ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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171話 企んでるひなたちゃん……のお家

「――ということで、柚希さんとうちのひなたは婚約を成立させました。 文書ではありませんが、口頭でも契約は契約です」

 

ひなたの母が、そう告げる。

 

「はぁ」

 

そう返すのは、理央の気の抜けた返事。

 

「ああ、安心おし。 新法案での重婚での1番はあなた、理央ちゃんに正妻は譲るよ。 大丈夫、ひなたには兄も姉も居るから、純粋にひなたを応援するつもりだよ」

 

重ねて告げるのは、ひなたの祖母。

 

「はぁ」

 

それに対しても、やっぱり気の抜けきった理央からの返事だ。

 

――日向家の応接室。

 

天井も壁も床も、そしてどの装飾も家具もすべからくがレトロモダンな――恐らくは全て昔からあるだろうそれらは、理央を格調高さで取り囲んでいる。

 

案内された当初は、それはもう滅多にないくらいに緊張していた彼女だったが――話を聞かされてからは、そんなものは吹き飛んでいた。

 

「そちらのパーティーと日向家とで話したいことがある」。

「ついては、事情を把握しているだろう理央と話したい」。

 

そう連絡を受けた理央は――あやからの突然の告白を受けた足で日向家に向かった。

 

その先で、いきなりの宣言。

 

ただでさえ、あやからの告白でパンクしかけていた彼女の頭は――今度こそ吹き飛んだ。

 

それはもう――以前に「柚希先輩の柚希先輩」がチョコにより封印されていた、あのときのように。

 

「……ちょ、ちょっと待ってください……あの、私たち、そういう関係じゃ」

 

だが、なんとか頭を働かせようとして、まずは否定から入ろうとする理央。

 

「でも、理央さんは柚希さんの子を孕みたいんだろう?」

「ぶふぁっ!?」

 

しかし、年の功は伊達ではなかった。

 

「お、お母様! そんないきなり……!」

「大丈夫、この子は胆力がある。 なら、ざっくり切り込んじゃった方が早いんだよ」

 

「でも、肝心の柚希さんへの胆力は……」

「そればかりはがんばってもらわないとねぇ」

 

付き人も外し、理央、ひなたの祖母、ひなたの母の3人のみの空間。

さすがの理央も、着いて早々にぶん投げられた会話を受け止められていない様子だ。

 

「あの、えっとぉ……そのぉ……」

 

「――星野柚希。 『彼』が男子だとは、調べが付いているよ。 まぁ女子だったとしても、ひなたが本気な以上は、できることは『全て』やるけどね」

「!?」

 

「まぁ、以前は特段隠されていなかった情報だ。 もっとも、今はダンジョン協会が隠蔽してくれているみたいだがね」

 

「ごめんなさいね、家の都合上、ひなたに近寄る人間は全て調べないと、おばあ様の許可が下りないんです」

「は、はぁ……」

 

――つまり、私のことも調べられているのね。

 

一瞬そうは思ったが、そんなに些細すぎてどうでも良いことよりも、柚希が男だと知りながら孫娘とくっつけようとし、しかも重婚、しかもひなた自身は正妻でなくても良いというとんでもない状況の方がはるかに深刻だった。

 

「で、その上で私がひなたに宛がう予定だった相手との関係を白紙に戻した。 『ひなたに、本気で好きな相手ができたらしい』ってことでね。 なぁに、お詫びには彼女の兄に第三婦人をということで、相手様の家とは円満に済んだよ」

 

「……はぁ」

 

理央の耳に入ってきた言葉は、一度脳内で完璧に変換される。

 

けれどもそれは、常識というフィルターでざくざくと切り刻まれる。

 

「ま、孫娘の淡い恋心を、できるなら叶えてやりたいという祖母の無駄な手回しさね。 もちろん、あの子たちの気持ちが数年後に変わっているなら無理強いはしないから、安心してくれていいよ」

 

――安心……する要素、あったかなぁ?

 

「……ひとつ、いいでしょうか」

 

頭を抱えながらも、無理やりに切り刻まれた語彙をかき集めて変換し直した理央が、祖母に目をやる。

 

「……どうして今、そんな話を……?」

「そりゃあね。 あんたたちのパーティーが、とんでもなく有名になったからだよ」

 

とん、と、イスに腰掛けている祖母は机にかけていた杖を触る。

 

「――あんたたち全員の名前や経歴、住所も何もかも、とっくに裏では見られている。 ……なまじ普通の一般人だったせいで、セキュリティなんかないも等しかったからねぇ」

「――っ!?」

 

「これでもアタシたちが相当守ったんだけどね。 でも、推定四天王クラスの魔族を追い払った――『特効』があり、かつ『星持ち』で、さらには『変身』したのが柚希くんさ。 ――その意味が、理央ちゃんには分かるだろう? もちろん、この国の輩だけじゃないんだ。 どこでも欲しいだろうよ……その上にあの美貌だし」

 

「……い、いろんな人たちが……柚希先輩を求めている、と……」

 

ごくり、と、理央の喉が音を立てる。

 

「『彼』の――ああ、柚希くんが男子だと気づいているのはうちだけだよ、なにしろ『なぜか』公文書までが先日『全て』書き換わったからねぇ。 ま、その状態で隠蔽してくれたらしいから、あっちの人間も、既に調べた人間以外は知らないはずだよ」

 

理央の頭は真っ白になる。

 

「……ああ、あのひなたも世話になった教官の子やその友人が柚希くんの性別について会話していたデータがあったから、あの子たちも保護して口止めもしないとねぇ。 経歴を見ても、面倒を見た子のことをずっと気にかける良い子のようだから……あの子たちを良いように使われたら――『うちが困るから』ねぇ」

 

ひゅっ、と、理央の声から声が漏れた。

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