ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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525話 【七稜郭駆け込み配信】

――ギャギャギャッ!

 

七稜郭前――観光名所兼七稜郭ダンジョンからモンスターがあふれないように武装を施してある、通称「七稜郭タワー」前。

 

それは七稜郭という掘の外に建造された場所にある――七稜郭と言えば七稜郭ではあっても、七稜郭ではないと言えば七稜郭ではない位置――掘りの外側に位置している。

 

ゆえに、七稜郭――7つの突き出た星形ならぬ七つ星型の陸上要塞、その堀の外側に所在する塔の前を、とっさに動けた人員を詰め込んだトラックが駆け抜けていく。

 

七稜郭というダンジョンの出現した要塞は、モンスターがあふれたときのために自走砲や戦車すら通行可能な橋が架けられてはいるが、いざというときのために橋ごと落とせるよう、幅は最小限。

 

そんな道を――道の端を徒歩で走る人々の横を疾走するトラックや車の数々。

 

制限時間が突然に60秒と定められた以上、多少の事故はお構いなしの吶喊だった。

 

「地下300m~地上1000mは転移が転移するとのアナウンスがありました――が、その周囲はどこまでか明示されていません! 七稜郭対岸のエリアの方も、希望者以外はリストバンドで至急全員退避してください! この先は未知のエリア――帰還不可能な可能性も考慮の上で選んでください! あと30秒で!」

 

タワーより、声が割れるのも構わずに警告が発せられる。

なにしろ、たったの60秒――30秒、いや、20秒なのだ。

 

「橋は車両に轢かれます! 軽装備の人はそのまま掘りへ飛び込んで泳いで! 」

「轢いちゃったらごめんなさい!」

 

人々の真横を――本来なら危険極まりない行為を、ダンジョン用の装備を身につけているとはいえ生身の人間のすぐ横を巨大なタイヤが走り抜ける。

 

「60秒とか短すぎだしどこまでか分からないから困るよこんなん!」

 

「あと何秒!?」

「とにかく駆け込め! ユズちゃんのことだから早くなるか遅くなるかも分からないんだぞ! ――ええい、ままよ!」

 

――ドッドッドッドッ――ドンッ。

 

明らかに通常の人類を超えた速度を出した人々が――おもむろに跳ね、一気に対岸へと飛翔していく。

 

「あ、高レベルのやつらずるい! 掘りをジャンプで突破しやがった!」

「レベル15くらいであんな芸当が……いやいや無理だろ!?」

 

「なぁにこれぇ……」

 

そこまでレベルはないらしい人々が、それを見て口を開けながらも全力を出して加速し、走り抜ける。

 

ユズワールドは、すぐ目の前なのだ――ためらうことなく、恐怖を覚える速度を出しながら駆けるその規模は、まるでダンジョンの中での戦闘のよう。

 

「良くわからんが、ダンジョンが地面から出てきて突き出してるからこの周囲はダンジョンの中並みの身体能力――ま゛っ」

 

「あ、あいつ、よそ見してたから掘りに激突してら。けど確かに頑丈になってるな、体」

 

「すげー、走った勢いのままで水面走ってたぞあいつ」

「言ってる場合か!? ……すげぇ、水の上走ってる俺!」

 

【草】

【生やしてる場合じゃないけど草】

【なぁにこれぇ……】

 

【なんの予告もなく突如としてユズワールドが展開されるから阿鼻叫喚の七稜郭ダンジョン前の定点映像だよ】

 

【おろろろろ】

【ユズちゃん……どうして……】

【あんのロリっ子め……久しぶりに動きがあったと思ったら】

 

【あっ……トラックにダンジョン潜りがはねられてリストバンドで】

【草】

【かわいそう】

【あーあ】

 

【てかみんなすごくね……?】

【ダンジョンが地上に露出してるのが、こんな形で】

【ダンジョンの中ではレベルとスキルと経験に応じて身体能力が向上するの、外に出ると普通なら相当減衰するのになぁ】

 

【水面走るやつが居るわ、対岸からそのまま水平に飛び越えるやつが居るわ、ジャンプして放物線を描きながら叫び声上げながら地面に墜落してるやつが居るわでカオスでしかないな!】

 

【草】

【なぁにこれぇ……】

【ダンジョンが地上に露出とか、今まで無かったからなぁ】

【あった地域はとっくに滅びてるしねぇ……】

【おろろろろろ】

 

警報の鳴り響く――ダンジョンがあふれたときと同等以上の警戒音だ――七稜郭ダンジョン前。

 

空は黒い霧で覆われた上に赤い月が爛々と光り、大半は消えたもののまだまだ上空を泳いでいるダンジョンの数々がその光を遮って黒い星となり、おどろおどろしい光景が広がる出海道――その南端の半島、七稜郭付近。

 

七稜郭の掘で囲われた要塞の中心にそびえるのは、地下から地面へと盛り上がって100メートルほどはある七稜郭ダンジョンのむき出しの多重構造。

 

まるで建築途中で放棄された巨大マンション――それが数十年放置されたかのような恐ろしさも、今、気にする人は存在しない。

 

そびえる七稜郭ダンジョンの直上に静止している魔王城は、柚希たちが来る前まで攻略していたダンジョンを下につきだしている形で微動だにしない。

 

七稜郭タワーや七稜郭公園の柵や施設、周囲の建築物や、また人を跳ね飛ばしながらも七稜郭へ駆け込む軍用車や勢いのままに飛び跳ねる人々を除けば、完全に魔界も同義の環境で――人々は狂乱していた。

 

【残り何秒!?】

【10秒!】

【いきなり呼び立てて1分で駆け込めとか】

【ユズちゃんだからねぇ……】

【あっ、もう時間切れ……】

 

――――――がこん。

 

何か、とんでもなく大きな音が上空で響く。

 

その音に、移動していた人々が一斉に硬直する。

 

【ひぇっ】

【何が起きるのぉ……?】

 

全員が、空を見上げる。

 

そこには――ユズワールドが展開していた。

 

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