ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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160話 4人で川の字  僕は男なのに

「――事情の方は、私から上に……まぁ、配信で既に周知ですから、星野さんには問題がなかったと伝えておきますね」

 

「ありがとうございます……」

「よかったね、ゆずきちゃん!」

「柚希さんがモンスターなはず、ありませんもの」

 

しばらく連絡していた救護班さんたちも出て行って、教官さんだけが残って。

 

僕自身も「もしかしてモンスターなんじゃ……」って気持ちがあったから、すぐに安心できて良かった。

 

「大丈夫です。 そもそも星野さんたちは、あの魔族を撃退した――恐らくは純粋な人間で、初めてのパーティーです。 私も、配信で騒ぎになっているので念のために急いで来ただけですし、誰も星野さんがモンスターだなんて、思っていませんよ」

 

「ん……」

 

そっ、と撫でられる頭。

 

僕の背が低いもんだから、みんなからするとちょうど乗せやすい場所に頭があるらしく、それでよく同級生や大人の人に撫でられるんだ。

 

「リストバンドも、あなたの体が正常だと言っていますし、ね」

「あ、そんな機能あるんですか、これに」

「へー」

 

「でも、じゃあなんであんな羽が生えたんでしょう」

「あと、ちょっとお姉さんになってたよね!」

「柚希さんのお母様が、あのような感じなのでしょうか……」

 

僕のお母さん?

あんなにおっぱいおっきくないよ?

 

「……分かりません。 なにしろ、星持ちの方なんて、人類では初めてですから」

 

首を振る教官さん。

 

本当に急いで来たらしく、かなりラフな私服の上に制服を羽織ってるのが新鮮だ。

 

「星野さんは、テイマーさんですから。 しかも、特別なモンスターばかり次々と……ですから、恐らくはモンスター側からの影響でしょう、という推測があるようです」

 

「……モンスターから……」

「特に被害も無く、短時間だったようですし、今は安心しても良いと思いますよ。 もしまたなって、治らなければ連絡してください」

 

「そんなにあっさりで良いんですか?」

「ええ……普段でしたらこんなにスムーズには終わりませんけど、今は事態が事態ですから。 ある意味、都合が良かったんですよ?」

 

「何かあったら連絡してくださいね」ってことで、教官さんのアドレスも教えてもらって――ぱたん、って閉まった玄関のドアを、しばらくみんなでぼんやり見てた。

 

なんだか現実感がなくって。

 

お酒を飲んで、生えちゃって、びっくりして、消えて、入って来て、出て行って。

 

……今日は、いろんなことがありすぎたから。

 

 

 

 

「あ。 チョコとおまんじゅうが死んでる」

 

なんか不思議な空気になったまま、配信してた部屋に戻って来たら……そのへんに点々と転がって身じろぎもしない2匹。

 

「……チョコ? おまんじゅう?」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

「……ちょっ、2人とも!?」

 

冗談で言ってみたけども、動かない2匹を見て慌てて駆けよって抱き上げる。

 

「……良かったぁ、寝てるだけだ……」

 

そういえばこの子たち、配信中ずっとすっごく微振動起こしてたもんねぇ……そりゃあ疲れるよね。

 

「なんだかお酒、抜けちゃったね」

「ひなたちゃんは飲んでないよね……?」

「……あの場面が配信で……うぅ……」

 

あ、あやさんが、飲み過ぎた次の日のお母さんみたいな感じになってる。

 

「……柚希先輩、結局そんなに酔わなかったですね」

「え? あ、うん……確かにそうだね」

 

ちょっとぽわぽわして眠くはなったけども、それ以上にみんながすごかったからなぁ。

 

「……寝る? あやちゃん」

「そうですね、もうすぐ日付が変わりますし」

 

「4人で寝るんですよね! 4人で!」

「僕は……いや、まあ、良いけどさぁ……」

 

寝息を立てるだけの2匹を抱っこした僕を、ぐいぐいとベッドの方に連れ込もうとしてる理央ちゃん。

 

まーた顔が赤くなってる……こっそりお酒飲み直したでしょ。

 

「では、このまま寝ましょうか。 ほっとして、なんだか眠気が強くて」

 

「ですね! ほら! 柚希先輩も恥ずかしがらずに!!」

「寝方はどうしよっかー、どんな順番にしよっかー」

 

そのまま、みんな――僕に生えたのなんか、気にしてないフリして普段通りに振る舞ってくれて。

 

……良い子たちとパーティー組めて、良かった。

 

 

 

 

「……で、なんで僕が真ん中に……?」

 

「えへへー、ゆずきちゃんとひなたが真ん中ー」

「なるほど、家具備え付けのマンション……ダブルベッドなら4人でも広いですね」

「川の字って良いですよね!」

 

ひなたちゃんに案内された寝室で、僕たちは川の字。

なぜかひなたちゃんと僕が真ん中で。

 

「きゅぴー……」

「ぴー……」

 

僕の頭の上の方に、2匹を寝かせておいて。

 

……まぁ、理央ちゃんもお泊まりするときとか、僕が男とかってこれっぽっちも気にしてないみたいだから良いけどさ……別に男だからって、みんなが女の子に悪いことするわけじゃないし。

 

でも、ちょっとだけ男だって思ってほしい僕も居るんだ。

いつか、男らしくなってやるんだから。

 

「……今日も、楽しかったですね。 みんなでごはん作って」

「雑談配信もして!」

「お酒も飲んで……ええ、初めてのことばかりでした」

 

ぽつぽつと、暗い部屋で昇る声。

 

「ひなたね、お友達とお泊まり会って、学校行事以外じゃ初めてなの」

「私もです……そこまで仲の良い方は、居なくて……」

 

「良いじゃないですか、これからは何回でもお泊まりできますし」

 

え?

 

何回もするのこれ?

 

これでも僕は男だから、女の子と一緒に寝るのは恥ずかしいんだけど?

 

女の子ってあれでしょ?

理央ちゃんみたいに寝ぼけてまさぐってくるし。

 

「……むー、ちょっとお酒くしゃい……」

「はーっ……確かに臭いかなぁ……」

「お酒ですから……」

 

学生同士のお泊まり会で飛び出しちゃいけない会話。

でも、それがなんだか楽しくって。

 

「ゆずきせんぱい」

 

そっ、と、理央ちゃんが口を寄せてきて。

 

「私たちは――4人は、ずっと一緒ですからね」

 

ぼんやりとした意識の中、静かに、でも楽しそうに笑う理央ちゃんの声がした。

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