ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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11話 いつものバイト先と光宮さんと

「あ! 柚希せんぱ、……先輩?」

 

バイト先のひとつ。

 

十数時間ぶりに十数時間働いた店舗に帰って……違う違うお店に着いて、そこに居たパートさんたちに……おまんじゅうごともみくちゃにされて。

 

疲れたところに光宮さんが制服姿で登場。

昨日も今日も学校から直帰らしい。

 

で、なんだか十数時間前にもあったデジャヴで十数時間前に交代した子が、十数時間前とおんなじ感じで十数時間ぶりに入り口から入ってきた。

 

いつもは元気で1回話し始めるとなかなか止まらない光宮さんが、僕を見るなり固まっちゃってる。

 

どうしたんだろ。

 

「先輩」

「光宮さん、どうしたの?」

 

「……とうとう可愛い成分でバイト先までサークラしに来たんですか? それとも私を誘惑しに?」

「よく分からないけど、違うと思うよ」

 

頭も性格も良くって誰とでも仲良くなって、さらに会うたびに「誰々に告られちゃったんですよー」って言ってくるくらいの可愛さで、なのにこの田舎の公立校で彼氏がいるって言う噂がない光宮さん。

 

この子、とっても良い子だし、なんでこんなおしゃべり好きでおしゃれ好きな子が文学部に入ってたのか分からないわけだけど……やっぱり僕たちが着いていけない独特の感性と思考回路を持っているらしい。

 

僕の知らないこととか良く話すし……今のとか。

あとサークラってなんだろ……まぁいいや。

 

「なぁんだ……柚希先輩、とうとう頑丈すぎる堪忍袋の緒が切れて、田中先輩に天誅を下しに来たのかと……」

「……よく分かんないけど、変な期待させてごめんね?」

 

あと、この子のノリもまたいまいち分かんない。

そのへんがイケイケな女の子なんだろうね。

 

「ううん……いいんです……でも多分それ、普通に無自覚でサークラしちゃいそうですよ……まぁいい加減私も、あの扱いにはもう限界かなーって思ってましたし……」

 

「?」

 

なんかしゃがみ込んで、落ち込んでいるらしい光宮さん。

 

……とりあえずスカートでしゃがむのは止めといた方が良いんじゃない?

 

「……で!」

「?」

 

ばっ、と勢いよく立ち上がって走り寄ってきた彼女が僕のほっぺを両手でぎゅっと抑えてきて、いつも食べてるアメか何かの良い匂いを吹きかけてくる。

 

「先輩、どんなサロン行ったらそんなに顔と髪、綺麗になるんですか」

「え? 行ってないけど?」

 

「もー、そんな冗談良いですからー。 昨日見たときはクマできてましたけど、それでも逆になんだか興ふ――綺麗でしたけど!」

 

「あはは、ありがとう。 光宮さんもいつも綺麗だしおしゃれだよね」

「っ!!!」

 

ほんとこの子、いつも文芸部で読んで置いて帰るファッション雑誌に出て来るような手入れしてるよなー。

 

髪の毛も眉毛もまつげも、お肌も爪も先生に怒られない程度に綺麗だし。

 

「――今日は負けません! そんなどうでも良すぎることより」

 

「どうでも良すぎないと思うけど」

「先輩……はっ!? も、もしかしてぇ……」

 

近すぎてそろそろ彼女のまつげとお目々しか見えなくなったとき、何かにショックを受けたらしく……僕からよろよろと後ずさる。

 

「……先輩……は天然さんだから具体的に……」

「?」

 

あ、また変なノリでおかしなことしようとしてる。

いつものだから適当に流そっと。

 

「……先輩。 田中先輩と……えっと……2人きりの場面で急に眠くなったり、何かジュースとか珍しすぎる感じに奢られて飲んで眠くなりませんでしたか?」

 

「田中君? ううん、昨日はあのあとすぐに帰ったし、今日も出かけてた先からそのまま来たけど……?」

 

「お家まで押しかけられて、ちょっと目を離した隙に眠くなって……とか!」

「ううん? 別に来てないけど……?」

 

「……急に可愛くなったのは、襲われて目覚めたからじゃない……? けど、ひと晩でここまで……」とか、ひとりでぶつぶつ言いだした光宮さん。

 

「あ、すみません。 この子ここで働いてるので……お待たせしました」

 

よろよろと壁に向かって行き、すみっこの方でこの先の進路とかで悩んでるらしい彼女の近く、普通に困ってたらしいお客さんが居たから急いで接客。

 

……何でこの人も、顔、真っ赤なんだろ。

 

花粉症?

 

 

 

 

そんな彼女は、着替えて僕の隣に立ってもおかしかった。

 

「先輩。 お、おしり……お腹が痛くなったりしませんでしたか?」

「別に?」

 

「……薬物……そこまでするような人じゃないって思ってたけど、田中先輩、やっぱりとうとう違法なお薬に手を出して手籠めに……でも、一線は越えていない……?」

 

「あ、次の方どうぞー」

 

今日の光宮さんはなんか変。

いつもか。

 

まぁ文芸部に来るくらいだから、自分の世界に浸るくらいはむしろ才能ってことで。

 

思えば文芸部の人たちも個性しかなかったもん。

そういうもんなんだろうね。

 

「ありがとうございましたー」

「きゅいー」

 

「……って、ぬいぐるみが鳴いてる!?」

「あ、戻って来た」

 

お昼前。

 

バイト先についた僕は、おまんじゅうを抱っこしてることを忘れてバックヤードに入って……パートさんたちに質問攻めにされた。

 

猫だ犬だか分かんないけど、とにかく生きものの赤ちゃんは可愛いってことで……テイマーってのがよく分かっていないらしいけど、普通に代わる代わるに抱っこされるくらいには馴染んだおまんじゅう。

 

……なんかおまんじゅう自身はみんなに抱っこされてすっごく微妙な顔してたけど……あれなんだったんだろ……。

 

おばちゃんたち、みんないい人なのにねぇ。

 

ああでも、みんな子供育てた人たちだからふくよかで、僕やお母さんみたいな人間にしか抱きしめられたことなかったから、びっくりしたのかな。

 

あのおばちゃんたちの方が、抱かれ心地は良いはずなのにねぇ……なんでだろ。

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