ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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439話 【悲報・みんなかわいそう】

【! エリーちゃんエリーちゃん! お城の入り口! なんか動いてる!】

 

【ずっと止まってたこっちにも動きが】

【こわいよー】

 

「………………………………!」

 

――ぎぃぃぃ。

 

重い音を立てながら、城のメインの入り口と思しき巨大な扉――優に10メートル、あるいは20メートルの高さのある木と鉄の板を左右に押し広げながら、中から誰かが出てくる。

 

【お】

【モンスターが引いていく】

【城前に陣取ってたやつらが】

 

かつ、かつ。

 

固い足音が、石畳を鳴らす。

 

「お、あいつら逃げてくぜ! エリー、どうすんだ?」

 

「逃げるというよりは、私たちとの戦闘を中止して配置転換を……まさか、こちらの魔力の供給を断ったから……?」

 

たどり着いたときから半減したワイバーン&淫魔部隊(+キマイラ)は身を寄せ、敵の出方を探る。

 

――だが。

 

かつん、かつん。

 

メイドがただひとり――いくら強くとも多勢に無勢は分かっているはずなのに、立ち止まることもなく近づいてくる。

 

そのたたずまいは、完全に無風。

一見、最も脆弱に見えるたたずまい。

 

「……最大限の警戒を」

「ああ……! なんだか知らねぇけど、やたらと気迫を感じる……!」

 

でも、そんなはずはあるまい。

 

そう考え――彼女が秘める戦闘力、周囲の空間からの――敵地でのアンブッシュを警戒し、持てる力をすべてと覚悟を決めるエリー。

 

【何があった】

【ユズちゃん……やっぱお高い花瓶とか粉砕しちゃった……?】

【草】

 

【請求書を届けに来たか】

【おなかいたい】

【さすがにそんなユズちゃんな理由じゃ……ないよね?】

 

そして、距離が充分に近づき、エリーたちの緊張感が高まりきったところへ――

 

「――申し訳ございません! 聖女様が……聖女様が! どうか、ご助力を……!」

 

――柚希を誘拐したはずのメイドが、泣きはらした声で、助けを求めてきた。

 

もはやそこには、柚希を攫ったときの凜とした調子はみじんも存在しなかった。

 

【あのときのメイドさん】

【あーあ】

【やっぱそうじゃねーか!!】

【ユズちゃん……どうして……】

【草】

【すでに結論が出てて草】

 

【ちょうちょだからね……】

【まず間違いないもんね】

【親衛隊も頭を抱えます】

【草】

【なぁにこれぇ……】

 

「申し訳ありません申し訳ありません、こちらこそユズ様がご迷惑をおかけしまして」

 

慌てて警戒を解いたエリーは駆け寄り、すでに下げられているメイドの頭――首筋を敵に晒すという行為をしている存在に対し、同じく頭を下げて詫びる。

 

――謎の義憤とはいえ侵攻先の敵、しかも魔族であるエリーだ、不意打ちでなくとも厳しいのは相手も理解しているはず。

 

なのに、少なくとも1撃の先手は譲っている。

 

痛手を被るのは必須――なのにここまでする相手に、どうして警戒していられようか。

いや、いられまい。

 

エリーは、相手に深く同情した。

 

「いえいえそんなことは! そもそもあのお方を攫ったのは私共で!」

「いえいえ、ユズ様は……その、通常時はとにかく警戒心がないので……」

 

「いえいえ、一瞬でもあのお方から目を離してしまった監督不行き届きで……!」

「いえいえ、それを言うのでしたらワタシもユズ様から目を離したので同じく監督不行き届きで……!」

 

「いえいえいえいえ……」

「いえいえいえいえ……」

 

謝罪の応酬はループに入る。

 

それを止められる手段は――存在しない。

 

だって、すべてが悲しいのだから。

 

【草】

【エリーちゃんとメイドさんがひたすらに謝っている】

【ユズちゃん! 何したの! 言いなさい!】

【たぶんなんにも分かってないと思うよ】

【いつもの味のあるちょうちょな顔で眺めてるだけだと思うよ】

【草】

 

【あの、下、理央様たち、今ものすごい勢いで攻略しながらここ目指して……えっと、めっちゃシリアスで……不退転の覚悟でぇ……あやちゃんとか、悲壮なくらいでぇ……】

 

【あっ】

【草】

【あーあ】

【この温度差よ】

【どうしてこうなった】

 

【……とりあえず攻略組には黙ってようぜ!】

 

【そうだな!】

【指揮どころか作戦の根幹に関わるからな!】

【こんなん聞いたら脚の力抜けちゃうもんね!】

【脳が……とろける……】

【こんなん正気を保つ方が無理なんよ……】

【草】

 

【まぁ教官さんとかお偉いさんにはリアルタイムで伝わってるだろうし、それよりもエリーちゃんのメンタルの方が心配だもんな!】

 

【それな!】

【ユズちゃん……どうして……】

 

 

 

 

――ずしゃあああっ。

 

全速力で先陣を切りながら駆けていた優が――思いっ切りスライディングをしながらすっ転んだ。

 

「……! …………!!」

 

そして悶えている。

 

ダンジョンの床へ、顔から行ったのと――なによりも、耳にした情報でのたうち回っている。

 

「優さん!?」

「先ほどの攻撃で麻痺が脚に残って!?」

「すぐに治癒魔法を! 救護班!」

 

【草】

【あーあ】

【うん……】

【しゃあない】

【かわいそう】

【かわいそう】

 

「何があったんですか!?」

「あやちゃん、落ち着いて」

 

優に駆け寄る、あやたち。

その周囲を警戒して展開する部隊。

 

だが、コメント欄の調子は――例えるなら、子供が目を離した隙に何かをぶちまけた被害の報告から目を逸らしたいようなもので。

 

【いや、その……】

【えっと……】

【なんにもないってことで】

【そうそう】

 

【指揮官の優ちゃんだけ知ってれば良いことだから……うん、本当に……】

【むしろみんなは知らない方が幸せっていうか……】

 

「あっ……柚希先輩が……」

 

理央は、すべてを察してしまった。

 

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