気がつけば和風な作りの建物の前に居た。
「ここって……」
「ここはアンタが昔居た迫真空手部さ。先輩後輩、挨拶してきたら?」
コージは田所の手を掴むと、建物の中に入る。
「ちょ、ちょっと……」
中は和風な作りだが、道場のようだ。そして畳の匂いがする。
「あっ先輩!どこいってたんすか!!」
一人の男が話しかけてきた。
「きっ……木村!?」
「何を戸惑ってるのか分からないんすけど……とにかく師範が怒ってますよ!!早く行ってくださいよ!!」
木村はそう言うと田所の腕を掴んで師範のいる部屋へと連れていく。
「ふっ……ついでに入部届でも貰おうかな」
コージは笑顔で言う。田所はそんなコージに戸惑う。
「え?あっ……ちょっと!!」
真夏の夜のトゥルーエンド
第2話<拳のラビリンス>
「田所浩二。アンタは時空の干渉を受けていないのか……さすがネットの玩具。精々bbでも作ってろよな……ははっ」
コージはそう呟くと田所と木村を背に、建物から出ようとする。
「おい」
突然背後から低めの声が聞こえる。
「アンタは……三浦……」
「そうだよ(便乗)」
三浦は勇ましい瞳でコージを見つめている。
「聞いていたゾ。お前がこの世界を壊そうとしてるんだってな。ポが止めるゾ」
幼稚且つ独特な語尾が目立つ彼だったが、強く握る拳、そしてその構えは、三浦が只者ではないことを暗示していた。
「ハッ……上等だよ。かかって来いよ!」
コージは構える。その構えは空手の上段回し受けに近いものだった。
「タァっ!!」
先に仕掛けたのは三浦だった。素早い動きでコージの目の前まで距離を詰めると、その右拳を大きく振りかぶってコージの顔目掛けて突き出した!
「甘いんだよ!」
コージはその拳を左手の甲で弾くと、そのまま右拳で三浦の鳩尾に重い一撃を与える。
「くふっ……」
三浦はその一撃で口から血を垂らした。しかし、彼の目は死んでいなかった。
「まだ……まだゾォ!!」
三浦は先程よりも速く鋭い攻撃を仕掛ける。
「遅いな!」
コージはその攻撃を全て弾き、カウンターで拳や蹴りを食らわせた。
「がっ……」
既に限界を超えていたのだろう。三浦はその場に倒れ、意識を失った。
「はぁ……はぁ……」
コージも息が荒くなっていた。そこへ田所がやってきた。
「アンタ……いったい何者なんだ。俺の知っている……三浦じゃ……ねぇぞ……」
ちょうどその場に木村が帰ってきた。
「先輩……反省部屋閉じ込められちゃったしな……ってえっ!?先輩……なんでここに!?」
コージの姿を見て木村は驚愕する。
「それに……三浦大先輩…………お前、先輩じゃ無いな」
「俺は……君達の知っている田所……いや、鈴木福じゃない。この世界に居る鈴木福とは違うんだ。」
コージはそう言うと、木村へ歩み寄ってくる。
「ちょ……何するつもりだ!!」
コージはその問いには答えず、木村の肩を掴むと、そのまま外へと出た。そして……
「ふぐっ!?」
そのまま彼の鳩尾に膝蹴りを入れた。
「はぁ……はぁ……」
木村はそのまま気絶し、地面に倒れた。コージは倒れた木村を建物の中まで運んだ。
「俺の可愛い弟子を傷つけたのは置いておこう。……お前は誰なんだ」
師範が聞いてくる。
「まぁ……お前からすれば鈴木福かもな」
コージはそう言うと、外へ出ようとする。しかしそれを師範に止められた。
「待て!君はまだ来たばかりだ。その力と才能を持ってすれば、更なる高みに登れるだろう!」
「……断る」
コージは即答した。
「何故だ。君の力と才能なら……俺を超えられる可能性だってあるんだぞ?」「俺には……他の目的があるんだッ!!」
コージは師範に拳を叩き込もうとするがあっさりと押さえられてしまう。
「カスが……効かねぇんだよ!」
師範はコージの腹を踏みつけると、そのまま首を絞めた。
「かはっ……」
コージの意識が薄れていく。しかし突然、首を絞める師範の手を振り払う。
コージは師範の腕を掴むと、そのまま投げ飛ばした!
「ラウンド2か?」
そして投げ飛ばした師範の方へと飛びかかり、その顔を殴った。
「ぐっ……」
「どうだ?まだやれるか?」
コージは師範の首を掴み持ち上げる。
そしてそのまま殴り飛ばした。
師範はそのまま地面に倒れると、動かなくなった。
「はぁ……はぁ……やっと終わったか……」
コージは肩で息をしながらその場に座り込んだ。
しかし、彼は気が付いていなかった。
後ろから何かが近付いている事に。
そして……背後から何かが掴まれる感覚がした!
『ッ!?』
コージは驚き後ろを振り返ると、そこには田所が居た。
「好き勝手しやがって……頭に来ますよ……?」
田所の服装は道着へと変わっていた。
そしてあの三浦の様な構えをする。
「いつの間に後ろに……それにその構えは!?」
田所はコージの疑問に答えず、そのまま拳を突きだした。
だが、コージはその拳を受け止めた。そして素早く反撃の蹴りを放った。しかしそれも避けられてしまう。
「クソっ……」
コージは再び構える。
今度は先程よりも深く腰を落とし、両手を顔の前に構えた。
それは空手で言う上段受けの様なものだった。
「いいよ……来いよ」
田所がそう言うと同時に再び攻撃を仕掛けてきた。
しかしそれはコージの予想範囲内だった。
田所が拳を振り下ろす瞬間に、コージは素早くその攻撃を弾いた。
「チィッ!!」
田所は舌打ちをしつつ再び攻撃を仕掛けてきた。
しかしその攻撃も全ていなされていく……そしてついにコージの攻撃が決まった!
田所の顔面にコージの拳が入る!
だが、それでもなお彼は倒れなかった。それどころか更に激しい攻撃を仕掛けてくる。
「まだ立つのか……」
コージは再び構える。
今度は先程よりも更に深く腰を落とした……まるで達人の様な体勢だ。
そして再び田所が攻撃を仕掛けてきた!しかし、その攻撃をいとも簡単に弾き飛ばすと、そのまま彼の鳩尾に膝蹴りを入れた。
「ぐっ……」
田所はその場に倒れ込み意識を失った。
「はぁ……はぁ……これで終わったか……?」
コージはそう言うと、建物から出ようとした。だがその瞬間だった。
突然背後から強い衝撃が走ったのだ。
衝撃とともにコージの羽織っていたタキシードの背中が裂けた。
「よぉ……ホモの兄ちゃん」
「アンタは……木村……」
次回もお楽しみに