ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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2話 スライムを倒しちゃって助けたら懐かれた?

「………………………………」

「………………………………」

 

白くて丸っこい、ぬいぐるみみたいな何か。

それと目が合い続ける僕。

 

……この地域の野良猫たちで、この顔はないしなぁ。

大体みんな顔見知りだし、最近新入りさんもいないし。

 

真っ白だから……うさぎ?

でも野良のうさぎなんて……脱走かなぁ。

 

そう思いながら近づいてみると――。

 

「……うわっ!?」

 

その茂みから別の何かが飛び出して来た……モンスターだ!

 

「っ……つ、通報っ!」

 

学校で習ってるようにそのモンスターたちに背中を向けないで下がって、まずはスマホで静かに通報。

 

毎年の避難訓練で身に染みついたその動作のおかげで、いつもみたいに何もないとこで転んだりすることもなく距離を取れる。

 

そのモンスターたちの見た目は……スライムだから弱いけど、僕みたいな一般人だと飛ばして来た液体で普通に火傷するんだって覚えてる。

 

そうだ、僕みたいな一般人には戦闘力なんて無いんだから。

 

それも僕なんて体力測定で、女子でも運動できない子と同じくらいなんだから。

 

「!」

 

こういうときのためにって持ち歩いてる傘を構えたけど、そのスライムたちは僕から視線を逸らすと……さっきのぬいぐるみみたいなのに攻撃を始める。

 

「ぴぎー! ぴぎー!」

「………………………………」

 

ただ頭を守るように、じっとしているさっきの白いの。

 

……なんで反撃しないの、君。

そのままじゃ、やられちゃうよ。

 

「ぴぎっ! ぴぎっ!」

 

「……………………………………」

 

ふと、それと目が合う。

真っ青で透き通るような瞳が、僕を見ている。

 

……その瞳に、僕の心臓がどくんと跳ねる。

 

――――「誰か、助けてくれないかな」。

 

そう思って周りを見るだけな、その光景が……小さい頃、この見た目と性格でやり返すことなんかできなくって、ただ黙っていじめられていた僕を思い出させて。

 

――気が付いたら、僕は傘を振り回して突撃していた。

 

危険って分かってるのに、どんくさいって分かってるのに――それでも、体が勝手に。

 

「この子を助けなきゃいけない」、そう無意識で感じたんだ。

 

「……わぁぁぁぁ! ど、どっか行けぇぇぇ!」

「ぴぎっ!?」

 

「えーいっ!」

 

ばしばしばしばしっと、とにかく叩く。

無心で、傘の先でばしばし叩き続ける。

 

無害にしか見えなかった人間からいきなり襲われたからか、それともダンジョンからはみ出て消えかけていて弱かったからか。

 

傘の先端がぐちょぐちょって音を立てたかと思うと……スライムたちは飛び散り、周りの草をじゅっと溶かしていた。

 

「……はぁっ、はぁっ……た、倒せちゃった……?」

 

そっと引き寄せた傘……その先端は、溶けている。

 

布のところもでろでろに。

もう、傘としては使えないものになってる。

 

……たったの数回叩いただけで、こんなに溶けるんだ。

 

飛び散ったスライムの一部が張り付いていて……ちょっと待つと、ころんって結晶になる。

 

……まさか、僕が。

 

こんな僕が、スライムとは言えモンスターなんて。

 

ちょっとのあいだ感慨深い気持ちに止まってたけど、それよりも。

 

「……だ、大丈夫……?」

 

僕より弱いスライムよりもさらに弱いだろう、ぬいぐるみみたいなの。

 

……普通の動物じゃないし、多分、モンスター、だよね……?

 

でも、攻撃しては来ない……みたい?

そもそもいじめられてた……いや、狩られそうになってたし……。

 

「さ、触るよ? こ、こわくないよー……」

 

「きゅい」

 

1回鳴いたけども、じっと僕を見る以外は何もしなさそうだったから、そっと抱き上げてみる。

 

「わぁっ……」

 

噛まれるかとも思ったけど、それも大丈夫。

なによりもふわふわしてて柔らかくって、あったかくって。

 

「……………………………………」

「……………………………………」

 

その子と目が合う。

 

……ぬいぐるみ……白い馬に近い感じ、かも。

でも犬にも猫にも見える……赤ちゃんだからかな。

 

あと、額にちっちゃなイボが生えてる。

 

「……君、何なの?」

「きゅい?」

 

僕が訊ねると、おんなじイントネーションで鳴き返してくる。

 

鳴き返してくるとか、友達が買ってるオウムとかみたい……だけど。

 

「……はぁぁぁぁ……よかったぁぁぁ……」

「きゅいー」

 

この無害そうなモンスターはまだしも、さっきのは明らかにスライム。

 

つまりはモンスター。

 

力のない僕が、まぐれだけどモンスターを倒せちゃった……けど、1歩間違えたら。

 

そう思ったらいつの間にか、そのぬいぐるみみたいなのを抱きしめて座り込んじゃってた。

 

 

 

 

「……なるほど、確かにモンスターの反応は無いな」

「君が見たのは2体だったんだね?」

 

「はい」

 

「なら、近くのダンジョンから出て来た個体だろう。 ……うん、確かにただのスライムなら、ダンジョンから出て1時間くらいで消えるだろうからね」

 

知らない男子たちの声が、僕をほっとさせてくれる。

 

「運が良かったな。 まだHPが残っていたら火傷とかしてただろうし……」

「いや、もうちょっと経っていたらただ結晶化するだけだったぞ? ダンジョンの外だし、ただのスライムだったし」

 

「ああ、そうか」

「スマホで索敵しても近くにはその白いのだけだし、もう大丈夫だろう。 よく頑張ったな」

 

通報して10分くらい。

 

田舎でこの早さなのは、一般人でもそれなりにダンジョン適性がある人が多くって、今みたいにダンジョンから出て来て弱ってる程度のモンスターなら倒せる人が呼び出されるから……らしい。

 

まぁね、今みたいにひょっこり遭遇するからね……僕みたいなひ弱な一般人じゃ危険だし。

 

なによりも、下校時間だったのが大きい。

田舎って、時間帯によってはほんっと誰もいないからねぇ……。

 

「君、怖くなかったか?」

「ダンジョンに潜ったことない一般人で、よく戦えたよなぁ」

 

「あ、はい。 この子を助けなきゃって思ったら夢中で……」

「きゅい?」

 

この人たち……聞くと駅前の地区の人たち、だけども多分僕と同じ高校生。

 

だって僕たちとは違う制服だし……が、僕が抱いたぬいぐるみ、もといモンスターを見てくる。

 

同い年くらいなのに、同じ男子なのに……どうしてこうも、背丈もガタイも違うんだろうね。

 

ほんと、いつもみたいに見下ろされてる形だもん。

 

背が低いもんだから、僕と目線が合うのは中学生とか小学生の子くらいだけだしなぁ……。

 

「しかしずいぶん懐いているな……」

「ああ、君はテイマーなんだね?」

「そうか、確かそんなスキルがあったか」

 

「へ?」

「え?」

 

「テイマー……ですか?」

「……違うのか?」

「……それが、学校の実習では……」

 

僕たちの会話を聞くように首を動かすぬいぐるみモンスターの温かさを感じながら、僕の発動しなかったスキルのことを説明する。

 

「……あー、そうだそうだ。 テイマーとか一部のスキルは条件揃わないと発動しないもんなぁ」

「そういやそうだったな。 都会の学校ならひととおりを試させてくれるらしいけど、こっちはなぁ……」

 

「この田舎ですからねぇ……」

「この田舎だから、そんな施設がなぁ……」

「学校だって、ギリ残ってるレベルだもんなぁ……」

 

はぁ、と3人でため息。

 

「……ふふっ……学区は違っても、同じ町ですもんね。 ありがとうございますっ」

 

「かわい……こほん」

「おい、抜け駆けはダメだぞ」

「分かってるって……だけどよ」

 

あー、ちょっと嬉しい。

 

最近は全然同級生たちとも……だってもうすぐ留年しそうだからなんか慰められるばっかりだし……話してなかったもんだから。

 

やっぱり同い年ぐらいの同性と話すと安心するよね。

年上の人とも違う、女の子とも違う、男同士の感覚。

 

「……なんか良い匂い」

「おい、嫌われるぞ!」

 

「きゅい」

 

ひと鳴きしたぬいぐるみみたいなのをぎゅっと抱きしめながら、さっきの緊張感から解放されてしばらくほわってしてた。

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