ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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420話 「聖女」を護る意思

「これで一件落着と……あ、そうそう。コレ、俺の『個人的な友人たち』にもお願いして良い?」

 

相手が油断したところで、首相からの『ついで』の要求。

そのずる賢さを理解しつつも――笑顔で聞くしかない2人。

 

「はぁ……柚希さんが対応できる範囲でしたら……ですよね?」

「はい、救出後は忙しいでしょうし、しばらく時間を置いても良いのでしたら、私からも依頼できます。あくまで彼ができる範囲で。それで、良いのでしたら」

 

「そうかい。ありがとう、嬢ちゃんたち」

 

そう、この国の行政上のトップは笑顔で言うと――そのまま、襟の内側に挟んでいたマイクへ、声の限りを尽くして叫ぶ。

 

『――聞こえたか、お前ら! そんなわけで、だ――「囚われの姫<princess>・ユズちゃんのご機嫌損ねない作戦」なら大賛成だと同志を扇動せよ!』

 

『『――おぉぉぉぉぉ!!!』』

 

「「!?」」

 

マイクの相手が、彼のポケットの中の端末から――盛大なハウリングを起こしつつも、留まることのない雄叫びを上げている。

 

「……は?」

「え、英語……? 一体……?」

 

「ははっ、悪いね。この国はこの国だけじゃやってけなくてねぇ」

 

――ぴっ。

 

ガラケーの通信をオフにした、トップの彼は――したたかな笑顔で言う。

 

「――ちょいと、各国の『仲間』たちにもハッパかけてやったのさ。……ユズちゃんには、サインだけでも数百枚がんばってもらわにゃならねぇが……どうせ堕としたはずの、あの魔王っ子すら助けるんだろう? なら、これくらいのエサがないと――人ってのはバカだから、団結できないのさ。ま、バカだから団結できるんだが……ね」

 

 

 

 

「………………………………」

 

つんつん。

 

「……うみゅ……」

 

「………………………………」

 

――つんつん。

 

「ふぁぁ……」

 

「「………………………………!!」」

 

メイドたちの顔が、歓喜に包まれる。

 

「なにこのかわいいいきもの」

「聖女様です」

「ユズ様、とおっしゃる模様です」

「聖女ユズ様ですか」

 

「かわいらしいですね」

「かわいらしいですね」

「純真無垢ですね」

「小動物ですね」

 

「本能が疼きます」

「ええ、疼きます」

「母親です」

 

「ええ、母としての本能が」

「主様への、女としてのではなく」

「生殖ではなく、子育ての本能でございます」

 

「まぁ私共のうち半数は主様と生殖行為はしていないのですが」

「主様に命令されるなら仕方なくするとは思いますが、半数も居れば満足されますので」

「単純にローテの順番が回ってこなかったのもあり、もどかしかったのもありますが……」

 

「しゅぴぃ……」

 

「ですが」

「する気が無かった理由がわかりましたね」

「せずに良かったとも思いますね」

「繋がりましたね」

「繋がってしまいましたね」

 

柚希に与えられた寝室――そこはかつて、この城の主が妻に与えていたもの。

 

質実剛健ではありつつもそこここに当時の流行を反映した、孤独な城での生活の慰めにと調度品からカーテンから天蓋から何まで贅を凝らした――妻への愛を語っている部屋だ。

 

その特大のベッドが幾年ぶりかに迎えた主は、とても幼く、可愛らしい存在。

 

とても、か弱く儚く――尽くし甲斐のある、存在だ。

 

「……こんなにも、愛らしい方を」

「人間には心というものがないのですね」

「許すまじ、人類」

「殲滅したくなりますね」

 

「ですが、彼女もまた人間です」

「仕方がありません」

 

「種族を選んで産まれることは能わず、ゆえに種族で決めつけてはいけない――とは、主様の言葉です」

 

「我ら魔族にも魔王にも、駄目駄目なのは大勢居ます」

「人間を、人族を一絡げには――そういうことですね」

 

――メイドたち十数人がその周りをぐるりと取り囲み、横から上から下から愛でる。

 

代わる代わるに頭を撫で、頬をつつき……まるで寝ている子猫か何かを愛でる光景と化していた。

普段は無表情に近いメイドたちは皆、一様にとろけきった顔をしていて。

 

「……このような顔、主様と致すとき以外ではしませんのに」

「やはり、母性……」

「はしたない気持ちとは別の、あたたかな……」

「これも、愛――その中の、庇護欲」

「愛にも種類があるのですね」

 

「――私は、この方にお仕えしたいと思います」

 

ぽつり、と。

 

メイドを統べる彼女が……伏せた睫の下で言う。

 

「……貴女も、主様と」

 

「ええ。皆が皆、主様とぐっちょんぐっちょんではいけません。いざというとき、恋愛感情無しに否を突きつける存在として、距離を置いていましたから。まぁ、なぜかそういう気が起きなかったのも事実ですが」

 

「……聖女様のご意向次第では、主様と敵対することも。よろしいのですか?」

 

ぽつり。

 

柚希の世話役に命じられた彼女たちが、彼女へ目を向ける。

 

「構いません。――そも、同族であるはずの人からもひどい仕打ちを受けたお方です。せめて、誰か1人は絶対的に愛する存在が必要かと。何があろうと、絶対的に受け入れる存在が。たとえその体に目を背けたくなる傷跡があったとしても」

 

「肯定します」

「当然です」

「私たちも同意します」

「聖女様――ユズ様が、どのようなお姿になろうとも、この身、果てるまで」

 

「……ありがとうございます」

 

「――全体会議、終了。可決しました」

「メイド会議は主様の女になった半数と分離」

「ただし、引き続きメイドの長は続けてもらいます」

 

「この城を制御しています主様からも、『私を殺しに来る以外なら全てを許す』……とのことです」

 

「……感謝を」

 

1人1人へ、頭を下げる彼女。

 

その瞳には――庇護すべき存在を守ることができるという嬉しさに、あたたかい液体が満ちていた。

 

「ふにゃ……えへ、りおちゃん……」

 

慈愛に満ちた声に包まれ……「聖女」は、そんな寝言を呟いた。

 




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