僕のヒーローアカデミア ~MAN OF STEEL~ 作:スルタン
ベストジーニスト率いる別働隊が突入した脳無格納庫。迅速な行動で起動する前に脳無とラグドールの救出に成功しほぼ完璧に任務を終えたジーニスト組、本来であればMt.レディが作った突入路だけの損害で済んだ倉庫は周りの建築物と地面と共に抉り消し飛んでいた、Mt.レディ、ギャングオルカ、虎はラグドールを抱きしめたまま気絶している
「流石No.4ベストジーニスト!!僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ!!」
黒いスーツと髑髏に呼吸器の様なパイプ状の装置が組み込まれたマスクを被った男が拍手をしながら衝撃で満身創痍のベストジーニストに近づく
「皆の衣服を操り瞬時に端へ寄せた判断力・技術力!並の神経じゃない」
「・・・こいつ・・・」
ダメージでまともに動かない体を起こしながら作戦会議の内容を思い出す。情報では敵連合にはアドバイスや戦略を提供するブレーンがいる事。強さはオールマイトに匹敵するが狡猾で用心深く自分の手を汚さず安全な所で姿を現さない。そのはずだった
「話が・・・違う・・・!」
姿を現さない所か自らヒーロー達の前に現れ一瞬の内に全滅寸前に追い込んだこの男が警察の言っていた要注意人物であることは明らかだった、先の一撃で力の差は圧倒的。だが
「一流は、そんなものを失敗の理由に・・・!」
例え力で負けようとヒーローの意地と信念がベストジーニストを奮い立たせ個性で捕縛しようと繊維を飛ばした瞬間、自身の腹に大穴が空いた
「相当な練習量と実務経験故の強さだ。君のは・・・いらないな」
吐血したジーニストが力なく倒れる
「弔とは性に合わない個性だ」
AFOが地面に降り立つと同時になにもない空間から突如銀色混じりのヘドロが現れ水音と共に爆豪が出てきた
「ゲッホ!!くっせええ・・・!なんじゃこりゃあ!!」
「悪いね、爆豪君」
「あ!!?」
混乱している爆豪にAFOが声を掛けるが突然の事で雑な返事しかできない爆豪の後ろで次々と連合のメンバーが現れる
「また、失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ?またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した、この子もね・・・君は大事な駒だと考え判断したからだ」
AFOが死柄木に近づき手を差し伸べる
「幾らでもやり直せ。その為に僕がいるんだよ、全ては君の為にある」
死柄木の目の前に立ったAFOが急に無言になり上空を見る
「やはり来てるな・・・」
AFOの目線の先に上空からオールマイトが急降下しながら拳を振りかぶる。AFOは開手で受け止める
「全て返してもらうぞ!!オール・フォー・ワン!!」
「また僕を殺すか?オールマイト」
~
場所は変わって庵木総合病院、二体の痩せ型の灰色の脳無が職員や患者が立て籠もっている部屋のシャッターを喰い破り、防火扉を叩く。幾度となく叩かれたその扉も所々凹み長くはもたない
「ひぃ!」
「皆さん、落ち着いて・・・!」
「お父さん・・・」
「大丈夫だ。きっとヒーローが来てくれる・・・」
部屋に音が響くごとに小さな悲鳴を上げる者、涙を流す子供、絶望に顔を染める者、ヒーローが来てくれるという希望に縋りつくも金属が破ける音と共にその希望は潰える
「あ・・・あああ!!」
「もう駄目だぁ!」
開いた穴から脳無が顔を出し人々を見る。目をギョロギョロ動かし獲物を見つけたかのように舌なめずりをする。明滅する照明と合わさり悪魔の様にも見える。空いた穴に手を掛け広げようとしたその時、脳無の頭を包帯を巻いた手が掴み穴から引き剥がす。姿は見えないが部屋の外では揉み合うような音と衝撃音と衝突音が何回か響く。職員が外を覗こうとした瞬間横のくぐり戸をぶち抜いて白目を剥いた脳無が転がり込んだ
「きゃああ!」
「なんだ!?」
部屋の人達が驚愕するなかもう一体の脳無の首根っこを掴んだ健がくぐり戸から入ってくる
「君は確か雄英の・・・」
「救けに来ました。無事でよかったです」
健はもう片手で消化ホースを持っており素早く脳無を縛り上げる
「この周辺の脳無は無力化しました。ですが他にもいるはずです。此処は危険ですから別の場所に避難した方がよいでしょう」
「別の場所と言われても・・・」
「自分が騒ぎを起こせばヴィランは集まってくるでしょう。引き付けている内にできるだけ安全な場所で隠れていてください」
健は立ち上がりくぐり戸から廊下に出ようとする
「だが君一人じゃ!」
「ヒーローの応援が来るまで持ちこたえれば勝ちです、それまでヴィランを抑え込んでみます」
止めようとする看護師に健は背中を向けたまま顔を横に向けそう告げ廊下に出た。数秒して暗がりからまた二体の脳無がぬっと出てきた。健は短く深呼吸をして脳無に向かって歩き出す
「なんとしても時間を稼がねば」
片方の脳無が飛びかかり組み付く、健は胴体を両手で掴んで引き剥がし床に叩きつける。蹴り飛ばそうするももう一体の脳無が健の背中に組み付く
「!」
引き剥がそうと背中に手を伸ばした瞬間電撃が身体に流れる。この脳無は電気系の個性が使えるようだ
「ぐっ・・・!」
僅かに体勢を崩すが直ぐに脳無の首を掴み引き剥がし殴り飛ばす、床に叩きつけた脳無に視線をやるとそこにはいなかった
「どこに」
視線を素早く動かす。そこに骨質を角めいた棘が目の前に迫る。健はそれを掴み取るやいなや突然破裂する
「!!」
健はまさか破裂するとは思っておらず欠片が刺さった自らの手と飛んできた方向にいる床に叩きつけた脳無が壁に吸い付き掌を此方に向けている。それを数瞬見ていると後方から重量のある足音が迫る。振り向くも間に合わず腰部に衝撃を受けながら壁にぶつかりヒビが入る
「ぐあっ」
腰に組み付いている脳無の腕を掴み引き剥がそうとすると他の脳無が飛び掛かりそれぞれの能力で脱出を妨害してきた。その間にも押し込む力が増していき更には背中から何かが生えてくる
「嘘だろっ」
健が思わず言葉を漏らす。彼の眼前には大口径の大砲が脳無の背中から生えてきたのだ、この状況で次に起こることは一つだ、健は直様ガードする、次の瞬間鋼鉄の砲弾が発射され健を壁毎吹き飛ばす。外に吹き飛ばされ地面に背中からぶつかり僅かに息が止まる
「くう・・・まさかあんな能力があったとは・・・」
激しい雨に打たれながら起き上がり片膝を着いて少し息を切らしていると破壊された壁から脳無が降りてくる。そして周りからも気配が集まってくる、今の轟音で無数の脳無が次々と病院の敷地に集まってくる
「思っていたより数が少ない・・・プロヒーロー達の尽力のおかげか」
崩れた外壁の先に数人のヒーローと一体の脳無が気を失っているのが見える。人の騒ぎがなくなっていたのは住民が避難してヒーローとヴィランしかいなくなったのだろう
「全部で・・・8体、やるしかない」
目線を動かし周囲を確認する。白が3、灰が3、黒が2、体型から見て色が黒に近づくほど性能が高いようだ。周りを囲まれるも健はたじろぐ事無く構えた時、脳無が一斉に襲い掛かった
~
場所は変わって神野区、AFOが吹き飛ばした更地で死柄木達はAFOにより強制発動されたワープゲートにに引き摺り込まれそうになっていた。爆豪は緑谷達の作戦によって救出されている
「待て、駄目だ先生!」
オールマイトと殴り合いながらも追撃しようとするグラントリノを触手で弾き飛ばす
「その身体じゃあんた・・・駄目だ・・俺まだ!」
「弔、君は戦いを続けろ」
AFOが弔にそう語り掛けたと同時にゲートが閉じる。オールマイトはその隙を逃さず拳を振りかぶる
「僕はただ弔を助けに来ただけだが」
「!?」
AFOの目の前にヘドロと共にグラントリノが湧きだす。咄嗟の事で攻撃を止められず頬を殴ってしまったと同時に拳が弾かれ指と腕があらぬ方向に曲がる
「戦うというなら受けて立つよ?」
「俊典・・・!!お前・・・!!」
「申し訳ありません!!」
「なんせ僕はお前が憎い。嘗てその拳で僕の仲間を次々と潰し回り、お前は平和の象徴と謳われた・・・さぞやいい眺めだろう?」
過去からの因縁を語りながら腕を倍以上に膨らませる。オールマイトはそれをさっきと同じ攻撃と判断。グラントリノを引き抜き様に拳を繰り出す
「DETROITSMASH!!!」
拳がぶつかり合い衝撃波が周りに伝わる
「心置きなく戦わせないよ?ヒーローは多いよなあ。守るものが」
「黙れ」
オールマイトがAFOの腕を掴む。驚異の握力で鈍い音が響く
「!」
「貴様はそうやって人を弄ぶ!壊し!奪い!つけ入り支配する!日々を暮らす方々を!理不尽が嘲り嗤う!私はそれが許せない!!」
マスク毎顔面を殴り地面に叩きつける。マスクが拉げ砕け散る、痛恨の一打を打ち込んだオールマイトだが放り出されたグラントリノが思わず呟く
「俊典・・・!活動限界が・・・!!」
オールマイトの顔の半分が骸骨の様にやせ細っている。喘息混じりに息を切らせ血を垂らす
「いやに感情的じゃないかオールマイト、同じような台詞を前にも聞いたな」
マスクから呼吸音を鳴らしAFOが応える。頭部にパンチを打ち込まれたにも関わらず苦痛や驚愕の声すら上げず淡々と
「ワン・フォー・オール先代継承者、志村菜奈から」
~
オールマイトがAFOにパンチを叩き込んでいた頃。白い脳無が病院の壁にめり込み動きを止める、飛んできた方向で腕を振りぬいている健の背中に鞭の様にしなった腕が叩きつけられる
「!」
普通の人間なら悶絶、最悪ショック死している程の攻撃にも声一つ上げず振り返る。灰色の一体が腕を触手の様にしならせ黒色の脳無が走り迫る、迎え撃とう動いた瞬間脇腹に砲弾がめり込む。眉を僅かに顰める体勢が僅かに崩れ頬を殴られる
「っ・・・!」
反撃で腹部にパンチを打ち込むも手応えがあまりない。健は一瞬目を見開く、咄嗟であまり力を込められなかったが白い脳無を殴り飛ばしたのと同じ威力のはずだった
(物理耐性があるのか)
一瞬の思考、脳無の拳を受け流し懐に潜り込み体当たりで突き飛ばす。素早く振り返り鋭い刃を両腕から生やした灰色の攻撃を白刃取りで受け止める、だが受け止めた刃が赤く光り始め掌から煙と共に肉が焼ける音と匂いがし始める。同時に脇腹にもう片方の刃を刺される、熱と痛みが広がる
「あっつ・・・!」
受け止めた刃を捻じって折り自身に刺さっている刃を腕を掴んで引き抜き手刀で叩き折る。脳無を引き込んで顎に肘打ちを叩き込み怯んだ所を首を掴んで持ち上げ後頭部をアスファルト目掛けて叩き込む。地面が砕け頭部がめり込み動かなくなる
「これで2体、後は」
横から迫る触手を掴み止め残像が残るほどの速さで此方に引っ張る。灰色の脳無が凄まじい勢いで飛び込みその胸にラリアットを叩き込む。地面をバウンドする脳無に自身の触手を首に絡ませ締め上げる。ギリギリと締め上げる音と共に泡を吹く脳無が無我夢中で残った腕で健に鞭を打ち据える
「ふんっ!」
至る所に内出血を作りながらも力を籠めると痙攣の後脳無の体は力なく崩れ落ちる。地面に捨てる
「後5・・・」
火傷と出血する脇腹を抑え残りに向き直る。脳無がじりじりと迫り健は病院から敢えて離れる様に後ろに下がる
「夜明けまでには制圧しなければ。病院にいる人達の体力と気力が持たない」
脳無が其々の個性を出しながら相対する。轟音の雨と落雷が鳴り響く。崩れた病院の壁から職員や患者やその家族が外を覗き見る
「先生・・・」
「・・・只でさえ満身創痍の体にあれほどの負傷・・・普通の人間なら動く所か死んでもおかしくない・・・承諾したとはいえ私は彼を更なる苦境に立たせてしまった・・・」
「それは私達も同じです」
「先生じゃなくても誰かが彼に頼んだと思います」
苦悶の表情で顔を伏せる医師に看護師がそう応える。その反対側で入院している男の子と女の子が母親に呟く
「お母さん・・・お兄ちゃん大丈夫だよね?」
「・・・ええ、きっとあの悪い人達をやっつけてくれるわ」
「でも、あの人とても痛そうにしてるよ?」
「それは・・・」
母親と父親は気丈に応えるがそれが無理をしているのが誰が見ても明らかだ。双子が健の方を向くと遠巻きに目線が合う、不安げに見つめる子供達に健は安心させるように口元を僅かに綻ばせアルカイック・スマイルで腰に手を当て仁王立ちで相対する
「此処には守るべき人達がいる、今はまだ倒れるわけにはいかない」
深呼吸をし、師と同じ構えをとる。白い脳無が不意打ちの心算か骨質の棘を投げる。それをウルトラショットで迎撃し棘を消し飛ばす。脳無は遠距離攻撃を持っていないと高を括っていたのか反応しきれず腹部に光弾を着弾、そのまま後ろに飛ばされ壁に激突し瓦礫に埋もれる
(エネルギーが限界で今ので打ち止め。だがこれで敵に警戒させる事が出来る、悟られない様にしなければ)
脳無は味方が吹き飛ばされたのを警戒してか散開して迫る。健は半歩下がり構えなおす
「来るなら来い。そう簡単には倒れないぞ」
TO BE CONTINUED
次で神野事件は終了の予定です