ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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157話 生えちゃってる

「……配信」

「してしまっていましたか……」

 

「忘れてたね……」

「柚希先輩、すっごくまずいことになってるのになんでそんなに平気そうなんですかぁ……」

 

理央ちゃ……光宮さんが、そういえば最初にことっと置いてから触ってなかった、僕の配信用カメラに飛びついてオフにしてくれたらしい。

 

……また、配信しちゃってたね……もう慣れたけどさ。

まぁ今回のは、みんなして忘れてただけなんだけどね。

 

お酒って怖いね。

僕は気をつけよっと。

 

この中で、僕だけおかしくなってなかったし。

お酒、強いのかな?

 

「それに、もう見られて知られちゃったんでしょ? 慌ててもムダじゃない?」

 

「……そういう割り切りの良いとこ、すごいです……」

 

お母さんも光宮さんも、ずっと前に起きたような事をいつまでも覚えてるらしい。

 

で、何かにつけてお布団に潜り込んで唸ってたり、変な動きしたり、お酒飲んだり……あ、これはお母さんだけだね。

 

とにかくいろいろ悶えて苦しんでるらしい。

 

僕?

 

……恥ずかしかったり、悲しかったり、ずきってくるようないろいろは、確かにある。

 

それを夢に見たりはするけども、それでも僕は、あんまり気にならない。

 

だって、そういうのってもう過ぎたことなんだもん。

今さら考えたって、しょうがないって思うでしょ?

 

「あ、理央ちゃん。 えっと……お酒入ったところから早送りで見てもらって、誰かが……その、恥ずかしい感じのが映ってないか見てくれないかな? なければ良いんだけど」

 

「……あぅ」

「……柚希さん……」

 

ひなたちゃんはまだしも、あやさんは大学生さんだしなぁ……恥ずかしいって思う場面は多いはず。

 

そうだったら……もうコピーはされてるだろうけども、せめて僕たちの分はアーカイブってやつは消さなきゃね。

 

「……分かりました。 私も、正直本能に任せてた記憶ありますし……」

 

君はいつも本能っていう冗談してるもんね。

 

大丈夫、お酒飲んでるときのお母さんとおんなじって知ってるから。

 

「……おさけって、こわいね……」

「ええ、恐ろしいですね……」

 

うん、君たちもすごかったよ。

 

特にあやさんみたいに、普段控えめな人があんなにべとべとしてくるくらいだもんね。

 

まぁお母さんで知ってたから、僕は別に驚かないけども。

 

むしろお母さんだと脱いで抱きついてきたりするからねぇ……あれくらいにならないとびっくりはしないかな。

 

「それより、柚希さん……その……」

「あ、触ります? 羽」

 

おずおずと、でも、明らかに興味津々っていった感じで――よく目にするやつだと、女子が野良猫に触りたいけど嫌われたらどうしようって感じになってる、あれ。

 

そんな感じで片手だけ伸ばしてきてるあやさんが、僕の羽をもどかしげに見てきてるから。

 

「……あ、思い通りに動かせます」

 

ぱたぱた。

ぱさぱさ。

 

半透明の……黄緑色に、綺麗なちょうちょの羽とか薄い葉っぱみたいな印象の、羽。

 

それらは、僕の体から生えているらしい。

 

「もちろ――んんっ……いえ、それよりも柚希さん」

 

彼女の細い手が、僕の羽に触れようとして……引っ込められる。

 

……本当に、気遣いの人なんだなぁ。

 

「……お胸が……その……」

「あ、生えてますよね……なんでだろ」

 

僕は、シャツのボタンを盛り上げている立体物に目を落とす。

 

……お胸。

 

おっぱい。

 

光宮さんが、泊まりがけだとなぜか毎回パジャマとかブラジャーとか忘れてシャツとかだけになって、形をはっきり見せつけてくる構造。

 

お風呂とかで堂々と見せてくるやつ。

 

今の僕のは、あやさんのそれよりはずっと小さいけども、光宮さんのそれよりもちょっと小さい程度で……しっかりと存在感がある感じ。

 

この前とは違って、しっかりと肉体って感覚がある気がする。

 

「チョコ?」

 

「ぴぴぴぴぴぴぴぴ……」

「……は、ひっくり返ってるだけかぁ」

 

てっきり、何かで危機感を感知したチョコが、光宮さんに襲われたときみたいに体に張り付いてるのかって思ったけども、どうやら違うらしい。

 

「……んぅっ……」

 

「……ごくっ……」

「ゆ、柚希さん……」

 

試しに触ってみると、明らかに僕の体。

 

それが、ふとももとか脇の下とか首筋とかお尻の上とか、そういう、くすぐったすぎる場所みたいに敏感な感覚。

 

……これが、女の子がおっぱい触られる感覚なのかな。

 

光宮さんにのしかかられてうっかりで触っちゃうと、いつも、今僕から出ちゃった声みたいなのが、彼女の口から聞こえるし。

 

なるほど、くすぐったいのを我慢するとこうなるんだ。

 

田中君が持ってるえっちな本で女の子が毎回声あげてるのは、こうしてくすぐったすぎるからなんだね。

 

今度教えてあげよう。

 

「でも、これ、なんだろ。 ……おまんじゅう?」

 

「きゅひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……」

「うん、知ってた」

 

おまんじゅうは、いつも通りに役に立たない。

 

いつも通りにひっくり返って微振動しながら移動してるだけ。

おまんじゅうなんか何の慰めにもならない。

 

まともなときなら、言葉が通じないなりになんとなくで意思疎通ができるんだけども……こうなったら最後、一切のコミュニケーションができないんだ。

 

「………………………………」

 

ばさっ。

ばさっ、ばさっ。

 

僕がそれを動かすのに合わせて、きらきらとした光る粒が零れ落ちる。

 

「……鱗粉? ……あやさん、換気してくれます?」

 

「………………………………」

「あやさん?」

 

「……ゆずきさんのなら……」

「ひなたちゃーん、お願いできるー?」

「はーいっ」

 

まだお酒が抜けてないらしいあやさんはダメだから、代わりにひなたちゃんにお願いをして窓を開けてもらう。

 

……これがどんなものかは分からないけども、蝶じゃなくて蛾なら、鱗粉っていう羽を動かしたらぽろぽろ落ちてくるあれは体に良くないはず。

 

……汚いのを振りまいてないと良いんだけどなぁ……なんだろこれ、ダンジョンでの呪いとかかなぁ。

 

急に膨らんだ、お胸。

急に生えた、羽。

 

それらはまるで――そう。

 

視聴者さんたちがいつも冗談で言ってる、「妖精」みたいな――。

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