ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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182話 全包囲網

「いっけー!」

「きゅーいー!」

 

ぴーっ。

 

抱きしめたおまんじゅうの角からレーザー光線が放たれる。

それを最初に右端に向け、そこからぐいっと左の方へと回していく。

 

【うわえっぐ】

【あの、一瞬で部屋の中程までのモンスターたちが蒸発……】

【あ、ラグ起きて結晶になるの遅れてるっぽい?】

【そらそうよ……】

 

【やっぱユニコーンの火力はすさまじいな】

【最低でも半径50メートルくらい?の即死範囲攻撃だもん】

【これなら、なんとか……】

【いや、でも、ユズちゃんたち、部屋の真ん中に……】

 

玄関を出て正面のモンスターたちは……多分100メートル200メートル先までは倒している。

 

まだ起き上がってないだけかもしれないけども、それでも今から起きて走ってきてここに届くまで、少しは掛かるはず。

 

急いで柵の中に入ると庭を突っ切り、家の反対側へ――。

 

「うわっ!?」

 

通り過ぎようとした庭の光景で、思わず足が止まる。

 

「……お野菜、すっごくおっきい……いやいや、それよりもっ」

 

【でけぇ】

【え? あれ、大根?】

【ああ……】

【大根が……】

【……50センチは土からはみ出して生えてるな】

【なんかぐろい】

 

【んで、どの野菜もでっかくなってるもんだから】

【みっちり……】

【おろろろろろろ】

【きもいぃぃぃ!】

【草】

 

【ああうん、群集恐怖症とかにはキツそうな光景だわな】

【小さい頃のアリス症候群発症しそう……】

【あー、手とか足がでかく感じるあれか】

 

もう柵ぎりぎりしか通れない庭をなんとか走り、すぐそばまで走ってきてたモンスターたちへ向け、おまんじゅうをぎゅっと押す。

 

「きゅーい――!!」

 

びーっ。

 

とっさのことだったからただ正面を向いてぎゅっとしただけども、おまんじゅうの角から真横に光が飛び出し、右端……いや、「光が曲がって」さっき倒せてない範囲からのモンスターを巻き込みながら左の方へ、扇状に――しなるように、巻き込んでいく。

 

「あ、おまんじゅうがやってくれたんだ」

 

【ゑ?】

【あの、いま、レーザー光が曲がった……】

【なぁにこれぇ……】

【んにゃぴ……】

 

【光の法則が……物理法則が……】

【ま、まあ、ダンジョン内だから……】

【ユズちゃんだから……】

【もうそれでいいや……】

 

「きゅひっ」

「ありがとっ」

 

ふんすっと得意げに振り返ってくるおまんじゅうを確認して、すぐにまた移動を始める僕。

 

「……これなら、屋根に上った方が戦いやすいかも……そんな時間ないけど」

 

こういうときには無駄に広い庭が恨めしい。

 

しかも中はみっちみちのお野菜でいっぱいで通り抜けできないし。

 

【あの、ユズちゃんの目線まで成長してるにんじんさんが……】

【こわいよー】

【あー、ダンジョンの魔力で一気に成長したのか】

【なるほど】

【そんなこと感心してる場合!?】

 

【だって、ユズちゃんたちってば、近づかれない限り今のとこは大丈夫だし】

【怖いのは魔力切れだな】

【ああ……】

 

【既に2回、部屋の真ん中から壁までの半分の距離を覆う攻撃をしてるんだもんな……】

【ここ最近は戦闘していなかったはずだから、魔力が満タン近いのだけが安心か】

 

「きゅいーっ!」

 

庭の角を曲がったとたんに目の前にまで迫ってたモンスターを、反射で抱きしめたおまんじゅうが倒してくれる。

 

「はぁっ、はぁっ……ま、まだ、魔力は持ちそうだけど……っ」

 

同じようにして追い払ってくれたおまんじゅうを撫でつつ、また走って玄関へ戻ってくる。

 

「っ、もちろん来てるよね……お願いっ!」

 

地面にはじゃらじゃらと結晶があったはず。

 

そのはずだけども、それが見えない程度にモンスターたちが密集して走ってきてるから、また同じ攻撃の反復をする。

 

「これっ……いつまでやれば……っ!」

 

何が起きたのかなんて分からず、とにかく1秒でも早く走ってモンスターを視認して、おまんじゅうを抱きしめる。

 

今の僕には――息が切れて、走れなくなるまで。

 

そうするしか、ないんだ。

 

 

 

 

「柚希先輩……」

 

「……さすがは柚希さん。 ユニコーンの範囲攻撃も、知ってのとおり。 今すぐに――ということはなさそうですが」

 

教官の彼女が駆け付けた装甲車。

 

そこのモニターで、柚希たちの戦いを眺めているしかない彼女たち。

 

「こんなときに、ひなたが前を守ってあげられたら……」

「ええ、せめてもの支援攻撃ができたらと思いますと……」

 

ぎゅっ。

 

力はあるのに、手が届かない。

そのもどかしさと、柚希の孤独な戦いに立ちすくむ面々。

 

【なかないで】

【けどほんと、ユズちゃんも運が悪いよなぁ】

【ああ……】

【何回もこうして隔離されたり別行動したり……】

【しかも毎回ピンチって言うね】

 

「――そのことですが」

 

「……教官、さん……?」

 

泣いていた理央が見上げると、難しい顔をした教官が画面をにらんだまま口を開く。

 

「初心者ダンジョンへ赴こうとして、中級者ダンジョンへ行ってしまい、そこの1階層で――通常では極めて低確率でしかない、モンハウに遭遇」

 

【教官のお姉さん?】

【どうした急に】

【確かにあれがユズちゃんたちの初戦闘か?】

【初心者講習までは良かったんだがなぁ】

 

「次は初心者ダンジョンのボスフロアから、謎の魔法陣で転移――中級者ダンジョンクラスのボスモンスターと、分断されての戦闘」

 

【そんなこともありましたねぇ】

【ユズちゃんがちょうちょしたからのやつ?】

【ひなたちゃんとロリロリしてたやつだ!】

【草】

 

【違うぞ、ひなたちゃんがうっかり触っちゃったんだよ】

【勝手にユズちゃんのせいになってて草】

【すまない……素で勘違いしてたわ……】

【しゃあない】

【だってユズちゃんだし】

【けどあれ、どっちみち帰り道で使おうとして使ってただろうし】

 

「そして、こちらもやはり初心者ダンジョン――の深いものですが――で、イレギュラーなタイミングでのダンジョンの生え替わりに遭遇。 地上と分断され、護衛も含め、柚希さんたちのどなたが欠けても無事ではなかった戦闘」

 

配信画面では、柚希が数度目の光線でモンスターたちをなぎ払っている。

 

だが、その顔は明らかに疲れを見せているし、走って移動する速度も落ちてきている。

 

「そして、今回。 柚希さんは、ほぼ毎回――通常の空間と隔離され、モンスターの群れに襲われています。 まるで、『そう仕向けられている』かのように」

 

「それは……ええと、一部は魔族というもののせいで」

 

「――いえ。 恐らくは、初めのものからすべてが。 すべてを偶然で片づけるには、あまりに不自然です」

 

【えっ】

【まさか】

 

「魔族が――いえ、きっと、魔王軍が。 組織立って柚希さんを嗅ぎつけ。 ダンジョンという彼らの縄張りに入ったところを強襲して来たのでしょう。 ……そして今度は、しばらく縄張りへ入って来ないからと、しびれを切らして」

 

車両の窓から、柚希の家の上空高くまで伸びている、光を通さない円錐状の空間をにらむ。

 

「あのように、柚希さんを強引に彼らの元へ。 ――柚希さんに、それほどの価値が……」

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