ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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489話 わんことお馬さん

「わふっ」

 

のっしのっし。

 

新鮮なソーセージを堪能した5つ首ケルベロスが、尻尾をぶんぶんと振り――踵を返す。

 

「うん! 悪い魔王退治、がんばってねー!」

 

「……魔王?」

「うん、あのわんこが言ってたの! 今から戦ってくるって!」

 

純粋な少年――童が両手を振ると、犬は振り返って尻尾を振りながら立ち去り、妖怪の行列に紛れ込んでいく。

 

「……そういえば……私たち、目の前だったのに……1匹も、襲ってきていない……?」

「だって、あの子、行ってたよ? 『人を食べちゃダメ』って言われたからって。『友達になったから』って」

 

「……誰に?」

 

「えっと、ご主人様だって。優しくてかわいいんだって」

 

「………………………………?」

 

【………………………………?】

【………………………………??】

【………………………………???】

【?????】

 

【あの  もしかして:ユズちゃん】

 

【まさか】

【ありえないでしょ】

【お前はこれまでなにを見てきたんだ?】

 

【ごめんなさい……羽ばたいてきます……】

 

【待て、早まるな】

【そうだぞ、どうせみんなすぐに居なくなるんだぞ】

【最後の一瞬まで生きるんだ】

【脳が回帰するまでがんばろうよ】

【草】

 

【えっと……だいたい分かったんだけど……ほら、ユズちゃん】

 

【そっとしといてやれ……みんな、疲れてるんだよ……】

【草】

 

【魔王ちゃんを始め、賢くて理知的で責任感がある人ほどダメージを受けて回帰するのがユズちゃん  そして子供には影響がないのがユズちゃんだからな!】

 

 

 

 

――どこっどこっどこっどこっ。

 

「「「きゅひひひひひ……!」」」

 

「はーい、次は右カーブだからねー」

 

僕は立派なお馬さんになっているおまんじゅうに乗って、みんなに指示を飛ばす。

 

「ぶつからないようにねー。この謎空間からコースアウトしちゃったら追いかける時間ないから置いてくよー。君たち好みの女の子……それか男の子でも良いんだっけ……雑食過ぎるよね……ともかく、紹介したげられないからねー」

 

どこっどこっどこっどこっ。

 

僕は、何もすることが無いから見ていたテレビで走っていたお馬さんたちを思い出す。

 

なんでも週末は、いつもどこかでお馬さんたちのレースがあるらしい。

 

家で着けてたテレビとか、あとはバイト先の――おじいちゃんばっかりの喫茶店の分厚いテレビとかで観たことがあるんだ。

 

お馬さんの上には人が乗ってて、ばしばし叩きながら競争をしていた。

 

あるレースの直後に『柚希くん……どうしよう。おじいちゃん、お馬さんで勝っちゃった……』って真っ青な顔をしつつ怯えていたお客さんが居た。

 

お馬さんは怖いらしい。

あんなにかっこいいのにね。

 

ちなみにそのお客さんは、後日お母さんのお見舞いで高いフルーツの詰め合わせを置いてってくれた。

あれはすごくおいしかったんだ。

 

そんなことを思い出すくらいにかっこいい、お馬さんのレースのような光景――ただし全頭が真っ白で、ツノが生えてて、さらには羽も生えてるけども。

 

「んー……こっちかなぁ。次のカーブで左だよー」

 

おまんじゅうからは「ムチでしっかり叩いてほしい」って念が飛んできてるのを無視しながら、声で行き先を誘導。

 

ムチで叩いて喜ぶのは理央ちゃんくらいで充分だもん……やだよ、叩くたびに白目剥くおまんじゅうとか……理央ちゃんみたいにはぁはぁ言うのとか……。

 

「すっかり寄り道しちゃったけども、とんでもない数のドラゴンが来てるんだ……魔王の侵略なんだ……お城で優しかったお姉さんの魔王さんみたいに話が通じるとは限らないんだ……」

 

どこっどこっどこっどこっ。

 

自然、おまんじゅうのたてがみをかき分けている手綱を握る手が、じとりと湿る。

 

「……急がないと。もしあんなのが来ちゃったら……」

 

『――――――――……』

 

「?」

 

僕の耳元へ――誰かが、話しかけてきた。

 

「誰? ……女神様? ノームさん?」

 

その声は、どうやらなにかをちょっと手伝って欲しいとのこと。

 

「そんな余裕は……や、今は君たちが居るか。おまんじゅう!」

「きゅいっ!」

 

ぐんと速度を上げたおまんじゅうが、頭ひとつ――胴体ひとつ――お馬さん1頭分、2頭分と、固まって走るユニコーンさんたちから距離を取る。

 

――おまんじゅうは、ずっと戦ってくれていた。

 

そのおかげか、ユニコーンの巣に居た彼らよりも圧倒的に速く走ることができる。

ビームだけじゃなく、こうして乗り物としても優秀になってるんだ。

 

「みんなはこのまま……えっと、まっすぐかな。あっちに行って、出た先で悪いことしてるモンスターとか居たら倒してて。僕はちょっと寄り道してくるね」

 

「きゅい!!」

「きゅっきゅっ!」

「ぎゅひっ!」

 

「え? かわいい女の子? ……紹介するから、今は真っ直ぐ走ってて……お願いだから……」

 

彼らの番――結婚相手を探すっていうのを餌に、仮の主従関係――テイムをして連れてきているお馬さんたち。

 

彼らの意思はただひとつ、「かわいい女の子(それかかわいい男の子……ほんと見境ないね)を紹介させて」だ。

 

「ほら、ピンチから救ったら女の子たちからきゃーきゃー言われるから……もしかしたらハーレムも期待できるかもよ」

 

とか言っとけば――

 

「「「!!!!」」」

 

どどとどどっ。

 

先に加速してコースから外れた僕たちを――すさまじい加速度で追い抜いていくユニコーンさんたち。

 

彼らの目は――真っ白な体に真っ白なたてがみが台無しになるほどに血走っていた。

 

「……いつも女子たちが言ってる『男子たちはバカだから』っての……今、初めて実感したよ……」

 

「ぴ?」

「うん、チョコはそのままで居てね……お願いだから……」

 

おまんじゅうはもうダメダメだけど、チョコはまだ汚染されずに済んでいる。

 

……いや、暇さえあれば僕の体に張りついていろいろ吸ってきてるあたり、もしかしたら……って思わなくもないけども、それでも信じたいんだ。

 

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