ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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185話 魔力切れだったらしい僕

「――ネット上で、件の『ユニコーン姫』の所在地で千人規模の移動に、国内43地点でダンジョン化したエリアへの民間人の移動が観測されましたが」

 

「良い」

 

ある、政府関係者施設。

 

そこで、会話がなされる。

 

「元より、我らに必要だったのはこれだったのだ。 ただ守られるのを待つだけではない、ただ安全を祈るのではない。 我ら自身が、ほんの少しの勇気を集め、巨悪に立ち向かう」

 

「それは、『神』に祈るだけのものじゃない、アタシたち人類のすべきこと」

「久方ぶりの太平の世で、すっかり忘れ去られていた気持ち」

 

「信念」

 

「生きる希望」

 

「自分で、できることを探す気持ち」

 

「ああ、そうだ」

 

――その空間で、彼女は言う。

 

「きっと、みんなも、もう分かってる。 私たちみたいに――抑え切れない、危ないところに向かう、この、気持ちを」

 

桃色の髪をした少女が、笑顔で送る。

 

「あなたたちは――私たちの後悔を、しないで」

 

と。

 

 

 

 

「………………………………」

 

………………………………。

 

ん。

 

あれ。

 

僕。

 

何してたんだっけ。

 

………………………………。

 

……ああ、そうだ。

 

確か僕たちは、家ごとどっかのダンジョンに落っこちて。

 

で、おまんじゅうを抱っこして、走り回って。

 

それで?

 

………………………………。

 

……それで。

 

「……ん」

 

目を開けようとすると、がんがんってうるさい音。

 

……何かを叩く音?

 

石……ブロック塀を叩く音。

 

【良かったあぁぁぁぁぁ】

【ユズちゃあああん】

【生きてたぁぁぁ】

 

体をゆっくりと起こして、少しずつ五感が戻って来る。

 

「……あれ、僕……」

 

なんだか白黒になってる視界。

 

そのすみっこで、転がってる白い塊。

 

「……おまんじゅ……う……!?」

 

重い。

 

悪夢の中で、どうにかして伸ばしてた手が重すぎて動かないあれみたいな感じ。

 

けれども、歯を食いしばってがんばると、次第に動く手が、わたわたもこもこなそれにたどり着く。

 

「おまん……じゅう」

「きゅ……」

 

【ああああああ】

【生きてたぁぁぁぁ】

【良かった……良かった……!】

【ユニコーンも無事だったか】

【もう10分くらい動かなかったから、もう……!】

 

【今、教官さんたち先遣隊が突入した】

【もう少しか】

【ユズちゃんの応援に駆け付けられるかどうか、もうちょっとで分かるな】

【ユズちゃん、がんばって】

【がんばれ】

 

あったかい感触に、僕を見返してくる瞳。

 

――おまんじゅうは、生きてる。

 

「……なるほど。 ここ、セーフ、ゾーン……だったんだね……」

 

どうやら屋根の上で倒れてたらしい僕。

 

その下では、家を囲むブロック塀にすがり付くようにして威嚇してきているモンスターたち。

 

「けど、壁に体当たりしたり……じゃ、そのうち壊れる……」

 

腰から下は力が入らなかったから、がんばって上半身を起こしてみる。

 

「……っと……また落としちゃう、とこ、だった……ね」

 

力の入ってないおまんじゅうを抱きしめながら、くらくらする頭でぐるりと見渡す。

 

――どこもかしこも、みっちみちにモンスターが埋め尽くしている。

 

「良かったぁ……とりさんとか居なくって」

 

【草】

【とりさんで笑っちゃうけど、ほんとだよな】

【魔力切れで気絶してたあいだに襲われなくて、本当に……!】

 

【ユズちゃん家そのものがセーフゾーンなのか?】

【どうだろう】

【さっきから塀に体当たりしてるけど】

【ただのブロック塀だ、モンスターが本気で体当たりしたら壊れるもんな】

 

【……てことはさ  ダンジョン化してからしばらくなら……巻き込まれた人たち、無事なんじゃね?】

【!!!】

【良かった……良かった……】

【この状態が維持されるなら、外にさえ出なきゃ】

 

【でも、飛行系が居るとどうか分からないぞ】

【あー】

【上空までそうであってほしいところだが】

 

【普通のダンジョンにもあるセーフゾーン……その上空が安全かなんて、そのへんの検証なんて誰も思いついたことなかったもんなぁ】

 

「……この数。 さっきよりも増えてる……無限湧きってやつ? だとしたら、僕たち、もうここから……」

 

目が醒めて少し、足腰がしっかりしてきたから、ゆっくりと立ち上がる。

 

それを見て吠える声が反響してすごいことになる空間。

 

【こわいよー】

【ユズちゃんの方が怖いんだぞ】

 

「……ダメだ、部屋が広すぎて出口があるのかどうかすら。 ……よし、こうなったら」

 

よく見ると結構あっちこっちハゲたりカビが生えてる屋根を慎重に移動して、2階のベランダから僕の部屋へ。

 

たんたんたんっと降りて、サンダル履いて、お庭へ行く。

 

ふらつくし、おまんじゅうも重いけども、なんとかがんばって。

 

【また攻撃するのか?】

【いや、でも、同じことになるって……いくらユズちゃんでも分かるだろ】

【ああ、いくらユズちゃんでもな……】

【いくらちょうちょでも、この緊急時なら……】

【ちょうちょそのもの疑惑があるユズちゃんでも、まさかな……】

 

【草】

【コメントが辛辣で草】

【とりあえずで、しばらくは大丈夫そうだってほっとしたんだ、軽口も出るよ】

【そうだそうだ】

 

【あ!! ユズちゃんのスカート!! 裂けてスリットになってる!!】

【!!!!】

【お前……】

【さっきのケガしたとこだろ】

【男子ってサイテー】

【草】

 

【ユズちゃん、知ってたけどふとももも細いのな……】

【これで第二次性徴迎えてるって無理でしょ……】

【草】

【セクハラ過ぎて草】

 

【ちょっと?? ユズちゃんが大丈夫で安心して泣いてた私の気持ちは??】

【だってユズちゃんの配信だからねぇ……】

【ユズちゃん自身が、傷ついてても無事そうなら思わず言っちゃうんだ】

 

【ひでぇ】

【さっきまでの熱い空気が……】

【ユズちゃんの配信だよ? こうなるに決まってるじゃん】

【そうだった……】

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