ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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137話 心が、ちくり

「おう、柚希。 邪魔するぜ」

「田中君! 久しぶりー」

 

することもなく、部屋で寝てるお母さんのそばでおまんじゅうとチョコをもふもふしてたら、やって来た田中君。

 

「……母ちゃん、悪いんだって?」

「ううん、ちょっと疲れちゃったみたい。 心配しないで。 普段よりは、ずっと元気だからさ、これでも」

 

田中君や田中君のお母さんたち、親戚の人たちは僕たちと家族ぐるみの付き合い。

 

だからか、いつもお母さんのお見舞いとして――「頼まれたから」って、いろんな果物とかを持ってきてくれてる田中君。

 

……その量はいつもやけに多いんだけども……お母さんのためでもあるから、素直に受け取らざるをえない。

 

今はともかく、前は栄養摂れるフルーツとかあんまり買えなかったから。

 

……そういうとこはずるいよね、田中君。

 

ずるいよ。

 

いじわる。

 

「そうですよー、だから静かにですよー」

 

「……なんで光宮が居る」

「え、大体毎日居ますよ」

「うん、大体毎日来てるね」

 

別に来なくっても良いんだけども、何しろ学校もバイトも休みなんだ。

 

特段にすることもないからって、お昼とかに駅前であやさんたちと一緒に食べる以外は、朝から夕方まで僕の部屋でごろごろしてるんだ。

 

なんでなんだろ……まぁお母さんもおまんじゅうもチョコも嬉しそうだから良いけど。

 

「しっかしお前、髪、伸びたな」

「あ、うん……切る機会、すっかりなくって」

 

つい、っと僕の髪の毛をつまむ田中君。

 

「ぎゅっ」

「ぴっ」

 

「いてぇ!? ……なんだ、まんじゅうたちか」

「きゅ」

「ぴ」

 

……と思ったら、上から降ってきたチョコが田中君の指にべとっと張り付いて、さらにおまんじゅうがげしっと蹴ってる。

 

「ダメだよ、田中君のこといじめちゃ」

「あ!? 俺のことをいじめるだと!?」

 

「そうだよー、赤ちゃんでもモンスターは人間よりずっと強いんだからー。 ちょっとやったら大変だからねー。 いくら田中先輩でも、本気の蹴り食らったら吹っ飛んじゃうからねー」

 

よく分からないけども、何かが気に入らなかったらしい2匹は警戒モード。

 

それを光宮さんが引っぺがす。

 

……そういえば、田中君にはやっぱり懐かないよなぁ、おまんじゅう。

 

やっぱり見た目なのかな?

 

でも、パートの優しいおばさんにもなんだかよそよそしかったし……なんでなんだろうね。

 

「それに、田中先輩? むやみに柚希先輩の髪の毛触っちゃダメですっ。 髪の毛は女の子の命だもん。 ねー」

「きゅ!」

「ぴ!」

 

「……僕、男なんだけど……?」

「んな長くしといて言うかそれ」

 

前髪は目の下に掛かって、横髪は服の上に乗って。

 

後ろ髪も、そろそろシャンプーとドライヤーで時間がかかるようになってきたんだ。

 

なんだかやけに生えるのも速いし、やっぱり床屋さん……じゃなくて、奮発して美容院とか行こっかなぁ……。

 

 

 

 

「………………………………!!」

 

「柚希……お前、いい加減ドジでマヌケって自覚しろよ? これ見りゃ分かるだろ? さすがのお前でも」

「どーせムリだからって秘密にしてあげてたのに……」

 

【悲報・ユズちゃん】

【なんでユズちゃんの配信って無意識で発動するんだろうね】

【草】

【発動は草】

【妖精さんだからだよ】

 

――配信のアーカイブ。

 

その、最新の書き込みは――現在も結構なスピードで増えている。

 

「僕が、寝ちゃってた場面も……」

 

「先輩のレベル測定に移動中、そして銀行の……ぜぇんぶ生配信、されちゃってたっぽいんですよねぇ……私も、あの日帰ってからようやくに……」

 

「消さねぇのか? 個人情報……は、ギリ隠れてるけど」

 

「気が付いた時点で、切り抜きとかまとめとか含めると、もーとんでもない再生数です。 もー手遅れですし、こういうのは消しても増えるので、どうせなら柚希先輩の収益にって思って……」

 

「まー、ネットニュースにはばっちり載ってるからなぁ」

 

やっちゃった……とは思うけども。

 

「……ねぇ。 勝手に配信が始まることって、あるの……?」

 

自己紹介――最初の配信になっちゃってたやつ――とかは、まだしょうがない。

 

僕が、機材がオフラインって思い込んで配信しちゃってたんだから。

 

でも、これは……。

 

「ないです。 ……そのはずなんですけどねぇ」

「だな。 コメント欄も、んなことあるかって」

 

光宮さんと田中君が同時に、ないないって言う。

 

「……そう、だよねぇ……」

 

「とりあえず、あのあと協会から……あ、一応で私がリーダーって申請してたので……連絡、来たんですけど、配信しちゃってた件はしょうがないってことで良いんだそうです」

 

「いい加減だな」

「だってあの中身、柚希先輩が困ることだとしても協会の方が困ることじゃないですし……特殊過ぎるレベルについては、ともかく」

 

「ほら、これ」って、メッセージを転送してくれる光宮さん。

 

「今はそんな余裕なくなっちゃってますけど、まだ月岡さんの護衛は続いてる形ですし、だから――あ、そうだ、今度来てくれるらしいです、月岡さん」

 

「え、そうなの?」

「はい。 ……その、月岡さんの秘密の件で」

「……あー」

 

「秘密だぁ?」

「乙女の秘密です!」

 

「……柚希は」

「乙女ですよ?」

「男だよ?」

 

こういうときは味方の田中君。

でも光宮さんは、どうしても僕を女の子にしたいらしい。

 

「……けどよ、柚希。 お前、もう有名になりすぎてるし……これからどうするんだ?」

「そうですよねぇ……私も、ここまでのスピードでここまで有名になるだなんて思ってもいなくって……」

 

光宮さんと田中君は、ああでもないこうでもないって話し始める。

 

こういうときの2人は、本当に息が合ってて――仲が、良さそうで。

 

「………………………………」

 

ちくっ。

 

「きゅきゅっ」

「ぴ」

 

だから、仲が良さそうな2人を見るたびに。

 

僕は、ちょっとだけいじわるになるんだ。

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