ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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106話 強行突破――そして、大部屋へ

「――理央ちゃん! 月岡さん! 合図したら右に寄って戦い続けて!」

 

僕が出せる1番の声で、チョコのイメージで切り抜けるためにってみんなに伝える。

 

喉も痛くなるし、大きな声って出すのもちょっと怖いから普段はしたくないけど……今は、必要だから。

 

「この声は……柚希さん!? 何を!?」

 

「……分かりました先輩っ! 月岡さん、今はお願いします!」

 

【ユズちゃん!?】

【どうしたユズちゃん、何か】

【ユズちゃん、なんか声が】

 

「ひなたちゃんは合図したらそのまま剣を引き抜いてぐるって反転して理央ちゃんの方に走って! 通路の左側に寄って、攻撃始めて!」

 

「……うんっ!」

 

「あやさんも、ひなたちゃんの後ろへ! で、通路のあいだは休憩してください!」

 

「わ、分かりました! で、でも、そうしますとこちら側は……」

 

「――今、それを何とかします!」

 

【ユズちゃん、こんな声出せたんだ……】

【ああ……】

【なんか……凜としてるよな……】

【よく通る声だ……】

【普段の声は柔らかくてかわいいけど、今のもまた……】

 

【<URL>?】

【しっしっ】

【今シリアスだから引っ込んでろ】

 

「っ……!」

 

ぐぅっと、僕の中から魔力が吸われていく感覚。

 

……なるほど、おまんじゅうは相当に使うのを絞ってくれてたんだ。

 

そうだよね、ちょっと前までは10回とか20回の攻撃で眠くなっちゃってたんだもんね。

 

……でも、イメージ通りなら、チョコのこれに必要な魔力は、確かにこれくらいは必要……かも、ね。

 

【ユズちゃん!?】

【ぽんぽん痛い!?】

【草】

【おい、今シリアスなんだけど!!】

【ごめん、いつものノリで……】

【でも、お腹かがめて……大丈夫かな】

 

……たらり。

 

冷や汗が流れる。

魔力が吸われる。

 

……あやさんは、こんな辛さをさっきから。

 

でも、だからこそ。

 

「――――――――今です!!」

 

吸われる魔法が止まってチョコから合図があったから、もう1回、力を振り絞って声を上げる。

 

ひなたさんとあやさんが、ざっと走る気配。

 

……あ、僕、目……つぶってるんだ。

 

「……柚希先輩!」

 

すっ、と、目を開ける。

 

その先には――ほんの何十秒前に全部吹っ飛ばしたのに、もう――モンスターで、見える限りが埋め尽くされてる通路。

 

その手前には、さっきまでみたいにひなたさんは居ない。

 

僕に向かって走ってくるモンスターたち。

 

【ひぇっ】

【だからなんなんだよこの数!?】

【怖すぎる】

 

ちょっと見ただけでも、10や20は軽く超えてるモンスターたち。

 

――だから、これで、OK。

 

「――チョコ!」

 

「ぴっ!」

 

そんな声がしたと思ったら、目の前が銀色に埋め尽くされる。

 

【!?】

【なんだこれ!?】

【通路に……壁!?】

【いや、今チョコちゃんのこと】

【シルバースライム……壁……まさか!?】

 

――どんどんどんどんっ。

 

「ゴアアアア――――――――!?」

 

どんどんっとものすごい質量がぶつかる音が、新しい壁から響く。

 

そのあとからどすどすと。

モンスターたちの叫び声。

 

「チョコ! ……大丈夫かぁ……」

 

ダンジョンの廊下――綺麗な直線、だけども壁とか天井とかは凸凹してるそこに、垂直で滑らかで銀に光る防壁。

 

チョコが、片方を塞いでくれた。

 

今のところびくともしてないし、反射するほど平らな面もそのままだ。

 

「……っ……」

 

「あっ……と。 大丈夫ですか? 柚希さん」

「…………ごめんなさい。 つい、ふらっと」

 

「無理もありません……これだけのことをするだなんて、どれだけの魔力を……」

 

気が付いたらあやさんに抱きかかえられてて、息苦しいって思ったらあやさんのお胸で。

 

「ぷはっ」

「あら、ごめんなさい」

 

苦しかった……バイト先のおばちゃんたちよりもおっきかった。

 

【キマシ】

【あや×ユズ】

【いや、ユズちゃんから突っ込んでるんだからユズ×あやだ】

【あ?】

【お?】

 

【お止めなさいまし!】

【解釈違いは後回しになさいまし!】

【ごめんなさいお嬢様……】

【今は百合ぱふぱふを祝福するのです!】

【分かりましたお嬢様!!】

【宜しいですわ!】

【お嬢様に続け!】

【草】

【もうやだこいつら】

 

「……なるほど。 一時的でも片方を完全に塞げば」

「こう……やってぇ!」

 

今まではずっと中腰で構えてただけのひなたさん。

 

それだけでも疲れてるはずだけども、ずっと走り回ってた2人よりはまだまだ元気で。

 

「ひなたちゃん!」

「よし……これなら!」

 

さっきまで2人でしのいでたのを3人に。

2人でちょうど均衡してた前線が3人に。

 

その成果はみるみる出てきて、少しずつ3人が前に――押し出していく。

 

「……そのまま、3人で部屋まで突っ切っちゃってください! そうしたら、少なくとも片方の部屋の湧きは!」

 

「……そうでしたね。 人が居ると、ポップするモンスターは……」

「はい、ゼロにはならなかったとしても少なくなるって講習で……それに、この戦力なら充分……」

 

相当の魔力を吸われたらしく、体重のかなりをあやさんに支えてもらってる状況で、どうにか3人のあとについていく。

 

どすんっ、どすんっ。

 

鈍い音が、銀色の壁から響いてくる。

 

「チョコさん、大丈夫でしょうか」

「……まだまだ大丈夫みたいです」

 

【すげぇ】

【ユズちゃんの機転もすごいけど、あのシルバースライムも……】

【通路にいっぱいのモンスターを、片方だけとはいえ完全に封じるとは……】

【確かに、ボアの突撃も完全に跳ね返してたしなぁ】

 

「きゅい?」

「……うん、大丈夫」

 

腕の中で、おまんじゅうがいつもみたいにぐるんと見上げてきてる。

 

……手伝ってもらってる子が、今は体を張ってくれてるんだ。

 

なら、がんばって起きたままで移動しなきゃ。

 

【おー】

【ひなたちゃんがばっさばっさと】

【あれ? ひなたちゃん、こんなに攻撃力高かったっけ?】

【……確かに】

【火事場の……ってやつだろ、テンションが命だ】

【もともと大剣だからな、一撃ずつが重いんだ】

 

3人は、僕たちの歩くよりも速い速度で道を切り開いていく。

 

ちらっと振りかえると、滑らかで真っ直ぐな銀色の壁。

 

そこの……どこにあるのか分からない目が、僕を見てくる気配。

 

……もう少し。

 

もう少しがんばっててね、チョコ。

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