ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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374話 ブリーフィング

「――1年前のことです。この世界に――11年前にダンジョンという災害に見舞われたこの世界に、明確な外部の存在――モンスターに続く、地球外の存在が出現しました。それが、女神です」

 

教官さんが言う。

 

「女神……」

 

「私も、その配信は見ていました。当時はまだ、あくまで……その。『ちょっとおかしい幼女』として人気だった、彼女の配信を。ちょうど私が、パーティーメンバーたちとダンジョンに挑み始めていたことですので」

 

優さんが言う。

 

「配信……女神様が?」

 

女神様って配信とかするんだね。

意外とフランクなんだね、女神様って。

 

「その女神のことを、星野さん――柚希さんは?」

「1年前って理央ちゃんは受験で、僕は配信そのものに興味がなくって」

 

そういえば最近はみんなに「ユズちゃん」か「柚希先輩」とか「ゆずきちゃん」とか「柚希さん」ってしか呼ばれてなかったから、名字で呼ばれるのは新鮮な気がする。

 

「ひなたも興味なかったかもー。それも、数ヶ月前までは女神様ってわけじゃなくって、ひなたより年下の凄腕の女の子が居るって話だったし……ひなた、まだダンジョン適性できてなかったからね、やな気持ちをその子に向けたくなくって」

 

ひなたちゃんが言う。

 

「私もです。……高校3年になってもダンジョン適性が現れませんでしたから、もう縁がないものと」

 

あやさんも言う。

 

――僕たちが呼ばれたのは、ダンジョン協会の支部のひとつ。

 

そこの――なんだか上品な感じの個室に僕たちは居る。

 

理央ちゃん、ひなたちゃん、あやさんに優さんが、僕の両脇を包む。

 

ちなみにおまんじゅうとチョコの2匹は、エリーさんとお母さんが面倒を見てる。

最近のおまんじゅうは珍しく静かだし、チョコも基本的におとなしいから大丈夫だろうって思って。

 

そして――本当は引っ越す前の、元の家から1時間のとこにあった、あの初心者講習を受けたとこに所属してるはずの教官さんが、「どうせなら知ってる人からの説明の方が良いでしょうから」って理由で引っ張り出されて、僕たちの対面に座っている。

 

久しぶりに会ったけども、あいかわらずに落ち着いた美人さんって感じの教官さん。

いつも通りにびしっとした制服が似合ってるね。

 

「彼女――及び彼女の双神が、現在進行形で異世界、及び……いえ、今は良いでしょう。とにかく、膨大な量のダンジョンやモンスターに関する情報を提供してくれました。それにより全国のダンジョンを詳しく調べ直した結果――通常の戦力では、軍を大規模に投入しないと制圧できない規模のダンジョンが見つかっています」

 

「確か、ダンジョンの最下層――『の下の階層』が発見されているんですよね」

 

「その通りです、月岡さん。通常は20階層ごとに存在する中ボス――その先の、ダンジョンボス。それを倒すと宝箱がドロップし、以後、生え替わりを終えるまでダンジョンは沈静化――出現するモンスターの数が減ります」

 

「ほへー」

「ゆずきちゃん、お口チャックだよ」

 

僕はひなたちゃんに怒られた。

 

「逆に言いますと――放置をすれば、ダンジョン内で増殖したモンスターの数が一定数に達し――やがて、通常でしたら階層間で移動をしないはずのモンスターたちが突如として下の階層から一斉に上を目指し、入り口からあふれ出します。この国の土地は狭い上、人口が多いので大半はなんとかなっていますが、国土の広い国ではそのせいで放置せざるを得ないエリアもあるくらいに危険なものです」

 

「スタンピードというものですね。特に11年前の初期には各地――この国でも見られたとか」

「ええ、ですが近年では――少なくともこの島国では、ほぼ抑えられています。ある程度モンスターを定期的に倒し続ければ、それが起きないと分かっていますので」

 

なるほど。

 

そういえば学校のダンジョン関係の授業で聞いたことあった気がするね、ダンジョンがあふれるスタンピードってやつのこと。

 

そのせいで、11年前に家の前までモンスターが来てた時みたいに――――――

 

「ですが――民間のパニックを抑えるために秘匿されていることですが、国内でも特定のダンジョンは『ボスを倒しても一定の確率でスタンピードを起こします』。その原因が――1年前の、異界よりの女神により判明したのです」

 

「つまり、ひなたたちへの依頼は」

 

「はい。そのひとつを――国も、柚希さんたちを脅威と見なす人々へ、あくまで人類の側に立つ存在だとアピールするついでに、柚希さんたちの戦力でもって、そのダンジョンを攻略して沈静化してほしいとのことです。……そのダンジョンの周辺は完全な立ち入り禁止区域にし、コンクリートの壁で物理的に封鎖していますが、その都度軍が対応するのは厳しいとのことですので」

 

「なるほど。……柚希さん」

「? はい」

 

教官さんが難しいことを言っているなぁって思ってたら、優さんが話しかけてくる。

 

「教官さん――が窓口となっている、今回の、国からの依頼はですね。上級者パーティーを複数だったり軍を大規模に投入する代わりに、柚希さんやお母様、テイムモンスターたちと私たちという戦力で、そこを攻略してほしいということだそうです。魔族――という表現はともかく、通常ではない魔力とテイムモンスターを保持する柚希さんたちなら、少ない数で攻略可能かもしれないと」

 

「なるほど」

 

そっか、お母さんと僕で――確か100体以上のモンスターをテイムしている。

 

や、モンスターだけじゃなくってエリーさんやおやびんさんみたいに魔族のみなさん、サキュバスさんやインキュバスさんもいるけども、とにかく普通のダンジョンなら過剰戦力だもんね。

 

「今回の依頼では、無理をしない範囲で行けるところまでを攻略してほしいと……上から言われています。今の柚希さんたちがどこまでを、通常のコンディションで攻略できるのか。その情報もほしいということですので」

 

「?」

 

「この前とかこの前とかの大変な戦いとは違って、柚希先輩たちの魔力もすごく多いわけではないので、普通に行けそうなところまで行って、ムリそうだなってなったら撤退すれば良いらしいです!」

 

「あ、そうなんだ。分かりました、良いですよ」

 

そうだね。

 

正直、もう何ヶ月も魔力が貯まり続けるし――あとエリーさんには内緒にしてって言われてるから秘密だけど、お母さんと僕はもうかなりの魔力を回復しちゃってるらしい。

 

ほっとくとそのうちにどっかで発散しちゃわないとーってのを……なんか夢で聞いた気がするし、それが本当ならなんとかしたいって思ってたところだし。

 

……うん、魔力が貯まりきると……たぶんお母さんは具合がまた悪くなる。

 

そして僕は、知らなくて良いことまで理解できちゃうリリスモードになっちゃう。

 

それは、やだもん。

 

それに、

 

「ダンジョン……もっと、潜りたいですから」

 

そうだ。

 

小学生の頃からずっとずっとなりたかったダンジョン潜りさんになったんだ。

なら、また新しい冒険に行きたいもんね。

 

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