ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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465話 チョコが来てた

「――――――シャーッ!」

 

「聖女さん!?」

「シスターさん!」

 

――無駄にレベルが上がっちゃってるから、視界に入ったらちゃんと見えちゃう。

 

ほんの数秒で僕の真上に――翼を狭くして加速して突撃してくる、体感でだけども初心者ダンジョンでいえばボスクラスのモンスター。

 

僕には、戦う力なんてない。

最初からずっと、僕はみんなに守られていた。

 

唯一がんばったのが、おまんじゅうと出会ったあのとき。

モンスター同士なのに、いじめられている子が居たから。

 

だから、持っていた傘でなんとかやれたんだ。

 

けども、今の僕は――武器はみんなに返しちゃってるから、持っていない。

みんなが戦えるようになったのを遠くから見ていたから、僕の周りには誰も居ない。

 

レベルがあるおかげで――誰も間に合わないってはっきり見えちゃう。

 

……そっか。

 

僕、みんなに着いてってただけだけど、それなりにはレベルが上がってるんだ。

全然これっぽっちも感覚なんてなかったけども、ようやく実感した。

 

コウモリさんは、もう目の前――直上。

 

きっと痛いだろうな。

ケガくらいはするだろうな。

 

レベルが上がってるから一撃でやられることはないだろうけど、しばらく動けなくなっちゃうし、まだ治癒魔法を使える人とかも限られてるからお医者さんにちょんちょんってされちゃうかな。

 

パーティー単位でならもっともっと強い敵とかと戦ったけども、怖いものは怖い。

 

それに――いつもは、おまんじゅうが居たから。

 

あの子がいれば、びーって敵をやっつけてくれる。

けども、その子はどっかで落としちゃって居ない。

 

痛いかな。

血が出ちゃうかな。

 

泣いちゃうかな。

みんなを困らせちゃうかな。

 

こんなとき、いつもならいろんな形に変形できて守ってくれるあの子ならきっと――

 

「ぴっ!」

 

――『任せて』。

そんな声が聞こえた気がして――

 

「んぁっ……♥」

 

「「「!?」」」

 

僕の体をぬめぬめぞわぞわっと舐めながら駆け上がっていくさらさらとした感覚。

 

「ん、やぁっ……♥」

 

ふとももからおまた、おしりからおへそ。

おまんじゅうのせいでぴりぴりするお胸にわき、二の腕に首筋。

 

体の力が抜けるほどに、くすぐったい感覚。

 

「「「      」」」

 

変な声が出ちゃって、体がかくっとなって、思わずしゃがみ込んで。

 

そうして僕の前を駆け上がって飛び出して――そのままに、僕の顔目がけて降ってきていたコウモリさんを、銀色の液体が包み込む。

 

「キュー!?」

「ぴ」

 

――きゅっ。

 

銀色のそれは、コウモリさんを包囲し――中の質量をゼロにする。

 

――ぽとっ。

 

空中で1回跳ねた玉は、そのまま地面に落ちてきて――からんと魔石を吐き出して。

 

「……チョコ?」

「ぴ!」

 

ふるふると丸まり直した――僕の体温であったかくほやほやしている、チョコが――目はないけども、僕を見ていた。

 

 

 

 

「チョコ、いつから?」

「ぴ」

 

「……僕があのかっこいいでっかい玉の中に入った最初から……なら言ってよぉ」

「ぴ?」

 

チョコが送ってくるイメージ的に、僕がうっかりあの玉に入ったときに僕のところへ飛んできて――ゆっくりと僕の体を包んでいたらしい。

 

「うん……確かに危ない場面だったけどさ」

 

チョコは、僕の体の隅々まで守ってくれていたらしい。

 

首元からおまたから――さすがに先っぽまではどうかと思うけど――足の指までを、体温そのままになって完全に分からない状態で。

 

「でも、今回は守れない頭の上から降ってきたから……そっか、それで」

 

つまり――もともとそこそこのレベルがあるから、そのへんを歩いてる高校生よりは頑丈なはずの僕の体は、首元までならチョコの頑丈さでへっちゃらだったらしい。

 

だから今まではずっと張りついて寝てるだけだったとか。

 

「ああ、それで汗とか少ないなぁって」

「ぴ」

 

「おいしい? 汗っておいしいの?」

「ぴ」

 

「しょっぱいのかぁ……あと僕の匂いがおかずに? んー、おかずって言えば、確かクラスの男子たちも女子たちも変な匂いさせながら言ってたような……?」

 

どうやら僕の汗は、ごはんでありおかずらしい。

 

……スライムだもんね、そういう生態なんだ。

別に変な意味はないだろうし、そんな感情は伝わってこないし。

 

「ふふっ……良かった」

「ぴ?」

 

「僕、つい1人で散歩しに来ちゃってるから……実は帰り道とか分かんなくって」

「ぴ!」

 

――『1人じゃないから大丈夫』。

 

そう、言ってくれている。

 

「ありがと。大好き」

「ぴ♪」

 

「「「      」」」

 

「「「   」」」

 

あたりを見回すと、もうモンスターの群れは撃退し終えたらしい。

初めての戦いで疲れたのか、みんな座り込んでうつむいてるし。

 

「チョコ」

「ぴ」

 

「君のこと、みんなに紹介するね。僕の、友達だって」

「ぴ!」

 

チョコににゅるんって擦られたせいで力が抜けていた体も、もうへっちゃらだ。

 

「この人たちを小学校まで送って……僕たちも帰ろう。メイドさんたちに心配かけちゃうもんね」

「ぴ!!」

 

そうだった。

 

僕が遊びに来てから、既に数時間。

なんで入ってきたのかはもう忘れちゃったけども、あんまり長居してたら困るはず。

 

「魔王さんにも言わないとね。泊めてくれてありがとうって」

 

そうだ、きっと今でも理央ちゃんたちはお城の前で困っているはずだ。

メイドさんが連れてきちゃった僕が、まだ出てこないまだ出てこないーって。

 

「ひと晩寝ちゃってたから、みんなも野営とかして待ってるのかな……それとも帰っちゃったかな? まぁいいや、今から急げば良いよね」

「ぴ」

 

1人で探検して最初は楽しかったけど、途中から心細かったらしい僕は、大切な友達を手のひらに載せて、空を見上げる。

 

「……え゛。こっそり僕の排泄物を……? え、えっと……いやまぁ、そういえばトイレ行きたくならないなって……」

「ぴ?」

 

ついでに僕は、モンスターと人間の価値観の違いを実感した。

送られてきたイメージは……うん……あんまり嬉しくなかった。

 

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