魔法科高校の劣等生 死を視る者   作:ノッティ

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第17話

九重との連絡が一区切り付いた後、達也は個人的な魔法研究の続きを行うために自身の持つ研究室で作業を行っていた。仮想コンソールでキーボードを打つその姿は達也にとって日常的な物で、感情の起伏が乏しい彼にとっては珍しく素直に没頭できる事柄であった。

 

もちろん、その背景には妹と自分を取り巻く環境を打破するという猶予はあるものの、のんびりと構えてはいられない複雑な状況があるのだが、その事を抜きにしても達也にとって一人で研究に没頭することは、充実感が得られる数少ない出来事である。

しかし、今日の彼の様子は少し違った。何時も通りに頭は回転しており、魔法のロジックは着実に組上がっている。そのロジックをまとめながら、同時に汎用型のCADに必要な魔法式のデータを入力するために仮想キーボードの上を指はいつも以上に行き来する。

端から見れば、脅威的な速度で作業が進んでいると思われる彼の様子はまさに圧巻の一言に尽きる。しかしながら、その様子は何処か鬼気迫る雰囲気を醸し出していた。

達也のその様子を妹の深雪が見ればおそらく気づくだろう。それほどまでに達也は珍しく焦り(・・・)のを抱いていた。

それは常人のものとは比べるまでもなく些細な焦りであり、達也自身その程度の事で取り乱す事はあり得ない。そして、達也自身の特異な器質故にその焦りは感情として認知されることもない。だが、そんな小さな焦りが達也自身が気付かぬ内に行動に表れているようであった。

原因は言わずもがな、先程の九重からの連絡内容である。情報収集のプロフェッショナルである九重らしくない報告とその内容の不可解さ。そして、それが他者による魔法的な妨害行為だったとしても一切の証拠がない奇妙な状況である。この事に関しては不可解には感じるが、達也はこれ以上考えても仕方がないと割り切っていた。

九重も同じ意見だったようでひとまず志貴の情報収集は一度中断するとの事。しかし、調査自体は進めようと考えているようで、万全を期してより慎重に進めていこうと思っているために情報を伝えられるのは当分先になるだろうと、九重は付け加えて話していた。

達也もその方向性に関しては賛成であった。通信はそこで終了となるはずだったのだが、九重の心境を慮ってか達也はそういえばと話題を少し切り替えて話始めたことが今の達也の焦りの原因になってしまったのである。

「そういえば師匠。先ほどこちらから連絡を入れた時に志貴の名字をえらく気にしてたのは何故です?漢数字を冠した名字ということ以外にも、確か『古い』などと言っていませんでしたか?」

「ん?ああ、その事か。それに関しては忍というか隠密に長けた術者にとってはちょっとした都市伝説みたいな物でね。僕達の御先祖の代から語り継がれてた話だったからえらく古い名前を聞いたなぁと最初は思っていたのさ」

「差し支えなければその話、お聞きしても?」

「構わないよ。でも、論理的な思考の君にとってはつまらない話なんじゃないかなぁ」

「こちらから聞いたんですから、それはいくらなんでも無礼にあたることぐらい分かってますよ」

「あはは、そうかい?まぁ、僕も概要程度しか知らないんだがね」

「それではまず一つ質問を。達也君、『七夜』という名字を知っているかい?」

「・・・・・・初耳ですね」

「だろうね。『七夜』の姓を知る者は現代においてほとんどいない。何せ魔法が体系化するよりもずっと前にこの姓は消滅しているらしいと聞いている。それこそ民族的な研究をしている学者の中でも知っている人は一握りだそうだ」

「その『七夜』という姓は何か特別な者だったのですか?」

「そうだったと聞いているよ。『七夜』の一族は所謂暗殺集団みたいな物だったらしくてね。歴代の一族のトップはそれはまぁ誰もが化け物ぞろいだったそうだ。

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