ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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184話 「ユズちゃん救出作戦」の爆発

「校則違反も、学生の半分以上がいっせいにやったら……まぁ首謀者くらいしか怒られないし?」

「なら、この地域の若手がまるまる処罰受けるってことになれば……な?」

 

「ただでさえ少子化でド田舎、んで旨味もないダンジョンを定期的に攻略してるみんながまとめて居なくなったら?」

「まー、ムリよねー。 あ、うち、一応市議会委員だから」

 

「そうそう、泣いてる理央ちゃんもへとへとなユズちゃんもほっとけないって」

「私たち地元民は、みんな理央ちゃん推しだから」

 

「あ、私はひなたちゃん推しー」

「お、俺はあやちゃん……」

「まぁみんな、ユズちゃん親衛隊ってことで」

 

柚希の家――から少し離れた国道。

 

そこは、まるで修学旅行生の軍団とでも表現できる規模の人数に膨れ上がっていて、理央たちは、彼らに囲まれていて。

 

「理央様ー! 私たちもいいですかー?」

 

「……ぐすっ……はいっ!」

 

「柚希さん……慕われていますね」

「だってかわいいもん!」

 

着の身着のまま、武器を持っている学生はそのまま持ってくるだけだったらしく、息を整えてからチーム編成やフォーメーション、バックアップなどを話し出す「ユズちゃん親衛隊」。

 

そんな物量を見て、最初に到着した援軍のリーダーな「彼女」は、苦笑いを浮かべる。

 

「……俺たち、要らなかったかな?」

 

「いえっ、とても、とっても嬉しかったです!」

「そうか。 なら、中級者として力を振るうさ」

 

【これはイケメン】

【仮に、入ってすぐの戦闘なら中級者なイケメンたちが役に立つしな】

【ユズちゃんのためだ、突撃しろイケメン】

【草】

【えらそうで草】

 

【大丈夫、アンチコメと戦いながらイケメンの配信も見てやってるから】

【草】

【楽しそうで草】

【なんか泣き笑いしてる】

【大丈夫、みんなだから】

 

「……柚希さんは、あと1、2回の攻撃で魔力切れを起こすでしょう。 幸いにして飛行系モンスターがいませんから、その後、2階や屋根で生き延びられたとしても……持って、1日。 猶予は、ありません。」

 

「……教官さん……!?」

 

とん、と、装甲車から出てきたのは、理央たちを慰めるために解いていた武装をふたたびに装着している、教官の彼女。

 

「あのユニコーンの彼女を見捨てたとあっては、どっちみちおしまいですよね」

「ユズちゃんさえ無事なら、何度でも立て直せますし」

 

「うちの人気ワースト範囲をうろうろしてるド田舎の希望だもん」

「少子化で少なすぎる子供の希望だもんね」

 

「あーあー、こちら――隊。 なんか通信機の調子悪いので、ここからは隊長の独断で動きまーす。 あーあー聞こえなーい。 そゆことで」

 

装甲車からは次々と、彼女と一緒に民間人の救助などをしていた面々が――同じく武装を固めて降りてくる。

 

先ほどまでは理央たちをなだめていた彼女彼らたちも武装を整え、教官の後に続いている。

 

「……みな、さん……」

 

「ええ、通信機が壊れたので仕方がないんです。 協会本部には、きちんとそのように報告しました。 ――なので私は」

 

「通信機が壊れた」と言いながら、理央のリストバンドに向かって――宣言する、彼女。

 

「現時点で、対魔王特攻、人類防衛の要として。 最も可能性のある――柚希さん。 私の教え子の救出作戦に、加わります。 私以下、総勢130名が」

 

わぁ、と歓声の上がる国道。

 

既に1000人近い人間の集まるその歓声は……後に聞いたところだと、隣町からでも聞こえたという。

 

「ダンジョン化直後の空間――そこは、まだ確認されていない未知の状態。 なら、ここは大人であり公務員である、私たちが先陣を切ります。 なにしろ、命の保証ができませんから。 これだけは……譲れませんからね?」

 

「隊長」と呼ばれた教官の彼女の周りを、次々と囲んでいく公務員たち。

 

「それ以外は『自己責任』でってことですよね! 大丈夫、私たち、言われ慣れてますから!」

 

「そうよね、自己責任。 私たちは現場判断の隊長に従うだけだし、他の子たちは民間人の有志の救助活動だから、この判断に文句つけるお偉いさんは居ない。 そうですよね、ユズちゃんのメンバーさんたちー? あ、私、上位メンだから!」

 

【草】

【なんだこの子】

【どやってやがる】

【勝ち誇ってやがる……!】

【だが乗るぜ、俺は】

【俺も】

【終わったら伝手使って支援する、存分に戦え】

 

「これだけの人たちが、貴女たちと柚希さんを。 ……落ち着いて、けれども心は熱く……ね?」

 

「はい……はいっ!」

 

理央の頭を撫でながら、周囲の血気盛んな若者たちを適度になだめる彼女。

 

この場所、この瞬間。

 

そこに居るすべての人間――そして、その音声を聞いているすべての人間の意志は、ひとつになった。

 

「もしこれで、犠牲者なし――は楽観的すぎますが、少ない犠牲で乗り込めると判明しましたら、他の地域のダンジョン化で取り残された人も救助できますし」

 

「俺たちが命を張れば、そういう選択もできるようになるかもしれませんからね!」

 

「ダンジョン化の際のマニュアルと定石が更新されるのか……」

「そう思ったら、悪い賭けじゃないな」

「ド田舎の公務員としては、一生に1回あるかどうかの機会ですし」

 

「なにより」

 

「ああ」

 

「「「ユズちゃんを、守れるからな!」」」

 

一層の歓声が、天を突く。

 

気のせいか、柚希の家の上空の漆黒が、一瞬だけでも揺らぐ。

 

「学生さんたち……親衛隊さんたちは、今のうちにレベルと経験と戦闘スタイルを共有します」

「はいっ!」

 

そうして集まった彼らは、速やかに相談し合う。

 

教官を戦闘に、まずは数名の協会員が突撃。

その後、彼女たちの配信を見て判断した各自の行動を開始する。

 

――柚希の配信では、柚希がふらつきながら、数回に分けて射撃を継続中。

 

目に見えてふらふらな以上、一刻を争う状態だ。

 

【俺たちも、なにかできないか?】

【そうだな】

【何かって言っても……】

【俺、飛行機使っても数時間のとこだし……】

 

【……あのさ】

【なんだ?】

 

【教官さんの配信を見てさ、何割かでも中に到達できそうなら。 できるんだったら。 ちょっと――行って、みねぇ? 人類の、最前線に。 もしかしたら、お前の近所で助けを待ってる、ダンジョン化領域内の人たちの、手を取りに】

 

【!!】

 

【ちょっと準備してくる】

 

【でも俺、適性なくって……】

【そこのお前、ダンジョン化周辺でそいつらの物資の補給とかのボランティアに興味はないか?】

【ああ、長期戦になるからな】

 

【10年前を思い出せ。 近くの人たちと声を掛け合って、逃げ惑った日々を】

【……そうだな、俺たちは生き延びちまったからな】

【嫌な夢も、これでおしまいか】

【よし、行くか】

 

【赤信号、みんなで渡れば怖くない】

【人の生き死にが関わってるんだ――なら、戦える俺たちは命、張らなきゃな】

【年下があれだけ命燃やしてるんだ  年上の俺たちが、どうして画面のこっち側でのんびりしてられる】

 

【教官さんちゃんたちも、まだ20代だろ? あんな若い子の方がずっと肝据わってるじゃねぇか】

【あのときで、まだ10代……ただの子供じゃねぇか】

【この11年で培ったダンジョン潜りの知識と経験、行かすときが来たな!】

【そうだな、こういうときこそダンジョン潜りの実力の見せ所だ】

 

【行ってくれる奴、URL張れば、みんなで見て応援するからな】

【諸事情でいけない奴らも、見て応援、コメントで応援、投げ銭、炊き出しで応援だ】

 

【もちろん登録もするぞ!】

【投げ銭くらいは好きにさせてくれよ】

【これが……推し活】

【近所ので良いから見てやれ  それが、1番の応援だ】

 

流れるコメントの中には、警察や協会からの危険を知らせる書き込みも相当数。

 

けれども、集団に1度ついた火は――もう、収まらない。

 

「……じゃあっ!」

 

教官たちの後を走る理央が――先ほど追いついていた、彼女の配信用カメラに向かって、

 

「柚希先輩、救出配信! 始めますっ!」

 

――笑顔で、宣言した。

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