ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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497話 【悲報・唐突な修羅場】

「……失礼致します、魔王様。御身のご容態は」

 

柚乃の独壇場となった――奪われた玉座へ、絶妙な機を逃さないメイドが切り込む。

 

「むっ」

 

「魔王」と自分を引き裂くがごとくに素早く魔王の胸元へと詰め寄ったその彼女へ柚乃が怒りを抱きかけるも、

 

「柚乃」

「……むぅー」

 

魔王の取りなしでひとまず収まったようだ。

 

【!!】

【メイドさん!】

【ああ、救世主】

【これは瀟洒】

【\50000】

【草】

 

彼女への応対のためか、柚乃へのそれへ崩していた表情を精悍なものに戻しながら、王は口を開く。

 

「――うむ、待たせた。問題は無い、世話をかけた。聖女、女神――そしてコアと、度重なる負荷により……私の魂が一時的に『座』へ退避。その際、先代により『器』となられた勇者――『父』に肉体の支配権を委ね、『座』にて彼と先代に慰めていただいただけのこと」

 

【?】

【??】

【急に何言ってるの魔王ちゃん】

【「父」……まさか……いや、そんなことは……】

 

「今の私は……うむ。玉座で、父の膝に乗せられて話している状態……と言えば伝わるだろうか。幼い私だけではこの器をまだ卸し切れていないゆえ、父が半分を補助してくださっているのだ。過去には摂政として先代が今代を支えた事例もそれなりにあるはず……問題はないだろう」

 

「なんと……!」

「本来であれば『座』に至った魔王様や『器』の魂たちは永久の眠りにつかれるはずですのに……!」

「魔王様……!」

 

【???】

【伝わらないな……】

【伝わらないね……】

【もうやだ! やだ! わぁぁぁぁん!!】

【かわいそうに……】

 

がやがや、と――どうやら魔サイドへは事実が伝わっている様子。

 

一方で人類はあいかわらずに置いてきぼりだ。

それもこれも、

 

「むーっ」

 

……柚乃が、嫉妬のせいで説明というものを忘れているせいで。

 

「――『転生』してから、10年と少し。まだ日が浅いことが幸いしたようだな……通常ならば新たな魔王は数十年、隔絶された環境で教育を受けるため平和な環境で育つゆえ、今回のような……魂を揺るがす苦痛を受けずに済む」

 

【もしかして:魂を揺るがす苦痛=ユズワールド】

 

【草】

【草】

【ああ……ユズワールドは脳みそを開花させて魂を昇華させるからな……】

【高次元生命体になれそう】

【ちょっと試して……怖いからやめとく……】

【それが良いと思うよ】

 

「だが逆に、早かったがゆえに器の魂はまだ眠りについておらず……不甲斐ない娘を支える父のように、助けてくれたのだ。今もこうして、娘たる私を支えてくださっている。あと数十年遅ければ厳しかっただろう」

 

「そう、でございましたか……」

「先日――10年前、いえ、11年前の先代のご判断は……正しかったのですね」

 

魔王たちは、彼女たちにしか分からない会話を繰り広げる。

 

人間サイドは――あとついでに、やはり柚乃に腕をつかまれたまま物理的に魔王とのあいだに挟まれている理央は、まったくに事情がつかめない。

 

「!」

 

だが、理央は唐突な危機を覚え――

 

「      」

 

――とさっ。

 

膝から、そして腰と胴――側頭部と、赤い絨毯へ崩れ落ちる。

 

理央は――自ら、理不尽な環境へのストレスから――完全に意識を手放した。

ここが分厚い豪華なじゅうたんの上でなければ、側頭部を強打していただろう。

 

【え?】

【あっ】

【草】

【悲報・理央様、崩れ落ちる】

【あの、理央様  なんかおめめから光が……】

【なぁにこれぇ……なぁにこれぇ……】

 

【ユズちゃんを相手にさんざん学んだだろ?  理不尽展開は、ただ眺めるものなんだよ……】

 

【そうだったな……】

【どうせみんな  ユズワールドに取り込まれるんだ】

【どうしてそんなこというの】

【草】

【もはや誰もが諦めの境地で草】

 

「――――――先生」

 

不意に、低い声が魔王城を揺らす。

 

「「!?」」

 

【!?】

【!?】

【誰だ今の】

【ちょうちょ】

【ユズねぇの声?】

【ほんと誰だよ今の】

【草】

【大混乱で草】

 

【なんか今、ぞくっとしたんだけど】

【なんか今、ちょっとちびったんだけど】

【なんか今……あ、もう漏れ】

【あ、見てた配信者が漏らしたっぽいわ】

【草】

【草】

【大惨事で草】

 

柚乃から発せられる声は――少しでも地元を離れたとたんに中学生、あるいは小学生とも――服装のチョイスや話し方、なによりも柚希とセットゆえに――誤解される見た目にぴったりの声は。

 

「せんせい」

 

この場では理央だけが知る、「怒り」を含んだ音色になっていた。

 

「ねぇ――センセイ」

 

「      」

 

理央は、知っている。

 

――普段は絶対に怒らないタイプの人間は、怒ると本当に怖いのだと。

 

怒りというものを知らない童女にしか見られない柚乃は――「母親」になったとたん、怖いのだと。

 

手放し、宙へふよふよと漂う理央の意識は――それでも恐怖した。

 

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