り込む、そこには様々な備品が置かれており災害時に使う災害用品や演習場の保全に使う資材や補修部材が備えられている

 

「緊急時の避難先としてなら当然か・・・さて」

 

数秒辺りを見回したあと素早く備品を漁る。そして幾つかの品を取り出す

 

「よしあったぞ・・・これだけあれば」

 

取り出したのは石灰と融雪剤と発炎筒。石灰袋の封を破り一言謝りながら乾パンの入った角缶を取り出し中身を取り出した後石灰を放り込み融雪剤を流し込む。その時部屋の外で足音が聞こえた。ペースを上げ缶の蓋を閉じ指先の力で縁同士を圧着させ密封、そしてトラロープを持ち出しドアノブに結び付けた。十数秒後準備を終えた健は体操服の上着で乾パンを包み腰に結び付け窓を開けると背後のドアが蹴破られた

 

「見ぃ~つけ・・・」

 

振り向くとミルコが獲物を見つけた猛獣の如く赤い目をギラつかせたその時。扉と連動して吊って置いたテントを固定するアンカーが落下する。ミルコがアンカーの落下先に視線を落とすとコンクリブロックで延焼対策をされた発炎筒の火に当てられた角缶があった

 

「てめっ・・・!!」

 

ミルコはそれを爆弾と判断して健を怒鳴りつけようとする。だが既に健は外に飛び出していた。アンカーが角缶を突き破ったその時部屋全体に刺激臭が広がった

 

「~~~~~ッ!!!!」

 

「お、出てきた」

 

ミルコが悶絶している事なぞ露知らずのホークスは健とミルコが入った建物を外から監視していたが窓から飛び出した健を見つける

 

「へ~先輩の追跡振り切ったんだ、やるね~」

 

健は脱出地点に向かって走り始める

 

「経過時間は40分、1時間の持ち時間で先輩相手にこのタイムは流石としか言えないな」

 

健が走り始めてから十数秒後、健が飛び出した窓からミルコが出てきた

 

「あ、ミルコ先輩・・・なんで涙目なんだ?」

 

ホークスはえづくミルコに疑問符を浮かべる

 

「あいつ・・・ぜってぇ捕まえる!!」

 

身を屈め脚に力を入れ踏み抜くミルコ、地面に罅を残しながら兎のフォームで走り始める

 

「マズい・・・怒らせたかな」

 

走力がそれほどあるわけではない健にミルコが徐々に差を詰める

 

「待てやテメェェェ!!!」

 

「すいませんが待てません!」

 

声で距離が近いと認識し振り返らずに全力で走る。四足走行の足音が迫るゴールのゲートをくぐる直前腰に巻いていた上着を前方に放り投げた瞬間背中を思いきり蹴られた

 

「ぐえっ」

 

蹴られたと同時に前転しながらゴールゲートをくぐった瞬間ブザーが鳴り響いた

 

『はい、おゝとりくんクリアだよ。最後だったけど上出来さね』

 

リカバリーガールの放送を空中で回転しながら聞いた

 

(自分が最後か・・・まあ30分以上経ってるから当然か)

 

呑気にそんな事を考えている次の瞬間背中から地面にぶつかり擦りながら止まる。そこにミルコが健の胸に馬乗りになる

 

「ぶっ」

 

「フーッ!!フッー!!」

 

ミルコは荒い息を吐きながら健を睨みつける。健は両手を上げながら罠に嵌めた事をすかさず謝罪する

 

「すいませんミルコさん。まさかあれだけ効くとは思っていませんでした」

 

「ああそうだよな!!普通の奴ならそこまでクることはないよなぁ!!けどよ私の個性知ってるだろ!」

 

「ええ・・・兎ですよね。兎みたいな事ならなんでもできると」

 

「私の鼻は兎のそれと同じだ!意識しなけりゃ普通だが集中すると同じなんだよ!!そのせいで涙も止まらねえ!!」

 

ミルコは健のシャツを掴み揺さぶる。そこへホークスが降り立ち止めに入る

 

「先輩、試験は終りましたよ。怒りたいのも山々でしょうけど抑えて抑えて、おゝとりくんの首痛めちゃいますよ」

 

「うるせぇホークス!テメェも喰らってみやがれ!」

 

「それは遠慮します」

 

今度は首4の字固めを掛けられタップしている健を尻目に怒りを露にするミルコ

 

「まぁ、ですけどこれは実戦を想定した試験です。罠を仕掛けられる可能性は十分にありますし、おゝとりくんの能力を測りかねたこっちにも落ち度があります。そうでしょ?」

 

「・・・」

 

「それに先輩だっておゝとりくんの実力、評価してるんでしょ?力も強くて頭も切れる、プロヒーローからすれば逸材ですよ」

 

「・・・・はいはい、わかったよ」

 

ミルコは少し間をおいて二つ返事で4の字固めを解く、ホークスが歩み寄り健に手を差し出す

 

「ごめんね、この人頭より先に体が動くタイプだから」

 

「アァッ!?」

 

「冗談ですよ~」

 

健はホークスの手を取り立ち上がる

 

「すいません。ありがとうございます」

 

「いいよ~、俺からの評価としては申し分ない内容だと思うよ。これなら合格かもね、先輩もそうでしょ」

 

「ふん・・・まぁ、悪くないさ」

 

ホークスから振られたミルコはそっぽを向きながらも取り敢えず合格ラインのようだ

 

『終わったかい?それじゃ戻ってきておくれ』

 

リカバリーガールに促されホークスと健は歩き出す、が

 

「おい」

 

「?はい」

 

ミルコに呼び止められた健が振り返る

 

「お前、雄英でたら私の所に来い」

 

「はぁ」

 

「先輩、気が早いですよ。彼まだ1年ですから」

 

雄英でたら来いと急に言われて健はいきなりで首を傾げ、ホークスは時期尚早と止める

 

「いいじゃねぇかホークス、コイツの事気に入った。卒業したら私のとこでサイドキックに付けるぜ」

 

「まだ職場体験しかしてないですよ?インターンで呼んでから考えてもいいんじゃないですか?」

 

「あ~それもそうだな・・・よし!インターンはお前を呼ぶぞ。いいな」

 

健に指を差し決定事項が如くに告げるミルコ、だったが

 

「あ~・・・すいません、インターンはプッシーキャッツの方達からもお誘いを受けてまして・・・」

 

健がそう告げた瞬間ミルコが背中に飛び乗りヘッドロックを掛けた

 

「いだだだだ」

 

「テメェ次から次に口応えするなぁ!!気に入ったぜおい!!」

 

またもタップをする健と青筋を浮かべているミルコにホークスは肩を竦めたのだった。因みにその光景はホークスのカメラにも映っており、峰田は血涙を流していたとさ。因みに乾パンは期限間近だったのでリカバリーバールの許可の元みんなで食べた

 

TO BE CONTINUED




今回はここまでです、次回から林間合宿に入ります
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