ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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104話 両側モンハウ・戦闘開始

「――今の落石は危なかった……が、あの魔物たちが可憐な君を守ってくれて助かったか」

 

「人為的に」ダンジョン内の魔力の流れをかき乱してのリセットによる混乱を狙ったその存在は、うっかりで大切な捕食対象を始末してしまいそうになった反省をする。

 

せっかく、あまりにも美味で――次を探しても、恐らくはこの先数十年は見つけられないだろう極上な魔力を持つ「少女」を見つけたのだから。

 

「あまりに脆かったダンジョン内の魔力構造」は、その存在にとって、まるで砂でできた構造物。

 

より慎重にせねば――と、大切な「少女」を眺めながら思う。

 

一方で「もっと強靱な肉体だったはず」のその存在をも一瞬で蒸発させたモンスターたちを、改めて危険視。

 

「……ならば、物量よ。 何、あの人間どもも魔物どもも、中で最も弱い様子の可憐な君を守ろうとするだろう――彼女以外が倒れ、彼女が助けを叫ぶその瞬間に颯爽と助けに入る形なら……」

 

人間やあの魔物たちを物量で押し、疲弊しきったところで華麗に助ける。

 

そうすれば、「彼女」はきっと簡単に惚れてくれて身を捧げてくれる。

 

そんな、甘すぎるものの「モンスターが脅威な世界の常識」からすれば当たり前のシナリオを描き、その存在は――人間たちが身に付けているリストバンドへの電波をかき乱しながら、ぱちんと指を鳴らした。

 

 

 

 

「……リストバンドでの転送事故っていうリスクのこと、救護班さんに問い合わせました。 もし今すぐに危険じゃないなら、使用は控えてって」

 

「そうか、なら今は電波が回復するのを待とう。 幸いにしてみんな無事だし、モンスターの気配も近くない。 ……それにしても、どうしてダンジョンの更新っていう、ほとんど外れない予測がこんなにも……」

 

光宮さんと月岡さんっていう頼れるペアがいろいろしてくれてるあいだ、僕はすることがない。

 

だからおまんじゅうとチョコを腕の中でもふもふして少し。

 

「きゅいっきゅいっ」

「ぴぎー」

 

【ユズちゃん……】

【みんなが必死で相談しあう中、ひとりもふもふと……】

【いいんだ……これがユズちゃんなんだ……】

【ユズちゃんはね、じっとしてくれてるだけでありがたいんだ】

 

【おこさまかな?】

【おこさまだったわ】

【草】

【この子、ちょっと目を離すとすぐこうだから……】

【両端はひなたちゃんと月岡が守ってるし、ユズちゃんにはぼーっとする時間が必要だから……】

 

【ほ、ほら、あやちゃんとかユズちゃんのこれ見て和んでるし……】

【ひなたちゃんも嬉しそうだな!】

【ぼーっとしてないユズちゃんなんてユズちゃんじゃないし……】

【ひどい言いようで草】

【だって事実だし……】

【ユズちゃんはますこっとだからな!】

 

すぅーっとおまんじゅうの毛皮を嗅いで、ちょっと落ち着いた。

 

それで思い出したけども……月岡さん、大丈夫かなぁ。

 

あ、この状況も心配だけども、かと言って僕にできることは特になさそうだし、できることと言ったらタイミングを見て月岡さんを物陰に引きずり込んでズボン下ろしてあげることくらいだし。

 

でもリストバンドで帰るのが危険ってなんなんだろうね。

僕は良く分からないけど、光宮さんが難しい顔してるから間違いじゃないと思うんだけども、

 

「――――――ぎゅい」

 

おまんじゅうの機嫌が悪いときの声――ううん、警戒してる声で、僕はふわりふわりとしてた意識を集中させる。

 

……まだ通路から姿は見せてないけど、モンスターが来る。

 

おまんじゅうがこんな声を出すときは、大体いつもかなり危険な状況なんだ。

 

「……理央ちゃん! 月岡さん! おまんじゅうが!」

 

「おまんじゅう……ユニコーンか!?」

「そうです! この子、危険を察知できて……先輩!」

 

みんなが、ざっと武器を構え直し……通路の前と後ろ、どっちか迷ってる。

 

「おまんじゅう、どっち? ……両方!」

 

「ど、どうしよ!? こんな狭いとこでなんて」

「ひなたさん、落ち着きましょう!」

 

「……狭い通路だから、モンスターの数が少ないなら不利で、多いならむしろ有利なんだけどね。 その……ユニコーン、数とかまでは分かりそうかな?」

 

「えっと……ん。 たくさん……みたいで――」

 

おまんじゅうの声をもっと聞こうと思って、おでこ同士をくっつけて。

 

それで、なんか「聞けそう」な感じがあったって思ったら――。

 

「……来た! ひなたの方! えっと……たくさん!」

 

――――視界一面に広がるモンスターの群れ。

 

それが見えて思わず顔を上げると、通路の左右からモンスターたちがなだれ込んでくる。

 

「ちょおーっ!? なにこれー!? 何この数ー!?」

 

「……良く分からないけど、多分、今日行こうとしてた25階層までの敵から……もしかすると、中級者ダンジョンレベルのも居るかも、ね」

 

慌てながらもファイティングポーズを取ってる光宮さん、落ち着いて細長い剣を構える月岡さん。

 

「――こんなときだから、俺が戦っても良いよね? 護衛としての仕事だ」

 

「これ以上ないピンチですからお願いしますぅ!! っていうかほんと怖いっ! 柚希先輩助けてぇ!!」

 

【草】

【声量が強い理央ちゃん】

【やっぱり理央様よ】

【でも本当に多いな……何匹よ?】

【どっちからも通路埋め尽くしてきてるな……】

 

【これ、モンハウとか引いてない??】

【引いてるなぁ……】

【モンスターが密集して追いかけてくるんだ、モンハウ以外の何がある】

【え、でも、通路のどっちからもって】

【……モンハウの大部屋から両方繋がってるタイプの通路なんだろ……】

【……そう思いたいが……】

 

片方では光宮さんと月岡さんが走っていて戦闘開始。

 

「ひなたちゃん、そっちお願いっ! とりあえずタンクで!」

「わかった!」

 

たたっと跳ねるツインテが見えたって思ったら、どすっと地面にめり込ませる大剣。

 

「……それなら、私たちで迎撃ですね?」

「うん、ひなたがなるべく守るからっ」

 

ひなたさんの肩に手を載せつつ、あやさんが魔法の準備を始める。

 

「……なら、僕たちも」

「きゅいっ!」

 

おまんじゅうを抱え直し、ひなたさんのちょっと後ろへ。

 

……たくさんのモンスターが、こっちに走ってきてる。

 

ちょっと、怖い。

 

でも……こういういきなりの状況にも慣れてるんだ。

 

なら、眠くなっちゃうまでがんばらないと……ね?

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