ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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180話 ダンジョン化、直後

「――みんな、大丈夫!?」

 

「ひ、ひなたは大丈夫……」

「私も大丈夫です……理央さんは?」

 

「私も……落ちてきたコップ、壊しちゃったくらい」

 

突然の大地震――によく似た揺れに、リストバンドからの警報音、スマホやテレビからの警報音に町の防災無線の音で全てが包まれてから数分後。

 

理央、あや、ひなたの3人は――駅前のファミレスで「とある最重要議題」のために、ふたたびに集まっていたところを襲われた。

 

「一体何が……」

 

「……ダンジョン化、だそうです。 膨大な魔力での地震……」

 

「えーっと、国内で……たくさんだって」

「……魔王軍の侵攻ですか……こんなときに……!」

 

幸いにして誰にもケガはなく――中級者に届いているレベルに装備のおかげで、仮にファミレスそのものが崩れたとしても彼女たちだけはかすり傷で済んだだろうが――周りを見ても、テーブルの下から出て来た店員も、入り口に居た同級生たちも、まずは無事そうだ。

 

「リストバンド、ずーっとぶるぶるしてる……」

 

「……この近くでも、大規模な魔力の変動……つまりは、特定の地域のダンジョン化が起きたのでしょう」

「そんな……私たちの家の、近くなのに……っ」

 

武器を携帯しているという責任感から周囲に声をかけつつ、まずはモンスターが居ないかどうかを確かめようと、店から飛び出す3人。

 

「場所は!?」

 

「まだみたい……魔力が大きすぎて、隣の駅まで推定エリアに……」

「……モンスターは、居ませんね。 いえ、まだ、と表現すべきでしょうが……」

 

【地震】

【どこいな】

【世界中だぞ】

【地球は田舎だった……?】

【草】

 

【うちの地域は大丈夫なんだがアラームが】

【アラームで心臓止まった……】

【成仏して】

 

「理央ちゃん、配信が!」

「……そうでした。 緊急時には……!」

 

ダンジョン協会から支給されているスマホの画面は、自動的にそれぞれの配信画面を起動。

 

【理央様たちの声が!】

【理央様!!】

【ひなたちゃーん!】

【あやちゃん大丈夫!?】

【ボイスオンリーか】

 

「私たちは大丈夫です!」

「あ、カメラ、持ってきてない……」

「リストバンドで音声だけですか……」

 

「一応、家が近いからじきに飛んでくると思うけど」

「ガラス……破っちゃうんだよねぇ、カメラさん」

「緊急時に配信するためのドローンですから……」

 

魔王軍侵攻の際には、「こう」なることは聞かされていた。

 

――でも、なにもこんな急に。

 

理央は、回らない頭をなんとか情報収集と解析に充てている。

 

だが、

 

【ユズちゃんは!?】

【4人の中でユズちゃんだけ、まだ配信してない!】

【みんな、ユズちゃんは!?】

 

「柚希先輩は、お家でお母さんと……っ!」

 

――――――ぞくり。

 

明らかに異質で、舐め回すようで、刺すような感覚に、腰を落としながら振りかえる理央。

 

そこには。

 

「――――――そんな」

 

「ゆ、ゆずきちゃんと、りおちゃんのお家の方……」

「真っ黒に……!」

 

――「ダンジョン化」。

 

10年前に世界中で頻発していたそれらは、映像で――それこそ小学生のころから、理央たち「ダンジョン世代」は繰り返しその映像を、観せられていた。

 

それは、魔力の収束による「世界の書き換え」。

 

地球の「現実世界」が異世界の「ダンジョン」に飲み込まれる現象。

 

調査により、ダンジョンはレイライン――ダンジョンのドロップ品から判明した「魔力」というエネルギーにより可視化される、地球上にも微弱ながら存在する魔力の流れ。

 

その集まる点、ホットスポット、あるいは霊脈とでも呼ばれる場所が、優先的に「侵略」されると判明している。

 

そしてその現象は――「その上空が真っ暗になり」「内部の存在はいずれ消滅し」「長くても数ヶ月でダンジョンになり」「その中からモンスターが溢れ出す」。

 

つまり――――――。

 

「……柚希先輩!!!」

「り、りおちゃんっ!」

 

「……みなさん、柚希さんのお家が……お家の方面が……ダンジョン化を……!」

 

【えっ】

【え】

【え、待って】

【本当!?】

【ユズちゃんは!?】

 

「……ダメです、通信が……わ、私、理央さんたちを追いかけます! みなさんも、何か分かりましたらコメントに!」

 

わき目も振らず、全力で走り出してしまった理央に彼女を追いかけるひなたは、既にあやでは追いつけない距離。

 

【ユズちゃん……】

【お前ら、ユズちゃんも大事だが、まずは自分の身の安全だぞ】

【俺のとこはダンジョン化、無いみたいで揺れすらなかった】

【もうどこでなるか分からないんだ、なるべく安全な場所に避難しろ】

 

情報が錯綜する。

 

だが、緊急時には情報の数が重要。

 

あやは、先に行ってしまった2人を、ぽてぽてと走りながら懸命に視聴者たちからの書き込みを追いかけつつ、理央たちを追う。

 

そこだけ「夜」になっている空間――柚希たちの家のあった方角へ、急ぐ。

 

――柚希さん、どうか無事で。

 

そう、願いながら。

 

 

 

 

「……なに、これ」

 

大きな揺れが収まったあと。

 

僕は、お母さんをチョコに任せ、おまんじゅうと一緒に――物が散乱している廊下を抜けて、玄関から顔を出す。

 

「ぎゅいぃぃぃぃぃ……!」

 

そこは――広い、洞窟。

 

ただただ広くて、天井がかすかにあるって分かって、四方を遠いところの壁で塞がれていて。

 

「……ダン、ジョン?」

 

見た感じ、庭の柵から先の道路だった場所が、全部ダンジョンっぽい地面になっている。

 

肌に感じられるのは、ダンジョンの中でだけ感じたことのあった……しっとり、とでも表現できる感覚。

 

体じゅうが敏感になって、ぴりぴりして。

 

そうして。

 

「「「「「「グオオオオオオ――――――!!!」」」」」」

 

洞窟は、明るくなって。

 

大地が、また、震えて。

 

そこには――――――。

 

【ふぁっ!?】

【ユズちゃんの配信!】

【ユズちゃん生きてる!】

 

【え? モンハウ?】

【モンスターがいっぱい】

【ユズちゃん逃げてー!?】

 

たくさんの。

 

どこを見ても埋め尽くしている、いろんなモンスターが――僕たちを、見ていた。

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