ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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288話 お店「が」家「に」来た

「この度は魔王討伐、おめでとうございます柚希様」

 

「え……あ、はい」

 

「つきましては日向ひなた様のご指名を受け、柚希様にお似合いのお召し物をご用意致しました」

「カットはお召し物をお選びになってからということで、待機しております。 洗面室をお借り致します」

 

「あ、はい」

 

僕が、男らしくなるって決心した翌日のこと。

 

僕は、かっこいい僕を想像してわくわくどきどきしてうきうきしてたんだ。

 

教官さんが「午後になるけど良いですか?」って聞いてきたから「良いですよ」ってお返事して、お母さんとエリーさんとお昼ごはん食べたんだ。

 

それでチャイムが鳴ったから、出かける用意して玄関に行った。

 

ちょっと物々しい警備の人たちが居るけども、きっと心躍るお買い物ができるんだって。

 

これまでみたいに1番安い服屋さんと古着屋さんはしごするんじゃないんだって。

 

でも、そこに居たのが――この人たちだ。

 

「ごめんなさいね、柚希さん」

「はい……」

 

申し訳なさそうな顔をしている教官さんと一緒に。

 

「やっぱり、あれだけの事件があった直後に柚希さんを外出させるとなると、警備の人手が不足しているようで」

「いえ、でも、僕たちほら、強いですし」

 

「……ダンジョンで使用できる武器や魔法は、ダンジョン外では原則禁止ですよ?」

「あっ」

 

「人間相手、それも民間人相手に……そもそも柚希さん、攻撃できるんですか?」

「無理ですね」

 

「あと、恐らくはスマホを向けてくる軍勢に……一般人の大軍に、止めるように言ったところで」

「聞きませんね、きっと……」

 

「ですよね。 しかも今はメディアからものすごい数のインタビューやらダンジョン配信の連絡がひっきりなしなんです。 この状況で外に出てしまったら……」

 

「とんでもない騒ぎになることは理解しました」

 

「ですので、代わりとしまして……ひなたさんのご厚意で、彼女の……その、お家に出入りしています、信頼できる方々をお呼びした次第で」

 

よく分からないけども、どうやら僕は当分好き勝手に散歩できる身分じゃないらしい。

 

で、お店に行くとかもっての外、だから代わりにこうしてお店の人に来てもらうっていう、大金持ちがやってそうなサービス使うってことだよね。

 

……うん、なんとなく知ってる。

 

ひなたちゃんが、お金持ちのお家の子だって。

 

……けどまさか、服屋さんとかまでお家に呼びつけるとか想像できるわけないじゃん……僕たち貧乏暮らしだよ!?

 

「女の子の夢よねぇー……お抱えの外商さんに来てもらうのって」

「そうなの?」

 

「お姫様みたいで嬉しいでしょ?」

「別に……」

 

僕、男だし……服とかも自分で選びたい派だし……まぁ今までは私服はほとんどお母さんのお下がりだったんだけど……だから余計にね。

 

「きゅい!!!」

 

「はい、ユニコーン様。 ひなた様から柚希様の背格好などは聞き及んでいますので、あとは柚希様の魅力をより引き立てる、素晴らしい服をご用意してきました」

「きゅい!!!!」

 

次々と袋を持って入って来ている服屋の人たちの周りで飛び跳ねているおまんじゅう。

 

……おまんじゅうが普通に受け入れられてるのは嬉しいけど……あの、ちゃんとズボンとかあるよね?

 

全部スカート系じゃないよね?

 

ね?

 

 

 

 

9割がかわいい系だった。

 

けど。

 

「ぎゅい」

 

「も、申し訳ございませんユニコーン様……柚希様は、ストリート系女子のあいだで人気の、ホットパンツとシャツという組み合わせが1番にお気に召したようで……」

 

……僕。

 

たぶん何ヶ月ぶりにスカート以外のを着てる気がする……!

 

「ふふーんっ」

「ぎゅい」

 

「あれが柚希様……」

「配信でも見ていましたが、やはり……」

「かわいらしいですね」

 

よく聞こえないけども、店員さんたちもきっと「かっこいい」って言ってるんだ。

 

ちょっと胸元がすーすーする感じのシャツに、ぴったりすぎてちょっときついけどそれが逆にしばらく待ち望んでたズボンの感触を思い出させてくれる短パン。

 

うんうん、こういう小学生で着てたような、お昼休みとか放課後とかに校庭とか公園で走り回るような服が1番だよね!

 

……たぶん僕が女の子だって思ってるから、シャツの下のキャミソールもセットなんだろうけど……大丈夫、自分で着るときは普通のシャツにするから。

 

「むふんっ」

「ぎゅい」

 

「     」

「     」

「……はっ!? お、お客様の前ですっ!」

 

全身鏡の前で――こんなでっかいのどうやって持ってきたんだろ――いろいろポーズを取って、しばらくぶりに男らしくなった僕自身を見て、つい嬉しくなっちゃう。

 

「ぎゅい」

「ぴ?」

 

うんうん、あとは髪の毛もさっぱり切ってもらったらすっかり男子。

いっぱしの男子だよね。

 

え?

配信とかで女の子って思われてるの、どうするのかって?

 

ふふん、実は考えてあるんだよね。

 

こうやってまずは服装から男らしくして「実は男だったんじゃ……?」って思わせていって、そういう声が多くなったら「実は男だったんです!」って、暴露配信ってのをするんだ。

 

みんな、ちょっとびっくりはするだろうけど「なるほど、確かにかっこいい」「これからはユズちゃんじゃなくてユズくんって呼ぼう」ってなるはず。

 

「くふふっ」

 

だめだ、笑いが止まらない。

 

まだだ、まだ笑う時間じゃない。

 

こういうのは全部終わってから高笑いするんだ。

その前に笑っちゃうと負けるんだ。

 

「      」

「      」

「      」

 

「……ユズ様ー、魅了……魅了が無意識で発動しています……」

「エリーちゃん、これ、魔法なの? 昔からこうなんだけど……」

「え゛っ」

 

「えっと、たぶん私も……だから、ゆずのお父さんゲットしたときも、めろめろで……」

 

「……魔法適性が、親子揃って素で高かった……? それともやはり、コメント欄の皆様の言う通り、祖先のどこかでワタシたちと交配した……?」

 

「むふんっ……どやぁ……!」

 

「      」

「      」

「      」

 

「……ぎゅい」

 

鏡の前では、男らしいシャツと短パン小僧が1人、腕を組んで仁王立ち。

 

あとは髪の毛切って、ヘアピンないとなんにも見えないくらい伸びちゃった前髪と長くなりすぎた後ろの髪の毛をばっさり切ってもらえばいいもんね。

 

ふふーん。

 

これでもう、かわいいとか言わせないんだから!

 

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