僕のヒーローアカデミア ~MAN OF STEEL~ 作:スルタン
オールマイト達が敵連合のアジトにカチコミを掛けようとしているほぼ同時刻。変装した緑谷達は発信機の信号を元に廃倉庫と隣の建物を隔てる狭い塀の間を半身になって進む
「まさか・・・おゝとりが無個性だったなんてな」
先頭から二番目に進む切島が呟く
「あの時は冗談かと思っていましたが、根津校長があの様に仰った以上事実であると認めるしかありませんわ」
先頭を進む八百万が応える。緑谷は先ほどから黙ったまま皆に続く
(おゝとりくんのあの身体能力は個性によるものかと思ってた。でも違った・・・あの能力は全部彼が鍛錬の末に会得したなら一体どれだけ過酷だったんだ・・・?それなのにぼくは・・・)
緑谷はオールマイトとの修行の日々を思い出す。10ヶ月に及ぶ海岸を清掃するトレーニングの末に平和の象徴から託された個性、まだ完全に扱えないこの力を制御しようとしている中彼は無個性でありながら今まで幾多の脅威に立ち向かってきたのだ。彼と緑谷の間にある差にある種の空虚感を覚えていると
「緑谷」
前を進む轟が声を掛ける
「あっ・・・ごめん!何?」
「お前おゝとりと自分を比べてたろ」
轟は緑谷の考えなどお見通しとばかりにずばり当てる
「え!?・・・どうしてわかったの?」
「お前の個性の特性はあいつと同じ様なタイプだ、ある程度被るのは仕方ねえし現時点ではあいつは無個性でありながら実力が上なのは確かだ。だが焦って追いつこうとして躓いたら元も子もないぞ」
「それは・・・そうだけど」
「緑谷くん、俺も轟と同意見だ。それに今は爆豪くんを助け出すのが先決、今はその事に集中しよう」
轟の意見に飯田も賛成する
「でもよあの記者の言い方、いくら何でもひでぇよな。あいつがいない事をいいことに言いたい放題いいやがって」
切島は記者会見でのマスコミによる相澤達への質問攻めに苛立ちを覚える
「下手に対応するのはマスコミに餌をやるだけの悪手だ、冷静に対応するしかない」
「そうだけどよ・・・」
「俺だって正直むかついたさ、だが今はやるべきことがある」
~
緑谷達が切島が用意した暗視装置で廃倉庫を調べる丁度その頃、ヴィランのアジトのバーでは爆豪が臨戦態勢で構える
「先生ぇ・・・?てめぇがボスじゃねぇのかよ・・・白けんな」
「黒霧、コンプレス。また眠らせてしまっとけ・・・ここまで人の話聞かねーとは逆に感心するぜ」
死柄木はやれやれといった感じで二人に指示を出す、黒霧とコンプレスが爆豪の方を向く
「聞いて欲しけりゃ土下座して死ね!」
威嚇にしては過激な事をいいながら気取られないように少しづつ出口に近寄る、爆破で部屋ごと吹き飛ばすこともできるであろうが黒霧の個性となにより人数が多い。確率的に扉からの脱出が生還率が高いと判断したのだ
(どうにかして後ろのドアから・・・!)
その瞬間そのドアからノック音が響いた
「どーもぉピザーラ神野店ですー」
その声に一同が一瞬動きを止めた。秘密のアジトである此処にピザを頼む危機管理のなっていない人間などいるわけもない。であればだれも頼んでないものがなぜ知られていない此処にきたのか、一瞬の思考が過ったその時壁をぶち破ってオールマイト達プロヒーローがアジトに突入してきた
「何だぁ!!?」
「黒霧!ゲート・・・!」
突然の乱入で連合が混乱する中死柄木は黒霧に個性の使用を指示、黒霧が個性を発動しようした瞬間期待の新人として注目を集めているシンリンカムイが個性を発動させる
「先制必縛!ウルシ鎖牢!!」
腕から無数の太い枝を生やし素早く反撃も許さず拘束する
「木!?んなもん・・・!」
「逸んなよ」
荼毘が燃やそうと炎を出そうとしたその時グラントリノが後頭部に蹴りを打ち込む
「大人しくしといた方が身の為だぜ」
「流石若手実力派だシンリンカムイ!!そして目にも止まらぬ古豪グラントリノ!!そしてもう逃げられんぞ敵連合・・・何故って・・・!?我々が来た!」
「オールマイト・・・!あの会見後に!まさかタイミングを示し合わせて!」
「木の人!引っ張んなってば!押せよ!!」
「や~~!!」
コンプレスはあまりにも出来すぎたヒーローの突入、テレビでの記者会見ではまだ捜査中としか言ったなかった。であればあの声明は自身らを油断させる為の罠であり敵連合を一網打尽にする為の作戦だったのだと気づいた
「攻勢時ほど守りが疎かになるものだ、ピザーラ神野店は俺達だけじゃない」
扉の僅かな隙間からエッジショットが現れ扉の鍵を開ける。開け放たれた扉から機動隊が突入してきた
「外はあのエンデヴァーを始め手練れのヒーローと警察が包囲している」
「塚内ィ!!何故あのメリケン男が突入で俺が包囲なんだ!!」
「万が一取り漏らした場合君の方が視野が広い」
「シャ!!」
オールマイトは爆豪の方へ振り返る
「怖かったろうに・・・よく耐えた!ごめんな・・・もう大丈夫だ少年!」
「こっ・・・怖くねえよヨユーだクソッ!!」
爆豪は否定するがそれが強がりだとわかっていたオールマイトはサムズアップする
「折角色々こねくり回してたのに・・・何そっちから来てくれてんだよラスボス・・・仕方がない・・・俺達だけじゃない・・・そりゃあこっちもだ・・・黒霧!持って来れるだけ持って来い!!!」
死柄木が黒霧に命令して敵連合の主力の一つである脳無を出す様命令する、がなんの反応もなく数瞬の静寂が流れた
「・・・」
「すみません死柄木弔・・・所定の位置にある筈の脳無が・・・ない!!」
「!?」
黒霧の思わぬ報告に声を上げずに驚愕する死柄木。オールマイトは爆豪に近づき肩に手を乗せる
「やはり君はまだまだ青二才だな死柄木!」
「あ?」
「敵連合よ君らは舐め過ぎた、少年の魂を、警察の弛まぬ捜査を、そして我々の怒りを!!」
脳無格納庫ではベストジーニストが率いる別動隊が脳無を拘束し虎がラグドールを救出していた
「脳無格納庫、制圧完了」
「おいたが過ぎたな、ここで終わりだ死柄木弔!!」
~
ヒーローが敵連合と脳無格納庫を制圧していたその頃、庵木総合病院とその周辺は地獄と化していた
「に・・・逃げろ~~!!!」
「誰かー!!!」
「助けてくれ!ヒーロー!」
激しい雨が降りしきる中、破壊された家屋や燃え盛る建物の間を縫う様に住民は逃げまどい、それを助けようとしていた現地のプロヒーローは襲撃の首謀者である脳無達によってほぼ壊滅していた。病院の職員は破壊されつつある病棟から動ける患者達を避難させるべく奔走している
「皆さん!慌てず避難してください!」
「ママ、恐いよ~・・・」
「大丈夫よ、今ヒーローが頑張ってくれてるから」
「俺達、助かるのか・・・」
自身で動ける入院患者やその付き添いで来院していた家族らをレクリエーションルームや待合室に集め防火扉とシャッターを閉め気休め程度のバリケードをつくり立て籠もる。自身で動けない者は病室や広めに治療室に運び込み息をひそめる
「先生!彼が最後です!!」
健のいる集中治療室に看護師と医師が入ってくる
「山は越えたとて今ここで動かすのはリスクが高すぎる・・・だがヴィランがいつやって来るかわからない。すまないが耐えてくれ・・・!」
意識がない健に謝罪しながら必要最低限の医療機器を持ち出し移動しようとしたその時、近くの廊下の壁が吹き飛んだと共にプロヒーローが横切るように飛ばされてきた。壁に激突したヒーローは力なくずり落ちる
「あ、ああ・・・」
「そんな、プロヒーローが手も足も出ないなんて・・・」
突き破った壁から他のヒーローの首根っこを掴み引き摺りながら黒い体色の脳無が姿を現す。首を動かし医師らの方を向く
「ヒッ・・・!」
蛇に睨まれた蛙とはこのことか、圧倒的な力の差を前に看護師が掠れた短い悲鳴を上げる、本当は叫びたいのだろうが恐怖と絶望の前に上げる声すらあげられない。脳無は掴んでいたヒーローを手放し近づいてくる
「こっちに来る!」
「ああああ!」
この部屋は出入り口は一つしかない。完全な袋小路、仮に他の出入り口があったとしても身体能力の差で逃げ切るなど不可能だろう。脳無が近づく毎に全員が恐怖するが医師が庇う様に前に出て両手を広げる
「つッ・・・!!」
無駄だとわかっていても医師としての責任、人としての正義感がそうさせたのだ2メートル半ある巨体が目の前に迫りその威圧感に体を震わせるも尚も立ち塞がる
「患者には手出しさせないぞ・・・!!」
「先生!」
「私は医者だ!傷ついた人を見捨てるなんてできない!」
足止めすらならないとわかっていようとも、無謀だとわかっていても人を救けるという根底はヒーローと同じなのだ。脳無はそれを手の甲で医師をはたき飛ばす
「ぐあああっ!」
器具や隣の寝台ににぶつかり倒れる。痛みと衝撃で動けない医師を無視し看護師達に迫る
「ハッ・・・ハッ・・・!」
「く・・来る!」
過呼吸を起こす者、恐怖する者がいても逃げる者はいない。患者を見捨てないという精神は皆同じなのだ。その事を露も知らない脳無は看護師に手を伸ばす、満身創痍の健は後でも始末できると判断したのだろうが
「くぅ・・・!!」
掴まれそうになった看護師が咄嗟に目を閉じる、だが掴まれた感触がこない事から目を開けると脳無の腕をしたから掴み上げる包帯とガーゼに巻かれた手があった。それを掴んだまま寝台から体を下ろし立ち上がり心電図のコードが取れ点滴のチューブを落としながら一歩、また一歩と脳無を押し返す
〜
健、体の方は大丈夫か?
脳無が病院を襲撃し始めた頃、眠っている健の精神の中で黒服の男が話しかける
えぇ、最初は自分でもどうなるかと思いましたがなんとか乗り越える事ができました。ですが・・・
何故耐性を手に入れてたのに重症化してしまったか、だろう?
そうですね、あの時に科学者の方から毒の類は効かないと知らされたはずなんですが・・・
すまない、実は君の実験手術に躍起になっていてそこら辺の調査を充分にしていなかったらしい
はぁ
それで改めて調査した結果、一度受ける必要がある事が判明したのさ。全く人騒がせだよ
ではもう自分の体は
そう、もう同じ様な状況になることは無い。そして目覚める時だ、敵が直ぐそこまで迫って来ている
男は林間学校からの今までの近況を健に伝える
自分が意識を失っている間にその様な事が・・・こうしてはいられません
敵は眼前に迫っている、全開ではないが底力を見せてやれ。さ、行こうか
健は目を開いた瞬間目の前に黒い腕が伸びている。咄嗟にそれを掴み体を起こし立ち上がる、脳無は突然の事で驚いている、尚且つ力で押し戻されている事に焦りか不快感、逆の腕で殴り飛ばそうと振りかぶる。健はそれを逆の掌で受け止め腕を引っ張り脳無の顔面に頭突きを叩き込み怯んだ隙に腹部にパンチをめり込ませくの字に曲がった所に延髄に手刀を叩き込む、脳無は白目を剥き床に倒れ込む
「大丈夫ですか」
健は直に飛ばされた医師に近づき手を差し伸べる
「すまない・・・飛ばされただけだから大丈夫だよ。そんな事より君は大丈夫なのかい!?」
「先生達の処置のおかげで峠は越えました・・・まだ少し喉が変ですが」
医師の手を引き起こし僅かに咳をしながら応える
「すいませんが、この事態は一体」
「わからない、最初は病院の外が騒がしいとしか思っていなかったんだが次第に崩壊する音や火の手が上がり始めて次にこういうやつらが病院を襲い始めたんだ」
(まだ複数の敵がいるのか)
医師から状況を聞いた健は心の内で思考をする。心当たりがあるのはAFO、どういう心算かはわからないが自身を始末しに来たか、何か別の目的があるか
「プロヒーローの方達は来ていないのですか?」
「・・・殆どが敵にやられたみたいだ。県外からも応援を呼んでいるだろうがこんな混乱だ、いつ来るかは」
医師と看護師が暗い表情を浮かべるのを見た健は数秒目を閉じたあと開く、包帯とガーゼに包まれた体はダメージは残ってはいるが動ける
「ならば自分が行きましょう」
「それは駄目だ!仮免許をもっているならまだしも君は学生だ!勝手な戦闘行為は御法度だぞ!」
「林間合宿で敵の襲撃で個性を使用しての戦闘を許可されていました」
「だが此処は病院だ!それにその指示は既に取り消されているはずだろ!」
「自分は直接その指示は聞いていません。学校からの解除命令を受けていない以上自分にはまだその指示は生きています」
「それは屁理屈だ・・・!」
医師からしてみればこじつけレベルの理由にしか聞こえないがこの状況を脱する為には彼にやってもらわないといけないと薄々は感じている
「自分は意識を取り戻した時にヴィランに襲われて咄嗟に反撃した。それから他の敵が自分に襲い掛かり止む無く自己防衛に徹した、責任は自分がとります。貴方達は止めたが振り切られたと言ってください」
「・・・・」
「先生」
沈黙する医師に看護師が声を掛ける
「・・・こんな状況だ、君が頼りだ・・・勝手な事だが」
「いえ、自分も覚悟は決めております」
「なにかできる事はあるかい」
「治療の後処理を」
「わかった」
医師は頷き看護師に指示を出し繋がったままとチューブやコードの後処理を始めた
TO BE CONTINUED
次回は戦闘中心になると思います