ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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181話 僕たちは、ダンジョンの中

【悲報・ユズちゃん、巻き込まれた】

【え、でも、ダンジョン化したら、その地域の物体は……】

【一瞬じゃないんだろ】

【つまり、すぐに抜け出せたら】

【でも、ここ……もう、ダンジョンの中……】

 

「おまんじゅう……」

 

見渡す限りが、モンスター。

 

ううん、僕たちがモンスターの群れの中に居るんだ。

 

「ぎゅいいいいい……!」

「うん、すごい数だね……」

 

広い部屋――多分ボス部屋――そこには、数え切れないモンスターたちの顔。

 

「うさぎさん、いのししさん、くまさん、らいおんさん……こんなの、初めて見た……」

 

【草】

【ユズちゃん! 今シリアス!】

【この状況でうさぎさん呼びは草】

【もしかして:モンスターの名前知らない】

【あー】

 

【なんでこんなときに和んじゃうの……?】

【ユズちゃんだから……】

【ことごとく言動が子供なのよねぇ……】

【見た目と相まって、ねぇ……】

【ネーミングセンスが壊滅なのは、おまんじゅうちゃんとチョコちゃんでよく知ってるから……】

 

配信とかで見たことあるやつ、見たことないやつ、色違いのやつとかでっかいやつ。

 

なんかもう、怖さよりも驚きの方が勝っちゃって、怖いはずなのに怖くないっていう不思議な感じになってる僕。

 

「……様子を見てる……? ボス部屋の入り口みたいな感じ……なのかな」

 

【なんで落ち着いてるのユズちゃん……】

【なんかのんびりしゃべってる……】

【もしかして:怖いって気づいてない】

【えぇ……】

 

【ま、まあ、パニックになるよりはずっとマシ……?】

【ひなたちゃんのときもそうだったけど、こういう場面でも変わらずローテンションよね、ユズちゃん】

【良くも悪くものんびりなんだよなぁ】

 

「リストバンド……2つあるし、お母さんと一緒に脱出できるだろうけど……」

 

僕は、ふしゃーって威嚇してるおまんじゅうを抱いてる手をずらし、さっきまですごい音で鳴ってたリストバンドを見てみる。

 

本当はこれで、一瞬での離脱が良いんだろうけども――その文字板は、この前みたいに「転送不可」「危険」。

 

「……だよねぇ、やっぱあのときみたいに、魔族さんってののせいで使えないよねぇ……」

 

【えっ】

【またぁ!?】

【アイツ……性懲りもなくユズちゃんのことストーカーしやがって】

【尊死したんじゃなかったのぉ……?】

 

【去年撃退されてた魔王も言ってたじゃんか  灰になったのは分体だよ、きっと】

 

【あー】

【あるいは別の幹部級の個体とかか】

【魔族って言うからには数もあるんだろうし……】

 

【え、それじゃあ延々襲われるけど倒しても無意味?】

【無駄ってことはないだろうが……】

【そんなことよりどうするんだよ!? ユズちゃん、また転送できないんだぞ!?】

 

部屋にこだましてる、モンスターたちの威嚇の声。

 

それはもう、体育館で一斉にみんながしゃべってるときみたいに反響し合って、もう誰が何言ってるのかさっぱり分からない状態。

 

「せめて、お母さんだけでも守らないと……」

 

後ろを振り返る。

 

――家の反対側にも、もちろんモンスターたち。

 

ここが運良くセーフゾーン……だったら良いけども、そんな甘い期待はできない。

 

今は多分、僕たちが急にダンジョンに出現したから警戒してるだけ。

僕たちがただの人間だって気づいたとたんに一気に襲われるだろう。

 

「……おまんじゅう」

「きゅい」

 

僕の腕の中。

 

前よりもずっとおっきく、重くなったおまんじゅうが、声だけで返事をする。

 

「守るよ、お母さんを。 チョコは、もしものときにお母さん守ってもらうから……僕たちだけで、ね」

「きゅい!」

 

【がんばえー】

【がんばって……マジで】

【救助は……ムリか】

【ダンジョン化だしなぁ】

【どうなるか分からないから、理央様たちも地上で止められてるし……】

 

【けど今日もユズちゃん、かわいいよな……】

【ああ……】

【こんなときに言っちゃいけないんだろうけど……】

【服のセンスはJC、でも見た目でJSだし……】

【ユズちゃん、がんばって】

 

今は、普通の格好だ。

 

ごく普通のシャツにスカート、靴だって玄関から出て来たばっかりで、ただのサンダル。

 

まるで、ただ近所に行くだけの格好。

 

これで――僕たちは、防衛戦をしなきゃならない。

 

やるしか、ないんだ。

 

 

 

 

「柚希先輩っ! ……離して! 離してください教官さん!」

「駄目です」

 

「どうしてっ! 教官さんは柚希先輩のこと心配じゃないんですか! ……あっ」

 

「……そんなわけ、ないでしょう……」

 

【理央様……】

【取り乱してしまわれて……】

【ムリもない、まただからな】

【また、ユズちゃんだけがな……】

 

【ほんと、毎回毎回よね……】

【だから「姫」とか「柚希姫」ってのがしっくり来ちゃうんだよなぁ……】

【連れてかれて助けを待つお姫様ユズちゃん】

【なお前回は悪いやつを尊死させる偉業を達成】

【草】

【こんなときに笑わせるなよ!?】

 

星野家。

 

その前の道路や農道に囲まれた「その柵で囲まれた敷地内だけが、綺麗に、四角形に、不自然に」黒いフィールドで包まれている現場。

 

そこへたどり着いた理央は――教官の彼女に、取り押さえられていた。

 

「柚希さんは、私にとっても……一方的ですが、手ほどきをした大切な後輩なんです」

 

とっさとはいえ、言いすぎたのに気が付いた理央は、罪悪感からようやくに暴れていた力を抜く。

 

「でも、ダンジョン化が起こってしまった場所は、もはや未知数の空間なんです。 入ったらどうなるかなんて、誰にも分かりません」

 

険しかった表情を和らげ、彼女は理央をひと撫でし。

 

「……死ぬかもしれない場所に、同じく後輩であるあなたが向かうのは――先輩として、大人として、認められません。 たとえ柚希さんのためでも――私は、貴女の先輩でもあるのですから」

 

うなだれた理央を、柚希の隣近所に住んでいる大人たちが優しくなだめ、ひとまずということでの避難の列へと誘導する。

 

「配信をご覧の皆様も、どうか落ち着いて。 まずはご自分の生命を。 その次に、他の方へ可能な限りの手助けを」

 

【はーい】

【助かる】

【冷静な人ってこういうときに良いよな】

【声もかわいいし】

【お前……】

 

この状況でも飛び抜けた同接数の、柚希の配信。

 

それには及ばないが、それでもパーティー内では柚希の次に多い理央の配信へ語りかけていく教官の彼女。

 

幸いにして、まだ、モンスターは溢れていない。

 

――それは、柚希が今――この家を包むフィールドの向こうで、ダンジョンの中で、戦っているから。

 

「……ゆずきちゃん……」

「柚希さん、どうかご無事で……」

 

促された2人も、名残惜しそうに振り返りながら移動を始める。

 

ただただ――スマホで配信を見ながら、そう声をかけるしかない自分たちを、悔しい思いで呪って。

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