ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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15章 「聖女」を巡る、人類と魔王の戦い@出海道
414話 戦争前夜


「国家の大事と言っても、今回のそれはまだ解決の見込みが存在するレベル。出海道も避難が順調で、その後しばらくはあの大地の上でしか戦闘は起きない。あれを押し込めたなら、被害は土地、建物、山、海だけ――取り返しのつかないものでは、ない」

 

「まぁ取り返しのつかないいろいろはあるが……何、人命に勝るものはないよ」

 

「人あっての国――それは、11年前から忘れていない」

「人さえ在れば、この国は何度だって立ち直れる……ああ、私もあの日、ダンジョン化した空間で死を覚悟した身だ、よく分かっているよ」

 

「つまり――あの魔王が他の土地へ進出する前に、『ユズちゃん』を守りたい人間が一丸となり、救出――ないしは魔王を『説得』『交渉』する。……1時間後にプレスリリースする、閣議の決定事項だよ」

 

「これは、合衆国に国連安保理へ既に通達し、了承を得ている事項だ。ああ、『すでに決定している』。――世界中の人間が、人であるからこそ……ということだ。ま、『ユズちゃん』を巻き込んだ攻撃をしたとなれば、その国のトップは政権から引きずり下ろされるっていう事情もあるだろうがね」

 

「……あ、はは……」

 

すとん、と椅子に崩れ落ちる優――その顔は、安心と呆然が入り交じっていて。

 

「……皆様に、感謝を」

 

深々と頭を下げる、教官の彼女。

 

――ああ、良かった。

この国の政治家は――柚希さんを、見捨ててはいなかった、と。

 

「「「………………………………」」」

 

「「?」」

 

「……ところで……」

「そのぉ……」

 

と。

もじもじとし始める「おじさん」「おばさん」「おじいさん」「おばあさん」たち。

 

「成功報酬と言っては何だが……」

「あ、これ、オフレコだからな? 良いな?」

 

「は、はい……何でしょう」

「私たちにできることであれば……」

 

――成功報酬。

つまりは、柚希救出を優先するという、国家の動向そのものの見返り。

 

――一体、こんな小娘に何を――――――?

 

「……実はな」

「はい……!」

 

――ごくり。

一気に冷える、手足を感じる。

 

「私たちはだな……」

 

「ええ……柚希さんのためなら、どんなことでも」

 

2人は、「最悪の要求」までを思考し――「柚希さんのためなら」と、自分の身や家族に被害が出るだろう事象までも、即座に決断した。

 

だが――――――。

 

「……その、ユズちゃんとのツーショット」

 

「「……は?」」

 

「いや、その、な? 孫がユズちゃんの大ファンでな?」

「あ、ずるいですぞ総理! 私と私の娘も! 反抗期なんです!」

 

「私にはサイン色紙を……」

「その……耳元でささやいてもらうとか……」

 

「政府広報の一環として! ユズちゃんにダンジョンを案内してもらう映像を……もちろん私も同行して……」

 

「「……えぇ……」」

 

ごく一般的で現代的で女子的な感性を持った2人は――同時にあきれた声を上げてしまった。

 

「うちの娘がな? ユズちゃんの……なんだったかなぁ」

「総理、定点配信に紛れていたあのときでは?」

 

「そうそう! 謎の幼女として映ったときから、ずぅっと追っていてな……!」

「ご存じかとは思いますが、総理の末娘は現在10歳で……ええ、クラスの子たちと、毎日『ユズちゃん』の話を」

 

「それで、まさかのテイマー適性があってなぁ……」

「偶然か、それとも……ですが」

 

ぴたりと止む会話。

 

室内に、空調の音だけが響く。

 

「「………………………………」」

 

疲れ切った大人たちの、なぜか輝いている目が――それに引いている乙女たちの顔に向けられている。

 

「……分かりました。みなさんの要望は、柚希さんが戻ってきたら彼に直接頼んでみます。まぁおそらく、全てOKですが」

 

気を取り直した公務員の彼女は真顔に戻り、上司から無茶ぶりをされたときに予防線を張りながらも頷くしかないあのときの気持ちを思い出しながら、告げた。

 

「「「……おぉぉぉおおおぉ……!!!!」」」

 

会議室の重鎮たちが、スタンディングオーベーションをする。

壮年の男性たちの額が、きらきらと輝く。

 

「きょ、教官さん……! 仕方ないとはいえ、そんな二つ返事で――」

 

「優さん? 『通常の範囲での依頼を、しかもお礼でのそれ』を、あの子が嫌がると思いますか? しかも、明らかに好意的ですよ?」

「……い、いえ……ないと思いますが……」

 

公務員という年功序列の世界で、わずか数年とはいえ揉まれたしたたかさを見せる教官に、やはり自分はまだ子供だと思わされる優。

 

「――と、いうことですので。全ては、成功報酬ですが……私が、説得します。柚希さんでしたら、説得するまでもないでしょうが」

 

弱冠二十数歳の彼女の声が、会議室に響き渡る。

 

「柚希さんを、無事に奪還。かつ――おそらく彼のことですから、可能な限りに魔王を説得、ないしは極力傷つけずに穏便に別世界へ。それが達成されれば――サインでも写真でも映像でも、お望みのままです。……信じてもよろしいので? この国の政治を司る皆様」

 

「――おう」

「任せとけ」

「40年の政治家人生をかけて」

「愛する娘に誓って」

 

「11年前からずぅっと、モンスター駆除と利害調整には慣れてるんだ」

「何、あんときに比べたらこんなのはお茶の子さいさい。……ホワイトハウスと話してくるよ」

 

「……怖ーい顔のみなさんが、こんなにお茶目だとは思いませんでした」

「わ、私もです……政治家とは、もっとこう……」

 

脱力しつつも恐縮しきる乙女たちは、深い安堵の息をついた。

 

「でも、これで柚希さんを」

「ええ。彼の安全を心配することなく、戦えますね」

 

そして開いた目には、光が灯っていた。

 

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