ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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459話 「聖女」降臨

「      」

 

「    」

 

………………………………。

 

……それにしても、子供だからだけども。

 

「ふふっ、かわいっ」

 

田中君、軽いなぁ。

今なんて、もうあんなにでっかくって怖いだけなのに。

 

「   ゜   ゛ 」

 

ときどきうわごとを呟いてるし、きっと大変な思いをして気絶しちゃったんだね。

 

うん、理央ちゃんとかいつもこんな感じだし、おまんじゅうはだいたいこんな感じだから慣れてるし、大丈夫大丈夫。

 

さっさと預けて帰ろーっと。

 

 

 

 

僕は、くたくたになってから思い出した。

 

「……そうだった……僕の住んでたとこ、壊滅してたんだった……いや、軽く流して良い事実じゃないけども、魔王さんがなんとかしてくれるの知ってるから……」

 

僕はもうくたくただ。

 

よく考えたらさ、僕、着慣れていないシスターさんみたいな服だし、靴も微妙に足の形に合ってないしで靴ずれしてきちゃったし。

 

ついでで田中君も、子供とはいえ疲れて寝ちゃってるから首元に自分で抱きついてくれなくって、だからすっごく背中丸めて歩いてたわけで。

 

「しかもバスも走ってないし、車も走ってない……誰にも乗せてもらえないで、隣町まで歩くの……?」

 

僕は――30分以上は歩いて、そろそろ疲れた。

 

もう疲れたよ。

 

だから、

 

「見てる人とか居ないし……良いよね?」

 

いくら田中君でも、この歳ならまだ年上から言われたことを素直に聞いてくれるはず。

だから別れるときに「2人だけの秘密だよ」とか言っとけば大丈夫だよね。

 

ばさっ――――――ふわり。

 

透明な羽根をぐーっと伸ばして舞い上がる。

 

「……この日、ほんとひどかったんだなぁ」

 

見渡す限りが瓦礫の山。

そして燃えさかる炎。

 

「僕の町なんか、壊滅するほどで……お父さんが居てそれだったんだもん。一体何が……ん?」

 

風の向きが変わった。

 

――誰かの声が、その風で運ばれてきている。

 

「……ふんふん、隣町と同じ方角……じゃ、こっちに行けば良いね」

 

すいーっ。

 

「ふんふーん♪」

 

本当なら国道をずーっと歩いて、その先の大通りからぐーってさらに行かないと隣町には行けない。

小学生の頃、理央ちゃんと冒険したときの道だから覚えてる。

 

けども――今の僕は、空を飛べるんだ。

 

 

 

 

「おい、聞いたか。隣町は壊滅だってよ」

「マジかよ……」

「あっちにはダチも知り合いも、家族だって多いヤツが居るってのに……」

「何だよ……巨大地震でもないのに、こんな被害って……!」

 

災害時の指定避難場所。

 

柚希から見て、隣町の小学校。

その校庭も校舎も、傷ついた人々であふれていた。

 

「ダメだ、ネットどころか電話すら通じない。こりゃ、ヘタしたらこっちはまだマシな方で、都市圏どころか国自体……」

 

「そんな! じゃあ救助は……!?」

「通信以外はまだ……水も電気もガスも通じているみたいだが、食料なんて備蓄分が尽きたら……!」

 

彼らは、未曾有の事態に絶望していた。

 

――それもそのはず、なにしろ町が一瞬で消滅し、その方向から逃げてきた人々が口々に「化け物」から襲われたと証言しているのだから。

 

「……錯乱している人たちには、診療所の――先生が鎮静剤を……」

「だけど、その話を聞いていた人も多く、混乱が……」

 

職員室――そこには教職員ほか町の顔役や各年代のリーダー格が揃い、無いなりに情報を整理して人々を保護、看護に努めている。

 

人は、危機に際して責任感だけでまとまることができる。

それが片田舎の、短くても10年20年の顔ぶれだらけならなおさらだ。

 

けれども――彼らも責任感だけで動けているだけで、ひとたび長期化したり「化け物」が直接に襲来してきたら――。

 

「……てことは、あの柚乃ちゃんも……」

「ああ……残念だが……」

 

「星野先生もか……素晴らしい先生が……あまりにも惜しい」

「……壊滅したらしい地区に、あの子たちの引っ越し先があったはずだ。つまり、もう……」

 

しん。

 

彼らは、希望を失っていた。

 

だが――

 

「……お、おい! 大変だ!」

 

「! どうした、化け物でも来たか!?」

「い、いえ、それが……」

 

教員室へ駆け込んできた――見張りをしていた教員たちが、彼ら自身も戸惑いながらも報連相に務めようとしている。

 

「……人が」

 

「人が? 避難民か?」

「済まない、もうそろそろ収容人数が――」

 

「――羽を生やした人が、上から降ってきました!」

 

「………………………………」

「………………………………」

 

しん。

 

先ほどとは違う方向性の静寂。

 

「………………………………」

「………………………………」

 

「……?」

「……?」

 

人々は混乱し――結論づけた。

 

「……そうか、大変だったな……」

「――先生、――先生。医務室で精神安定剤を」

 

「ち、違います! 本当に人です! ……ほら、あの窓から!」

 

1人の若手教師が窓際へ駆け寄り――太陽でも太陽光を反射したものでもない、得体の知れない不気味な光を指差す。

 

「………………………………!」

「………………………………!」

 

「……人、なんだな!? どこかの国の新兵器とかじゃなくて!」

「はい、人です! 双眼鏡を持っていた避難民の人が、複数、はっきりと!」

 

「――よし、体育教師の――先生! 私たちが出ましょう!」

「! は、はい! 他の先生方は、至急校庭の避難民の人々を――」

 

彼らは駆け出した。

いざとなれば、自分たちが犠牲になろうとも――そんな気持ちで。

 

 

 

 

――数分後。

 

彼らは、信じられないものを目にする。

 

「あれぇ? なんでこんなにみんな集まってるのぉ……?」

 

――半透明の羽根を4枚広げ、ふわりと校庭に――教師ほか、腕に自信のある市民が取り囲む場所へ降り立った「少女」を。

 

「……幻……では、ないのだな……?」

「集団幻覚でなければ」

 

「! あれは隣町の田中君だ!」

「助けてくれたのか……しかし、彼女は……?」

 

「……天使、あるいは女神……?」

 

「いや、見慣れないものだがシスターのような服を……いずれにしろ、言葉を話しているのだから感謝の言葉からだ」

 

そんな素十人の大人に囲まれた「少女」は――しでかしたことを少し理解しながらも、ぽけーっとしていた。

 

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