ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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372話 学校(校舎丸ごと移転・小中高大統合・みんな引っ越し)の空気がおかしい

「ユズちゃんおはよー!」

「ユズちゃんかわいー!」

「あれがユズちゃんだぞ」

「ああ……!」

 

「俺たち親衛隊――ユズちゃんの巻き添えで高校の全校生徒に最寄りの小中、ついでであやちゃんと優ちゃんの通ってた大学まで有無を言わさず家族ごと転校させられたおかげで、ユズちゃんを至近距離で情報制限無しで堪能できるんだ……」

 

「なにそのしあわせなの」

「ユズちゃんのおかげだよ」

「拝んであげようね」

 

「あ、でもユニコーンは爆発四散するべき」

「この前の配信で飛び散ってなかった?」

「違う違う、シルバースライムに食べられてたんだって」

「え、でも、今ユズちゃんに抱っこされて……おのれ偶蹄類!」

 

「………………………………」

 

登下校と廊下を歩いてるときに噂されちゃうのは、もう諦めてるけども。

 

「学校のみんなが……配信に毒されてる……私の同級生たちまで、最近は……」

「コメント欄の人たちって不思議な話し方するよね!」

 

学校で。

 

なぜか僕たちが――学年も違うのに同じクラスに入れられてるっていう特殊過ぎる環境にも慣れてきた。

 

……代わりにみんながちょっとおかしくなってる気がするけども。

 

「……ほんの少し通っただけで、大学生が高校の制服を着てるっていう痛々しすぎるはずの環境に慣れてしまうのが怖いです……」

「あやさん……分かります。私も、高校では周囲に頼まれて男子の制服を着ていただけに、今さら女性の制服を着ているので……」

 

大人2人――あやさんはまだ未成年で優さんは成人済みだけども――は、いつも具合悪そうにしている。

 

普段からため息が多いし……や、僕が迷惑かけちゃってるのは分かってるんだけどもどうしようもないし。

 

「ぎり未成年と成年女子な大学生の2人が恥じらって……うむ」

「あやちゃんの豊満なボディも、優ちゃんのスレンダーボディも……うむ」

 

あ、でも、僕のクラスの男子たちがいつも変なこと言ってて、女子たちもまた女子で変なこと言ってるのは変わらない気がする。

 

そういやそうだった、毎年のクラス替えで最初はまともなはずだった人たちも、だんだん――きっと理央ちゃんが毎時間突撃してくるからだろうね――変になっていくんだ。

 

「きゅ……」

「ぴ」

 

「おまんじゅう? いーい? 今日は勝手に女子更衣室とかトイレとか行かないでね? さすがの僕も守れないよ?」

 

僕の胸の中で悲しそうな声を上げるのは、なにやら怖いものを見たらしく、いつもふわふわな毛がしょぼんとしているおまんじゅう。

 

……どんなお説教だったんだろう。

ちょっと気になるけども、怖いから聞きたくない気持ち。

 

でも、

 

「クラスの人たちまで、僕のこと『ユズちゃん』って言うのはちょっと……」

 

さすがに恥ずかしいから、とりあえず隣の席――はみんなで占められてるから、たまたま目が合った人に聞いてみる。

 

「いや、それはだな……」

「俺たちは星野が男って知ってるし、できたらそうしてやりたいけどよ……」

 

気まずそうな顔をしながら、小学校からの友人たちだったはずの人たちが言う。

 

「……ほら、俺たち、集団で引っ越してきたから敷地内はみんな守秘義務になってるやつらしか居ないけどさ。普通に買い物とか習い事とか塾で出るわけで」

「そうするとそれなりの確率でマスコミとか配信者に突撃インタビューされるんだわ」

 

「……なんで?」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

「ゆずきちゃん、何割リリスモードとかできないの?」

「僕、そんなに器用じゃないよ」

 

うん、あれは本当に知りたくないことまで分かっちゃうから。

 

たとえばお父さんが、実はお母さんを捨てたんじゃなくって――――――――だからやだってば。

 

「ふんふん。つまり、もうゆずきちゃんの名字まではバレてるけど、男の子ってことはバレてないから」

「ですね。普段の調子でうっかり話しちゃう可能性を考えると、配信とかで使ってる柚希先輩の呼び方にしておくことで、先輩との思い出話とかでうっかりぽろっとしちゃうのを……ってことらしいです」

 

「……僕、別に男とかバレても」

 

良いんだけど。

 

そう言おうとしたら――がしっと、優さんが僕の肩に手を置いてすごい顔をして来る。

 

「柚希さんお願いですから内密にしてください、ただでさえ珍しいテイマー職で珍しすぎるといいますか全世界で唯一でしょうユニコーンを使役し、魔族であるエリーさんを下した上にご自分も実はサキュバスの末裔……か何かで、世界では柚希さんのことを勇者とか魔王とかいろいろな呼び方と取り扱いについて頻繁に議論されているんですそれを毎回胃潰瘍になりながら『柚希さんはただの少女であり、本人は我が国の国民で一生を終える意思があります』と言わされている首相があまりにも可哀想すぎます」

 

「……柚希さんの件のために、今の総理大臣の人……止めるに止められないと言いますからね……選挙も、どなたも代わりにやりたくはないと……」

「ええ……こちらから上げた情報を全部把握した上で、世界に対して嘘をつかざるを得ませんからね……どの政党のトップたちも、それを知っているために余計に……」

 

「「はぁ……」」

 

むぅ。

僕は男でも良いのに。

 

でも、確かに最初からずっと黙ってたのを、今さら「実は男なんです」って言ったところで大騒ぎになるのは――あと、今の話で総理の人の胃が大変なことになりそうなのも、理解はできる。

 

……ちょうちょとか笑われたって、それくらいは分かるんだから。

 

でも、別にサキュバスが男だったとしても良いと思うんだけどなぁ。

ほら、インキュバスさんたちも、あの謎空間に居るし。

 

「……しかし……」

「ああ……」

 

「?」

 

ちらちらと僕を見てきていた周囲の生徒たちが……おずおずと、尋ねてくる。

 

「「……なんでこの前の配信の新衣装で学校来てるの?」」

 

「え、だって今日、打ち合わせあるから着ていこうって、みんなが――はっ!?」

 

僕は、勢いよくみんなを見回す。

 

――朝、僕は新しい服を着させられたのに――みんなは普段の制服だ!

 

「……理央ちゃん?」

「だって、柚希先輩、気がつかないんですもん……」

「やっぱりかわいいもん! 着てこないともったいないよ!」

 

「どうせ夕方にダンジョン攻略のミーティングがあるのは事実ですし……」

「……私は、むしろ今まで気がついていないとは思っていませんでしたよ……?」

 

しまった。

どおりで、普段よりもさらに噂されてたわけだ。

 

学校の空気がおかしいのはみんながおかしいんじゃなくって、や、みんなはもちろんおかしいんだけども。

 

僕の、この――ご飯を食べるときこぼさないように気をつけなきゃな白いワンピースの上に青い頭巾をかぶるっていう、ひなたちゃんが「聖女さまみたい!」って言ってた格好のせいだったんだ……。

 

うん、普段よりもすーすーするし、妙にかわいくてちょっと嬉しかったからおかしいとは思ってたんだ。

 

ただ、その……おまんじゅうがしょんぼりしたりしてたから、つい。

 

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