僕のヒーローアカデミア ~MAN OF STEEL~ 作:スルタン
8月中旬夏休みも20日を切り、A組のメンバーは始業前の訓練開始を兼ね以前から検討されていた自らの家である寮の前に集合していた。学校の敷地内で始まる新生活に不安と期待に胸を膨らませる者が殆どだ
「取り敢えずA組諸君、無事にまた集まれて何よりだ」
寮の前で相澤が生徒の前に立つ
「皆、許可下りたんだな」
瀬呂は横目で一番難度の高いであろう葉隠と耳郎を見る
「私は苦戦したよ・・・」
「フツーそうだよね・・・」
「二人はガスで直接被害あったもんね」
耳郎だけは歯切れが悪い、その親がオールマイトの大ファンで知らせが来た時は一発OKしてたのである。言うに言えない、もちろん尾白はそんなこと知らない
「無事集まれたのは先生もよ、会見を見た時はいなくなってしまうのかと思って悲しかったの」
「うん」
「・・・俺もびっくりさ。まぁ色々あんだろうよ」
蛙吹とそれに頷く麗日に相澤も歯切れ悪く応える。そして手を一回ならし注目させる
「さて・・・!これから寮について軽く説明するが、その前に一つ。当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いて行く」
「そういやあったなそんな話!!」
「色々起き過ぎて頭から抜けてたわ・・・」
「大事な話だ、いいな」
ざわついた面々を一言で黙らせ相澤が続ける
「轟、切島、緑谷、八百万、飯田、この五人はあの晩あの場所へ、爆豪救出に赴いた」
五人を除いた面々が驚愕する、耳郎と葉隠は知らなかったという表情、他は本当にやったのかといった具合に
「その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだ・・・色々棚上げした上で言わせて貰うよ。オールマイトの引退がなけりゃ俺は爆豪・耳郎・葉隠・おゝとり以外全員除籍処分にしてる」
「!?」
本来であれば除籍処分という宣告に全員が気を張り詰める
「彼の引退によって暫くは波乱が続く・・・敵連合の出方が読めない以上、今雄英から人を追い出すわけにはいかん・・・行った五人はもちろん、把握しながら止められなかった十二人も。理由はどうあれ俺達の信頼を裏切った事には変わりない・・・」
その言葉にA組全員が沈黙する
「世紀の手続きを踏み正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい・・・以上!さっ中に入るぞ、元気に行こう」
((((いや待って行けないです・・・))))
流石に一瞬で気分を変えるなんてできるわけない。お構いなしで寮に足を進める相澤、気分が落ち込んでいる中爆豪が切島を横目に上鳴の襟を引っ掴んで植え込みの方へ引きずる
「来い」
「え?何?やだ」
突然の事で断ろうとする上鳴だが既に遅く引き摺り込まれる。姿が見えなくなった瞬間放電の音と閃光の後、アホになった上鳴が出てくる。アホ面に耳郎は吹き出し他の面々が呆気に取られる中爆豪が切島に札束を差し出す
「えっ!怖っ何カツアゲ!?」
「違ぇ俺が下した金だ!いつまでもしみったれたれっとこっちも気分悪ぃんだよ」
爆豪の手には切島が通販で購入した暗視鏡分の5万円を突き出される、なんやかんやでしっかりしているしぶっきらぼうだが恩は返している
「あ・・・え?おめーどこで聞い・・・」
「いつもみてーに馬鹿晒せや」
切島に札束を押し付け相澤の付いて行く
「・・・わりぃな」
(茶番・・・も時には必要か・・・)
後ろに目をやりながら相澤が心の中で呟く。沈んだ場を爆豪がその気があったのかは知らないが
「先生」
玄関に向かおうとする相澤を緑谷が呼び止める
「どうした緑谷、寮の説明は中でする」
「えっと、そうじゃなくて。おゝとりくんは休みですか?」
健がいない事が気になって相澤に質問する緑谷、気になっているのは彼だけではないだろう
「あいつは医師の退院前の診察を受けてからこっちに合流する。そこまでかからんだろう。行くぞ」
~
寮に入り相澤から説明を受けるA組、5階建て、一階は食堂に風呂・洗濯ができる公共スペース、2階から上は一人一部屋、冷暖房トイレ冷蔵庫にクローゼット完備の上等な部屋だ、ついでにベランダ付き
「・・・と大体こんなとこだ、事前に送ってもらった荷物は各自の部屋に入れてある、今日は取り敢えず部屋を作ってろ。明日また今後の予定を説明する」
「「「「ハイ先生!!!」」」
返事をする緑谷達の後方から、玄関の開く音が聞こえた。相澤がそれに気づいて目線を向け声を掛ける
「来たかおゝとり、予定より少し遅かったな」
「すいません、念の為と言われて精密検査を受ける事になりました」
健の声に数人を除いて一斉に振り返る
「おゝとりくん!怪我は大丈・・・夫・・・」
緑谷の声が途中から細くなり他のクラスメイトも喜びの表情から驚きに変わる
「うん、ごめん心配かけて」
健は気にすることなく復帰の報告をする。顔や腕など見えている部分の糸やステイプラーはなくなったが切り傷や刺し傷の痕が生々しく残っており頭部も痕に沿って髪がなくなっている
「医者からはなんて言われた」
「日常生活は問題ありませんが次の通院までは運動はNGとの事です」
「そうか・・・なら実技の方は見学になるか。それで済んだこと自体が奇跡だしな」
相澤は数瞬考え健に対する対応を告げる、次に緑谷達に視線を向ける
「もう一度説明するのも面倒だ、お前達からこの寮について説明してやれ。頼んだぞ委員長」
「は、はい!!」
呼ばれた緑谷が慌てて返事をするのも確認し相澤が全員に視線を向ける
「もう一度言うが明日に今後の予定を話す。以上だ、解散!」
「「「「ハイ!!!」」」」
相澤が寮から出た後緑谷達が健の所に集まってくる
「おゝとりくん、怪我の方は大丈夫なの?」
「テレビを見た時はびっくりしたぜ!」
「でもちょっとしか報道しなかったよな~」
「正に超人・・・」
其々矢継ぎ早に話すのでてんやわんやしていると爆豪が此方を見ているのに気づいて声を掛ける
「爆豪君も無事でよかったよ」
「・・・人の心配するよりてめぇの心配したらどうだ。そんなひでぇ顔で言われても説得力がねぇわ」
「かっちゃん・・・」
乱暴な言い方にたじろぎながらも注意しようとする緑谷の肩に手を置き続ける
「うん。君の言う通り、こんななりでいっても恰好がつかないね」
「わかったら次からみっともねえ様晒すな、学校は兎も角俺の世間の評価が下がるわ」
爆豪はそう言いながらエレベーターの方へ歩いて行った
「いくらなんでも言い過ぎじゃないかアイツ・・・」
「おゝとり、余り気にするな」
砂籐と障子がフォローするがスッと手を出して気遣いに感謝する
「違うんだよ、あれは爆豪君なりに僕の事を心配してくれてるのさ」
~
その日の夜、部屋の整理が終わり健は一足先に部屋の椅子に座り休んでいた。医師からはなるべく多く休養を取るようにと言われているからだ。因みに部屋は5階で砂籐の隣だ
(さっき外が賑やかだったな、大方部屋の見せ合いっこだろう)
そう心の中で呟きベッドに入ろうとした時ドアからノック音が響く
「?」
誰かと思い扉を開けると其処には緑谷が立っていた
「どうしたの緑谷君?」
「ごめんおゝとりくん、疲れてるのに」
「大丈夫だよ、中に入って」
健は緑谷を入るよう促す。一言断りお邪魔し健は椅子に、緑谷はベッドに座る
「・・・その様子だとなにかあった?」
「うん、実は」
緑谷は先ほどあった事を健に話した、自分達が学校の指示を無視して爆豪の救出に向かった事、それを蛙吹が面を向かって止めた事。それでも自分らはそれを振り切り蛙吹に辛い思いをさせてしまった事。洗い浚い
「そうか、蛙吹さんも。いや皆不安でそれをどうにかしたかった」
「ぼくらの勝手な行動で、みんなや家族に余計な心配を掛けちゃって。あの時はそんな事頭から離れて考えてもなかった・・・」
後悔と申し訳なさが合わさった表情で話す緑谷、健はそれを見て口を開く
「誰だって何かに集中すると周りが見えなくなる、大切な事なら尚更ね」
健は緑谷の話を聞き自身の考えを話す
「なにをどうしても、誰かを心配させてしまうのは絶対にある。大切なのはそれを少しでも減らせるように努力する事だと思う。特に今はね」
「減らす・・・」
「そう、人々を守る為には強くならなきゃいけない。それは自分の身を守ることにも繋がる、自分を守れなきゃ他人を守ることはできない」
健は緑谷にそう諭す、瀕死になったヒーローが大丈夫といった所で誰が安心するだろうかと
「今は難しいと思うけど、ちゃんと大丈夫って言えるように頑張って行こうって事さ」
健の言葉に緑谷は麗日の言葉が重なる
「・・・うん!頑張るよ、ぼくも!」
TO BE CONTINUED
次回は必殺技の訓練からスタートします