ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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442話 お父さんは、勇者

『決めよ、切り捨てよ。勇者ならば、可能なはずだ』

 

魔王さん。

 

お父さんへ――途中がよく分かんなかったけども、11年前のあの日に死んだはずの町の人たちを「生き返らせる選択」と「生き返らせない選択」を迫っている。

 

お父さん。

 

……僕なら絶対選べないはずだけども、でも、僕が「大好きだった」お父さんなら――

 

『でしたら、私が認識する「地元」のすべての人々を、この世界へ』

 

『それ以外の輩は』

『切り捨てます』

 

ひとこと。

 

たったのひとことで、はっきり告げるお父さん。

 

『……それ以外も含めての「全部」というのは――貴女の望む答えではないはずですし、勇者という過分な評価とはいえ、しょせんは人間の1個人。しかもこの世界へなんら影響力のないただの平民……私の価値もそこまではないはず。対価として釣り合うラインは、ここだと考えます』

 

『………………………………』

 

しん。

 

戦場に漂う煙が流れる。

 

『それに、私が切り捨てる彼らは、異境の地でも神族――神々に救われるのでしょう? つまり死ぬわけでもなく、あくまで遠いところに行くだけ。――なら、そこから先は彼らの選択です。残酷な目に遭うのならともかく、そうでないのならこれで充分――私の個人的な願いを叶えた残りで充分。それそれ以上は欲というものです』

 

お父さんは――たぶん、すごい選択をした。

 

すごい力を持ったすごい魔王さん相手に、すごい交渉をして。

それは、お母さんとか僕にはできないはずの選択だ。

 

男らしい、かっこいい選択。

小さいころの僕が憧れた選択。

 

『――「なぜ助けてくれなかった」と、彼らに恨まれたとしても?』

『はい。私は私の「正義」を信じ、その言葉へは断固として臨みます』

 

――やっぱりこの魔王さんは、昨日会った人じゃない。

 

だって昨日の子はもっと優しくて、それに――どこかで会った、懐かしさがあったから。

 

「お父さ――――――」

 

――ぐらっ。

 

世界が歪みかける感覚。

 

「……え、なに、これ……」

 

お父さんのことを考えようと/思い出そうとすると、頭の中がぐにゃぐにゃになりそうで怖くなる。

 

『なぁ、柚――――――!?』

『……ほう。貴様も見えるか』

 

「?」

 

お父さんが、僕を見ている?

 

目を見開いて――片腕で支えているお母さんを、取り落としそうになってまで。

 

なんで?

 

だってこの場面は、11年前のはずで。

 

『……柚希』

 

ふっと――お父さんの、かっこ良くて優しい顔が、ほほえむ。

 

お父さんが、「僕の隣に居る僕」を見ている。

そして――「みんなを眺めている僕」を見ている。

 

「お父さ――――」

『お父さ……ん?』

 

思わずしゃべりかけた瞬間に、僕の真横で僕の声がする。

僕は、その声の主を見る。

 

「――――――……」

 

そこには――そうだ、これはお母さんの血だ。

 

そうだ、僕は見ていた。

そうだ、僕は聞いていた。

 

お母さんが、崩れた家の中で、僕のことをずっと「大丈夫だからね」って言いながら抱きしめてくれてたから――僕は血まみれだけど肘をちょっと擦りむいたくらいで。

 

その日もお母さんのいたずらで女の子の服を――当時はまだお父さんが居たし、お母さんもお薬代で家計が苦しくなかったから普通に服も買えてた、新品のかわいい服を着させられていて。

 

でも僕は、それが嫌じゃなくって。

そんな僕のこと、お父さんも笑いながら見てて。

 

そうだ、このときも僕は――――――

 

『お母さんのこと……お父さんに代わって、頼んだよ。みんなと、守ってくれ――ああ』

 

ふっ、と――お父さんが笑う。

 

『――大きく「なる」んだなぁ……母さんそっくりに』

 

「お父さ――――――」

 

――最後までは、言えなかった。

 

ひとことだけ言って――お父さんの姿が消えたから。

 

きらきら綺麗な、光の泡になって。

 

『――勇者の娘よ』

 

そんな僕を。

 

振り向いた魔王さん――のそっくりさんは「このときここに居た僕」と「今ここに居る僕」を見ながら、優しく言う。

 

『貴様は、親に愛されているのだな。ああ、羨ましいほどに』

 

彼女は、かつ、かつ、と歩いてくる。

 

『我らは親を持たぬ。だが――』

 

僕の横の幼い僕は、ぎゅっと身を縮めて怖がっている。

幼くない僕は、ただじっと、彼女を見つめる。

 

僕は、怖くない。

 

だって、この人の顔は――僕たちに向けるそれは、まるで。

 

――ぽん。

 

彼女の両手が――かつての僕と今の僕の頭へと、置かれる。

 

『忘れろ。1度目に、そして2度目に。そして、助かる母親と村――というには少々広いか……とかく、お前の馴染みの人間たち』

 

ぽわぁっ。

 

頭が、ぼーっとしてくる。

 

『――勇者が、妻と同等に……いや、違うか。「もし天秤にかけるのなら、お前を取る」と言っている――子供。もう父親と会わせてやることは叶わぬが……母親と助け合って生きろ。……ほら、お前と結ばれる縁の者が来たぞ――む? 雌同士……まぁ良い、そういう愛もあるだろう』

 

僕はふわふわしている。

 

そんな僕を――気がついたら僕の真ん前に来てちょっとしゃがみ、僕の目をじっとのぞき込んでいる魔王様。

 

とっても綺麗な人。

昨日会った人よりも――古い人。

 

『……ふ、ははははは……!』

 

魔王さんは急に笑う。

僕はちょっとびっくりする。

 

『ああ、悪い悪い……だが成る程成る程、勇者が娶る相手だ! 勿論普通の存在ではなく、その子もまた普通ではない! ははは! 成る程、母親の「性」と父親の「勇」を併せ持つか! これはきっと――いや、いい。さあ、すべてを忘れ、庇護されよ――幼体は種族関係なく、須く護られるべき存在だ』

 

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