ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

110 / 595
110話 「魔族」の出現

「早くこちらへ。 ……しんがりはワタシが務めます。 走ってきた順に、早く!」

 

「……お願いしますっ!」

 

――あれに乗れば、安全圏へ避難できる。

 

それしか頭にない理央、続いてひなたもその「魔法陣」を踏み――姿が消える。

 

「さあ、アナタも!」

 

そもそもとして、助けに来た人間を疑う理由なんてものは、普通の人間の意識には存在しない。

 

さらに言えば、その青年はどこから見ても普通の、善良そうで優しそうな人間。

 

つけている装備だって、ごく普通の……中級者ダンジョンで前衛職のつけているものでしかない。

 

そう、「それ」は完璧に「普通」だった。

 

「……ひとつだけ、聞いても良いでしょうか」

 

「えっ……月岡さん?」

 

次々と現れるモンスターを、再びに高火力の魔法で吹き飛ばしながら急かす青年。

 

その近くまで来た優は――すぐ後ろを走っていたあやを腕で制しながら、足を、止めた。

 

「――あなたは、誰ですか?」

 

【えっ】

【月岡……?】

【どうした、早く行け】

【お前が1番ダメージ負ってるんだから】

 

コメント欄も、足を止めた月岡に投げかける疑問でいっぱい。

 

「今はそんなことは! ほら、この腕章を見てください!」

 

それでも足を止めて青年を――疑念のまなざしで見る優へ、その青年は腕にはめている腕章をぐいっとひっぱり。

 

「――『救助班』です! 疲労とダメージで――」

 

「……救助、班。 ですね?」

「だからそう言っています! だから!」

 

「――救『助』班の人なら、そんな動きづらい装備にはしていない」

 

しゃりん。

 

「そんな膝当てや籠手をつけていては、しゃがんだ体勢も難しいからね。 俺だって、休憩のときには外す。 そうじゃないと、細かいことができないから。 ましてや、急病人や重症患者の相手は」

 

レイピアを抜く音が、響く。

 

「いや、ワタシは」

 

「俺たちと同じダンジョン潜りなら、緊急時であってもその腕章を身に付けることは許されない。 戦闘しか知らない俺たちが、医療従事者と同じように見られては非常時に混乱になるし、指揮系統も混乱する。 超法規的措置が許されているから、悪用されるから。 治癒魔法の練度で、生死が分かれる可能性があるから」

 

【あっ】

【そうなの!?】

【確かにそうだな……】

 

ひゅんっ。

 

レイピアの先が、青年に突きつけられる。

 

「――そして、俺たちが頼るのは救『護』班だ。 救『助』班――たかが言い間違えと納得するには、少し怪しすぎる。 ましてや、本職なら絶対に間違えないはずだ。 言い直しもしなかったし、な」

 

「………………………………」

 

「それに――『どうして、たったひとりしか来なかった』。 今、2人が転送された余裕はあったんだ、あっちから何人でも来られるだろう」

 

「……月岡、さん……」

「……あやさんは俺の後ろに。 君と柚希さんが危険だ」

 

柚希を背負ったあやは、あわてて優の後ろへ。

 

こんな状況となっては男性恐怖症も発症しないのか、それとも……。

 

【言い間違え……確かに】

【いやいや、後ろからモンスター!】

【そんな場合じゃないだろ!?】

【腕章は本物じゃ?】

【……でも、確かに救護班の人って基本軽装備で、今みたいな服装は】

 

「何より、あんな魔法――俺のパーティーの魔法職でも。 一撃の強さはともかく、そんなにすぐに連射なんて不可能だ。 なら上級者の人か? それならどうして」

 

後ろで、モンスターたちが走っている音。

 

だが優は、それよりも脅威度の高い「敵」として、青年から目を逸らさない。

 

「どうして、『俺と同程度の装備だけ。 それも、剣を』? ――魔法職なら、杖でないとおかしい。 何もかもが普通のようでいて、でたらめだ。 ましてや、あんな威力は――」

 

「………………………………くくっ」

 

ひゅんっ。

 

青年が「手も上げないで」放った魔法が、後ろのモンスターたちを全て吹き飛ばす。

 

「……いやぁ、普通の人間ならこういう状況に追い込めば絶対に疑わないのに。 ああ、良いですねぇ。 あなた『も』、かなり気に入りましたよ」

 

青年は笑うと光り――身構えた優の前で、変身し。

 

「――改めてお目にかかる。 ワタシは人ならざる者。 そうですね……別の世界では、ワタシたちはこう呼ばれています。 ヒトならざる知性を持つ種族、魔の者――『魔族』と」

 

 

 

 

【姿が……変わった!?】

【スーツ姿の……】

【角が、頭に……】

 

普通の前衛職だった姿は、一瞬で漆黒のスーツに身を包んだ執事のようなものに。

 

彼の頭には――明らかに人間ではない象徴として、2本の角。

 

さらにはコウモリのような翼に尻尾のようなものも――動いて、いた。

 

「こうして姿を現したのは、他でもありません。 ワタシの目的は、ただひとつ」

 

それは、すっと腕を上げ――るのに合わせて優が警戒し、あやがぎゅっと目を閉じたが――指先から再びに強力な魔力を放出。

 

大きな音とともに、部屋へ入ってきていたモンスターたち――「魔物たち」が消し飛ばされ、さらには。

 

【おい、廊下の入り口が】

【崩壊……!?】

【なぁ、ダンジョンの壁とかって】

【ああ、基本的には破壊できないオブジェクトだ】

 

【それができるって……】

【もしかして、1年前の魔王侵攻の……】

【っていうか、これ、閉じ込められた?】

【あっ】

【救助が来ても、通路からこっちには……!】

 

「――地球への、魔族――魔王軍の侵攻が目的か!」

 

「……ふむ。 いえ、ワタシはそういう徒労には興味かありませんので」

 

優の問いに、本当に軽い調子で返す魔族。

 

「なら!」

「そこの、可憐な君――シトラスの、ユズ」

 

彼の指先は、あやにおぶわれている柚希に。

 

「彼女です。 彼女以外に求めるものはありません」

 

「なっ!?」

「柚希さんを……なぜ!」

 

【ユズちゃん!?】

【なんでユズちゃんが!】

【ちょうちょだから!?】

【草】

【だからシリアスでちょうちょは止めろぉ!!】

 

【でもユズちゃん……起きて……?】

【そういえばこんな騒ぎなのにすやすやで草】

【草】

【あ、あやちゃんの肩によだれが!!】

【草】

 

【すぴすぴ寝てやがるこのロリっ子……】

【ああ、やっぱユズちゃんの配信だったねぇ……】

【ユズちゃんが居るだけでこれだもんなぁ……】

【今度こそピンチなのにどうして……】

【ユズちゃんだからだよ……】

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。