ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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416話 起き上がる乙女

「……んじゃ、夕飯作ってるねー」

 

「ユズちゃんのお母さん――って言っちゃいけないんだった、ユズちゃんのおねえさんが今夜はカレーにするって言ってるから、先に買い出ししてくるわー」

 

「でもなんでユズちゃんがユズくんなの言っちゃダメなのはまだしも、ユズねぇがユズママってダメなんだろ?」

「さぁ?」

 

「世の中の男どもと、同世代以上の女のメンタルが壊滅的被害受けるからよ……うぅ、なんで私より10以上年上な経産婦があんなロリロリしいぴっちぴち肌なのさ……」

 

「ぐふっ」

「あ、あれは半魔族化とかいう例外だから……」

「私はまだ若い……ぴちぴちのJDなのぉ……!」

 

きゃぴきゃぴと――普段の何割増しで明るい声が、出て行く。

 

「………………………………」

 

『――国連安保理は全会一致で、当該魔王を人類の敵と認定。段階的に使用武装のランクを上げると通達。去年に2発使用された対ダンジョン特化型戦略ミサイル――そして戦術核、そして戦略核と事前の通告を行った上で――』

 

「――ね。ゆずきちゃん、今ごろ何してるかな」

 

「……ぐす、ひなたちゃん……?」

 

急に――柚希と遊んでいるときのような幼い声を出したひなたに、理央の瞳が開く。

 

「……そうですね。きっと、何かを誤解した魔王さんと……柚希さんのことですから、ご飯でも食べているでしょうね」

「……あやさん……」

 

あやも――落ち着く優しい声で、意識しているのか低めの声で、ゆっくりと語る。

 

それは、まるで――。

 

「ね、あやちゃん。ゆずきちゃん……今ごろ、何食べてるのかなぁ」

 

「柚希さんは子供舌ですから。きっと異界の食材でも『これはピーマンみたいだからやです』とか『油断したけど、これタマネギ!?』とか涙目になりながらも食べて、魔王さんやメイドさんたちを困らせているはずです」

 

「あははっ。ゆずきちゃん、好き嫌いあるもんねぇ」

「ええ、そこがかわいらしいのですが……ふふっ」

 

「でも、絶対残さないようにがんばるよね。えらいもんね」

「さすがに吐きそうなときはぺっさせますけどね」

 

あやとひなたが――そっと、理央へ優しい視線を向ける。

 

「……はい、きっと」

 

理央は、震えながらも返事を絞り出す。

 

「で、きっと女の子にしか見えないからお風呂にも誘われるんだろうね」

「ええ、間違いありません」

 

「だって、ひなたたちもお風呂に突撃するまで、ぜーんぜん思いもしなかったもん」

「ええ……とても可憐ですから。この目で……その、見るまで。絶対、信じられなかったでしょうし」

 

「………………………………」

 

2人の――普段するような、ありふれた会話に……理央の瞳へ光が入ってくる。

 

「それで、どうにか『ひとりで入りたい!』って駄々が成功してほっとしてるか」

「魔王さんやメイドさんが入ってきてしまって……『聖女なのに男の子!?』って」

 

「バレなくても問題ないし」

「バレても……代わらないでしょうね」

 

「……ふふふっ」

「くすくす……ええ、きっとそうです。柚希さんなら」

 

「……えへへ。――そう、ですね」

 

涙を拭った、腫れぼったいまぶたを持ち上げ――口元は笑みを浮かべた理央が、言う。

 

「きっと、あのお城で大騒ぎを起こしているんです。だって、柚希先輩ですから」

 

その顔には――もう、絶望の色は存在しない。

 

「そうですよ、魔族の方を2人も――魔王に匹敵する2人をテイムして、他にもたくさん、ご自分の魅力で仲間にした人なんです」

 

「絶対に、魔王さんたちからも優しくされてるよね。それに、あの人たちみーんな女の子! 1日ごとに何人好きにさせちゃってるか」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

「……えへへっ」

 

「ふふふっ」

「あはっ。りおちゃん、元気出た」

 

「――はいっ。もう大丈夫です。それで2人ともっ」

 

理央は――満面の笑みを浮かべて、未来を語る。

 

未来を断言する。

未来を断定する。

未来を確定する。

 

「――どんな準備をして、いつ――柚希先輩を助けに行きますか? きっと、大変なことになってるはずなんです。柚希先輩が――かわいいのに、肝心なときはかっこよくなって……女の子をめろめろにしちゃう、あの人が」

 

「今はきっちり休んで、そのあとに行かないとね!」

「ええ……きっと、助けに行ったらきょとんとされますから」

 

3人の乙女たち――妻たちは、空を見上げている。

 

ちょうど爆撃機の編隊が夕暮れに飛行機雲を描きながら向かっていく、その先を。

 

 

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

「あなたたち、夜間の巡回は」

「そんなことよりも聖女様の安全です」

「当然です」

 

「と言いますよりも……なんでしょう、この香り」

「聖女様のかぐわしさでございます」

「脳に響きますね」

「響きますね」

 

「しかし、まだ夕方だというのにぐっすりと……相当にお疲れだったのでしょうね」

「おいたわしや聖女様……」

「なぜでしょう、妙にむらむらと……いえ、我慢でございます」

「舌をかみ切ってでも我慢せよと主様の言葉です」

 

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