ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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289話 かっこ良くなれなかった

「うぅ……ぐす……」

「はーい、よしよし」

 

「それで、ゆずきちゃん泣かせたの、誰? 長いところは200年くらいの付き合いなのに――ひなたのお友達、泣かせたの――誰?」

 

「ひっ……」

「ひ、ひなたさん! まずはお話しを……!」

 

 

 

 

「……つまり、柚希先輩は」

「格好いい系が良かったと」

 

「うん……ぐす……」

 

「ええと、髪もショートヘアにしたのに」

「ええ、戻ってしまったのよぉ」

 

「申し訳ありません申し訳ありませんリリスの座に就いてしまったばかりに申し訳ありませんどうかせめてワタシの命だけで」

 

僕はお願いした。

 

髪の毛は、格好いい感じにって。

 

だからばっさりと……美容師の人は最後まで「こんなに美しい髪を……」ってためらってたけど、それでも最後はさくっと髪の毛を切ってくれて、じょきじゃきじょきってすっきりしてくれた。

 

そこまではいい。

そこまでは良かった。

 

僕もかっこよくなってた。

たぶんこの数年で1番に輝いてた。

 

だってお店の人たちも褒めてくれてたもん。

「ボーイッシュですね!」って。

 

……けど、なんで理央ちゃんたちに自慢しようと思って電話して、待ってるあいだうとうとしてたら髪の毛戻ってるのぉ……?

 

ていうかたったの数ヶ月で肩にかからないのから腰まで伸びるってあり得なくない……?

 

それに……なんでスカートになってるのぉ……?

 

それも、お店の人とおまんじゅうが1番褒めてたかわいすぎるやつにぃ……?

 

聞いたら、持ってきたズボン系のが全部消えてるって言うし……。

 

もうやだぁ……。

 

「ぐす……」

 

「どうする? おばあ様にお願いする? お母様? それとも家督奪ってでもひなたがやろうか?」

「お嬢様どうぞお許しをお嬢様……!」

 

「ひ、ひなたさん!?」

「これは一体どうなっているんだ!?」

 

「まさか、持ってきてくれたパンツ系の5着まで、全部無くなっているだなんて……」

「ぐす……」

 

「……おまんじゅう先輩?」

「きゅーいっ」

「ぴ?」

 

僕は泣いた。

 

久しぶりに人目はばからず……いや、そういや去年も何かで泣いたっけ……ちょうど良いとこに来てくれたあやさんの膝枕に飛び込んで。

 

 

 

 

「なーんだ! おまんじゅうちゃんの仕業だったんだ! ごめんねー、さっきおばあ様に入れた電話、今取り消してもらったから」

「ごめんなさいねぇ、うちの子たちのせいで。 お詫びにさっき言ってたお写真、ツーショットをゆずに撮らせるから」

 

「柚希先輩? 良いですか? いきなり目の前で思いっ切り泣かれたら、まずは柚希先輩がいじめられたって感じちゃうんですよ?」

 

「ま、まあまあ……」

 

「あやちゃんは良いよね、ずっとゆずきちゃんにすがりつかれて」

「あやさんは良いですよね、その母性の塊のおかげで柚希先輩に懐かれて」

 

「えっ……おふたりとも……!?」

 

「ぐす……」

「はーい、ユズ様、よしよし。 泣き止んでくださいねー。 ……いえ、泣き止んでください、でないと事態の収拾が……」

 

うぅ。

 

僕はなんでこんなに涙もろいんだろう。

 

理央ちゃんとかお母さんとかと一緒に観る映画とか、いつもすぐに泣いちゃうんだもん。

 

だって悲しいんだもん。

悲しくなるんだもん。

 

「……ていうか、なんで柚希先輩は泣いてるんです……?」

「ゆず、どうやらかっこ良くなりたかったらしいのよぉ」

「かっこ良く? ……あー……」

 

だいたいなんで髪の毛が一瞬で伸びちゃうんだよ。

おかしいじゃん。

 

あんなにばっさり切ってもらって、美容院の人もなんかお口ひくひくさせてたくらいに切ってもらったのに、うとうとしたら切ってもらった分が全部伸びてるって。

 

おかしいじゃん。

おかしいじゃん!

 

「ユズ様は……その。 この世界の人間様たちのうち、ユズ様のことをご存じの方々の思念と申しますか、情念と申しますか、とにかくそういったものが……」

 

「それって私も?」

「はい……もっとも、お母様の場合は……少しだけさらにお若くなる程度ですが……」

 

「ゆず!!! 良いことでしょう!!!」

「よくない」

 

お母さんが、またタップダンス始めてる。

 

「さっき聞いたそれって……柚希先輩の方からできることってなくないですか……?」

 

「ええ……ですが、本来ならサキュバス、インキュバスにとってはプラスにしか働かない要素ですので……なにしろ、魅力のオートバフですから……」

 

「柚希さん自身は、もっと……こう、凜々しいのが理想……」

「ひなたはこのままでもかっこいいと思うんだけどなー」

 

僕は、しゃがみ込んでいるから膝の裏で挟むことになってるスカートの裏地の感触を覚えながら決意する。

 

……絶対、かっこ良くなってやるんだから。

 

あと、どうやらおまんじゅうも何か悪いことしてるっぽいからあとで叱らないとって。

 

「きゅ、きゅひひひひ……!」

 

ちらっとその声の発生地を探ると――あやさんに泣きついて、背中をぽんぽんってひなたちゃんに優しくされて、さらに理央ちゃんに頭をぽんぽんってされてる僕たちの真横でひっくり返ってるおまんじゅう。

 

「……うぅ……おまんじゅうのばかぁ……」

 

……泣いてるとこ、女の子たちに慰められるとか、男として失格だ。

 

この姿に戻っちゃったのもしょうがない。

 

けど。

 

けど、いつか、かならず。

 

……理央ちゃんが「かっこいい」ってつぶやくくらいには、理央ちゃんの好きなタレントさんたちみたいな、かっこいい男になるんだって。

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