ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「ひゃっはー!」
「とうとう見つけたぜぇー!」
【!?】
【何だこの声】
【誰だ今の】
【「ひゃっはー」ってチンピラか!】
【あ、空中に】
【ワープアウト……マジかよ】
【え? モンスター?】
【今の、モンスターなの……?】
おなかがいっぱいになってうとうとしてたら聞こえてきた声。
ううん、なんかぼんやりしてるし、もしかしたら夢の中なのかも。
今日はすっごく疲れたもん。
チンピラみたいなしゃべり方してるモンスターなんて居るはずないし……うん、きっと夢だ。
それか、お母さんがつけっぱなしのテレビかタブレットの声。
「もー、お母さん……ドラマつけっぱなしにしちゃだめだって……」
「寝ながら見ちゃうと、何話から寝てたか分からなくって結局最初からなのよねぇ……」
【ユズちゃん! ユズねぇ! 寝ぼけてる場合じゃねぇ!】
【敵襲だよユズちゃん! ちょうちょしないで!】
【草】
【でも分かる】
【あと1話のループなんだよなぁ】
【そのせいで気が付いたら明け方でさぁ】
【あるある】
【視聴者も寝ぼけるな! 起きろ!】
【目を覚ませ、緊急事態だぞ】
【あいかわらずの和みっぷりよ……】
【何でこの姉妹は本当に……】
【何もかもを歪めるのがユズワールドだからな】
【けど……】
【うわぁ、すごい数】
【ついにやって来たか、魔王軍本隊】
掛け布団から体を起こして、ひとつあくび。
「くぁぁぁー……」
ぐーっとのびーっ。
でもまだまだ足りない気がする。
眠い。
「……くぁ。 眠い……」
【●REC】
【良い匂いしそう】
【分かる】
【こんなにかわいい子がこんなに無防備に……ふぅ】
【やらしくないはずなのにやらしい】
【おっぱい……どこ……? ここ……?】
【ユズちゃんは絶壁組なんだよ?】
【異教徒はここか?】
【怖いから止めて!!】
【草】
【まーた湧いてる……】
【ユズきゅんは男の娘でしょ、何言ってるの?】
【しっしっ】
【こっちもまーた湧いてる】
【いい加減諦めろって、ユニコーンに懐かれてるんだから】
【魔族もすり寄ってくるんだから】
【それ、良い匂いする男の娘だからって説ない?】
【しっしっ】
【構うな、構うと飲み込まれるぞ】
眠い。
緊張が解けて、おなかがいっぱいになって。
……チョコが守ってくれるようになって、僕たちは決めた。
チョコの体力か魔力が切れて安全じゃなくなったら、またおまんじゅうに頼るか僕たちが逃げ回るしかない。
でも、それじゃいずれ――こうして囲まれているんだ、僕たちは押されて負ける。
逃げ道がなくって、援軍も期待できないだろう。
なら、いっそのこと開き直ってちゃんと食べて寝て、最期までがんばろうって。
もちろんその前に理央ちゃんたちが来てくれたらいいんだけども……こんな危ないとこだもん、彼女たちまで巻き込まれて逃げられなくなったら困る。
リストバンドはあいかわらずに「危険」――だけども、転移自体はできるはず。
どうしようもなくなったら、それに賭けてみよう。
ここで最期を迎えるか、それとも地面とか建物にめり込んで最期を迎えるかの違いかもしれないけどね。
そう結論を出した途端に気が楽になって、いつも以上に食べたからか、頭がぼんやりしてる。
どんな結論でも、決まれば楽になるよね。
「むー……あと1時間後じゃだめぇ……? くぁぁ……」
「あらあら、ドラゴンさんたちがいっぱい。 ふぁぁ……」
【本当に緊張感が無いなぁこの子たち】
【これで片方が経産婦ってことになってたの……?】
【あり得ないよね】
【あり得ないよな】
【この姉妹どころか発育の差がある双子の姉の方を経産婦とか、本当にひどい奴らだよな!】
【そうだぞ、経産婦属性は10年後くらいに追加されるんだぞ!】
【百合出産に興味はないか?】
【草】
【そうだよ、視聴者たちの目が間違っていたんだよ】
【そうだよ、羽が生える前はおっぱいだってちっちゃかったんだぞ、ユズねぇ】
【というか羽……まだ生えてるのね、2人とも】
【ああ見えるけど、きっと体は本能的に危機を感じて……いるのかなぁ……】
【草】
【この子たち、もう妖精とかだって 絶対人間じゃないって、メンタル的にも】
景色がふらふら、体もふらふら。
ぽてぽてと、寝る前も頑丈に囲ってくれてたチョコの一部に近寄って、ちょうど窓になってるところからぐるりと眺めてみる。
「……ドラゴンさん? にしては結構ちっちゃいけどいっぱい居る……すごい数」
「おやびん! コイツ、おやびんのこと小さくて弱そうって抜かしてますぜ!」
「なに!? 小娘が生意気な!」
おやびん?
小娘?
「………………………………??」
【草】
【分かってないユズちゃんがかわいい】
【かわいい】
【かわいいね】
【こてんと首をかしげている】
【かわいいね】
【このなんにも分かってない表情が良いんだ】
【分かる】
【あ、サイズ的にこいつらワイバーンだわ】
【確かに】
【ドラゴンと比べると圧倒的にちっちゃいし体も細いもんな】
【ワイバーンなら多少は……いや、数が……】
【次々とワープアウトして来てるし……】
【こいつら、物量で押してくるからなぁ】
【これ、女神様の元に魔王軍が出現してたときみたいに……】
【あー】
【普通に転移魔法使いこなしてるんだよな……しかも軍単位で】
【ぱっと見ても1000匹は出現してるもんなぁ、もう……】
「……何の用ですか? ドラゴンさんたち。 ぼくたちねむいんですけど」
「おやびん! コイツ、『あなたたちはドラゴンよりも矮小で弱っちいですね』って抜かしてますぜ!」
「なにぃ!? ますます許せん!」
「いや、言ってないけど……っていうか、しゃべれるんだ、モンスターさんなのに」
「俺たちは魔族だからな! 魔物とかいう木っ端とは違うんだぜ!」
「へー、すごいですね」
「本当か? うへへ……」
「言葉とか勉強したんですか?」
「魔族として権能を得たから何もしてないぜ!」
「へー」
ぼーっとしてるからか、なぜか目の前にたくさん浮かんできてるモンスターさんたちの中でもおっきいドラゴンさんとコミュニケートしてる僕。
……まさかね。
そもそもすっごく離れてるのに普通に声が聞こえるし、そもそも会話が通じてるし……うん、これは夢なんだろう。
夢なら、慌てなくていっか。
いいよね。