ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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456話 楽しい空の旅(真っ暗)

「       」

 

「きゅひひひひひ……」

 

【あーあ】

【かわいそうに】

【理央様、まーた目を開いたまま気絶してる……】

【そらそうよ……(n回目】

 

【まさかひっくり返って蠢くユニコーンに癒される日が来るとはな……】

 

【※なぜか駄馬のツノが配信機材の定位置なので、画面の下に草原のごとくもっさり生えている白い毛しか見えません】

 

【草】

【それでも感動した】

【ああ、あの白目を見なくて済むからな……】

 

【人生って何があるか分からないね】

【急に生き返らないタイプのセミファイナルだから安心して眺めていられるね】

【どうやらメイドちゃんのおっぱいの感覚のせいで昇天したままみたいだもんね】

 

【爆発四散……しなくていいや……】

【うん……今くらいは、こんなどうしようもない存在でも役に立つんだなって感心しとこうか……】

 

コメント欄は、優しかった。

 

「      」

 

「   ……?」

 

意識の1%ほどが――目の端に映る不可思議に吸い寄せられた理央が、視線を上げる。

 

――巨大なミラーボールが……回転している!

 

しかもところどころ中がカラフルに明滅し、しかもよく見れば地球の自転軸のように――軸が傾いている!

 

その傾いた自転軸が――公転している!

 

「      」

 

「      」

 

「              」

 

理央は、意識を自ら手放した。

 

【おやすみ……】

【安らかに眠れ】

【R.I.P. 理央様】

 

【とりあえず、ウルトラミラクルミラーボールな展開によって、なぜか魔王っ子ちゃんと意思疎通どころか情報共有に危機感も共有して共闘態勢に入りはしたが】

 

【ひとまず人類侵攻は止まったが……】

【そら、ほっといたら魔王たちの世界ごとだし……】

【めっちゃ理性的な魔王軍でよかったねぇ、本当に……】

【ああ……】

 

【けど……】

【ああ……】

 

【ここからどうしようねぇ……】

【ユズちゃん、今ごろ楽しくひらっひらしてるからねぇ……】

 

【あのミラーボールの中で?】

【あのミラーボールの中で】

 

【魔王ちゃんでも辿れない場所で?】

【魔王ちゃんでも辿れない場所で】

 

【羽ばたいてるの?】

【羽ばたいてるよ?】

 

【草】

【草】

【もうだめだ……】

 

【もう多くは望まない  だからユズちゃん、もう何もしないで出ておいで……大丈夫、ここまでやらかしたらもう誰も怒る気力すらないし、魔王軍も何もしないで撤退するって明言したから……だからお願い……隠れてないで、隠れた先でやらかさないで、そのままそのまま出ておいで……】

 

 

 

 

ばっさばっさ。

 

ばさばさぱたぱた、ぱたばさぱたばさ。

 

「んー……?」

 

僕は、羽を自由に広げて好き勝手な方向に飛んでいても誰からも怒られないっていうことに気がついて、のびのびしている。

 

誰にも何も言われないで、何をしていても誰にも見られない。

 

本当に気が楽で、嬉しい時間。

 

「……いつもこうだったら良いのになぁ」

 

いつもだったら?

 

絶対理央ちゃんがくっついてきて止めてきて、あんな格好しといて根っこは真面目なエリーさんも止めてくるし、他の人もみんなで僕が好きに動こうとしても必死な顔になるんだ。

 

「僕はただ、お母さんの体のために働きたかっただけなのになぁ」

 

――本当は、たぶん、違うんだ。

 

僕はただ、僕のわがままをしたかっただけ。

 

なぜか小学校の後半から伸びなくなった身長、いつまでも生えてこない、同級生たちみんなにはかっこ良く生えてる体の毛もなくってつるつるで。

 

そのせいでいつまで経っても知らない人からは小学生扱いで、おじいちゃんおばあちゃんからは飴玉とかもらっちゃう見た目で。

 

だから、僕は男らしくありたかった。

だから、僕は大人らしくありたくて。

 

――だから、お母さんの体がとっても悪くって、どんな病院に行っても首をかしげられてみんなから違う診断を受けて。

 

「そういう病院の関係者です」って人から電話とかぴんぽんとかが来て、「こういう治療法がありますよ」「ちょっとお金はかかるけど必ず治りますよ」って言ってきて。

 

でも――僕は、「お父さん」みたいにお母さんを守りたくって。

 

だから、怪しいものから――たぶん正しいだろうものまで、ぜんぶぜんぶお断りして。

 

それは、後で聞いたら正しい対応だったらしい。

 

けども――そのついでで市役所とか学校の人が「こういう制度がありますよ」「ダンジョンの影響かもってことにすれば、こういう保護も受けられますよ」って、思わずうなずきたくなるような条件の、細かい字がいっぱいの紙を見せられても、やっぱり断っちゃって。

 

でも、お母さんが「ゆずに任せるわ」って言ってくれたから、僕は僕を止められなくって。

 

――だから、効率は悪すぎるし、そもそもウェイトレス――じゃないじゃない、ウェイターなんて必要ないお店とかでも、頼み込んでシフト入れてもらって、毎日疲れるから「働いてる」って実感があって。

 

……そこに通ってきてくれてたご近所さんたちも、僕のためにってお野菜とかお米とか――僕がお金だけは受け取らないって知ってるから、お菓子とかジュースとか、あとは期限がすぐ近くの商品券とかをくれたりして。

 

「……わがままして、好き勝手して……でも、楽しかったんだ」

 

久しぶり過ぎるくらいにひとりぼっちで居られているからか、いろんなことを思い出してはちくちくってなって。

 

でも――そんな時間が、心地よくって。

 

……心地、良すぎたから――

 

「み゛ゃっ!?」

 

ごつんっ。

 

僕は何かに思い切り頭をぶつけて落っこちた。

 

――かちり。

 

床に凸っと出ていた何かをおしりで踏んづけた覚えはあるけども、そんなことよりもおでこを思いっ切りぶつけた僕は、それどころじゃなかった。

 

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