ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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409話 眠くてお姫様抱っこで寝ちゃった

「――常に数人を護衛につけよ。しかし聖女が気疲れしないよう、適度な距離感を維持せよ。望むのなら寝所では1人にさせよ。可能な限りに娯楽を提供せよ。……他の者にも話は伝わっているな」

 

「皆、心を激しく痛めております。寝取られなんてメではございません……数日は著しいNTRを味わい、手出しする気持ちにもなれないかと」

 

「かわいそうは興奮材料ですが、限度というものがございます」

「無知シチュも大好物ですが、いくらなんでもあんまりです」

「やはり小賢しさだけは優れている人間……腐っていますね」

「聖女様の前です、呪詛は後ほど」

 

「ああ――――――では、聖女よ。今夜はここで失礼する」

 

「はい。あの、お出かけですか?」

 

そんな格好で?

 

すけすけで、お胸もおまたもおしりも見えちゃってるから、エリーさんたちよりやばいんじゃないかなぁ。

 

「――少々の野暮用をな。良き夢を」

 

「あ、はい……行ってらっしゃい……?」

 

挨拶は済んだからか、この後に用事があるらしい吸血鬼のお姉さんが何人かのメイドさんたちと出て行っちゃった。

 

………………………………。

 

あの人たち、何に対してあんなに怒ってたんだろ。

ちょっと怖かったもん。

 

けども。

 

……思ったより、優しい人たちだったな。

 

「………………………………」

 

「!?」

 

えっ。

 

――「僕、帰りたいんですけど」って言い損ねた!

 

「あ、ちょっ、僕、言い忘れて」

 

「はい聖女様、こちらでございます」

 

僕の肩を優しく抱いて、魔王さんのでっかいベッドがある部屋から廊下へ出される僕。

 

そうじゃないんだ、僕は――

 

「あの、えと」

「聖女様。何も、心配することはないのです」

 

「いえ、ですから僕――」

 

「もう夜も更けて参りました。じきに消灯の時間でございます」

 

「え、消灯? じゃあしょうがないのかなぁ……」

 

「ええ、仕方ございません」

「ねんねの時間でございます」

 

修学旅行とかでもあるよね、消灯の時間。

その時間が近くなったら騒いじゃいけないんだ。

 

仕方ない、それじゃ諦めよう。

 

廊下とか部屋もみんなロウソクだし、僕のわがままでつけっぱなしにさせちゃったら……ロウソク代とか請求されちゃうかもだし。

 

や、今の僕なら払えるはずだけども、僕、なんにも持ってきてないから払えないんだ。

 

スマホとか、ボスフロアに着く前に理央ちゃんに預けちゃったし。

だってこんなことになるって思ってもなかったから。

 

もう遅いみたいだし、ここはひと晩寝かせてもらって明日の朝になったら「帰ります」って言おう。

 

あ、ごはん代とかも……ごちそうだったから、理央ちゃんたちが追いついたら払ってもらおう。

 

「聖女様、こちらです。予定を変更しまして上等な方の客室です」

「お足元に気をつけて……そうです、あんよお上手でございます」

 

僕は両腕を優しくメイドさんたちに抱き寄せられ、まるで子供みたいにゆっくりと引っ張られて行った。

 

「聖女様、こちらを。大丈夫です、気持ちよくなる草ではなく、噛めば歯みがきばっちりな草でございます」

 

「ふぁい……しゃくしゃく」

 

……今日はいろいろあって、疲れた。

 

それに最近は――でっかいダンジョンを何十人もわさわさ居る中で、しかも配信してたくさんの人に見られてるってときどき思い出しながら歩いてたんだ。

 

それに、みんなが張り付いてくるから――普段のでっかいベットじゃなくって狭いテントの中だから、寝心地は良くなかったんだ。

 

おまんじゅうを夜中に何回か蹴飛ばしたんだ。

理央ちゃんも何回か蹴飛ばす夜が続いたんだ。

 

だから――たった数人のお姉さんたちに囲まれているって安心感。

 

そしてなんだかふわふわとした感じになって――あ、これ、食べものに盛られてた、えっちな気持ちになるのを勝手に分解しちゃってリラックスしてるんだ。

 

それに、おなかもいっぱいだ。

初めて見る食べものばっかりで新鮮だったんだ。

 

「……くぁぁ……」

 

あくびが出てくる。

涙も出てくる。

 

僕はもう眠いんだ。

 

「ふふ、甘いですね。いい子いい子」

「おや、眠くなって参りましたか?」

「もう少しでございます、がんばりましょうね」

 

……両側から優しく、まるでお母さんみたいに優しく抱きしめてくれながらだったから、途中から眠くなり過ぎて。

 

脚に力が入らなくなったけども――脇の下を優しく抱き上げてくれて、膝の下にも手が差し込まれて。

 

「……すぅ……」

 

「かわいいですね」

「かわいいですね」

 

「歩きながら起きていられなくなるのですね」

「ええ、赤子のような可愛らしさですね」

「やはり見た目通りに10にも届かない幼子なのですね」

「それなのに、世界どころか人間たちの悪意を一身に……」

 

「……ですが、私共と一緒で、こんなにも安心してくださりました」

「体を、こんなに軽い体を……預けてくださいました」

 

「小動物は、安心できる相手でないと真横で寝られないと聞きます」

「この寝顔を守り抜かねばなりませんね」

「なりません」

「こんな子供に発情していましたのが罪悪感としてあふれてきます」

 

「仕方ありません、淫魔による――恐らく、非道い目に遭う聖女様を見ていられず、せめてもと気持ちよくしてあげようと同情されての淫気でしょうから」

 

「なるほど」

「淫魔なら仕方ありませんね」

 

「非道な目に遭うも、毎回記憶を消されるも、せめてその苦痛が和らぐように……きっと、そのために。城の外で我が軍と膠着状態になっています彼女たちを受け入れるよう、主様に進言してみましょう」

 

「聖女様……今晩だけは、絶対に安らかに」

「この魔王城に住まう限り、意思に反した一切がございません」

「どうか、いつまでもご滞在くださいませ」

 

うとうとしてるあいだ、抱っこされながら気持ちいいリズムで揺られてるあいだ、そんなことをみんながささやいてた気がしたけども――僕は眠くって、そのうちに溶けちゃった。

 

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