ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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527話 遊びに来ていた女神様

急に疲れた僕は、エリーさんたちに支えられながら地面に腰を下ろしている。

 

「ゆずきちゃん、だいじょうぶ?」

 

「先ほどは一体、何をされたので……? あと、お願いですのでどうか何か重大な決断や行動をされる前には、せめて、せめて一言でも……!」

 

エリーさんが何かを早口で言ってきてるけど、ぼーっとしてる僕の頭には届かず、さっきしたことをぼんやりと思い浮かべる。

 

「えっと、僕のレベルを使って仲間を呼ぶ魔法を……けつえん?システムも使ってるって」

 

「? それ、なぁに?」

「あんまりよく分からない……」

 

「よく理解されずに許可してはいけませんよユズ様!? 相手は親族です、世界の半分を導いていました偉大なる種族の末裔ですよ!?」

 

「ごめんなさい、でもあの子の魔法だから大丈夫だろうって思って」

 

――どぉん、どかぁん。

 

きーんってなってた耳が治ってくると、目の前で起きている戦闘音が聞こえるようになってくる。

 

「戦況は……どう、ですか?」

 

「……敵が急に攻勢に出たようで、向かって右側が突破されつつあります。ワタシたちで上空から声をかけ、一時的に戦線を下げ、同時に休息中の皆様を動員して対応に当たらせていますが……」

 

エリーさんが指差したずっと先は――確かに、もくもくと土煙も立ち上っているし、上空からはおやびんさんたちのワイバーン部隊による火炎放射、巨人さんたちが移動しているのがうかがえる。

 

僕がぼーっとしてるあいだもちゃんと戦ってくれてるのは嬉しいけど……まだ、ぼーっとしてるなぁ。

 

「ありがとうございます……ふぅ」

 

僕の中にあったたくさんのものが、ごっそりと抜けた感覚。

 

それがなんだか妙にだるくって――

 

「のむ?」

 

「あ、ありがとうございます。くぴくぴくぴ」

 

僕はつい最近に聞き慣れた声から手渡されたコップを受け取って――そういえば、からっからになってた喉を潤すために一気に飲み干して――

 

「……ぷはぁっ!? お酒!?」

「じょうもの」

 

しまった――これはワインだ!

 

お金が増えたからって毎日お酒を常飲するようになったお母さんからうざ絡みされてしょうがなく付き合って飲んだから分かる、これは赤ワインだ!

 

「――うにゃあああ!? し、親族――女神さまぁぁぁぁ!?」

「ぶい」

 

アルコールでむせた僕がけほけほとしたのを、ぽんぽんと背中を軽く叩いてくれる小さな手。

ひりひりする喉を我慢して目を開けた先には――黒い女神様の真っ赤なおめめが、僕をじっとのぞき込んでいた。

 

「女神様?」

「ん」

 

ちょっと前ぶりの彼女は、なにひとつ変わっていない。

 

ただ前のときよりはずっと明るい場所に居るから、お人形さんみたいに整いすぎてる顔がはっきり見えて新鮮なだけ。

 

「しんぞく……わたしたちの、しはいしゃさま……かわらない、ずっとまってた……」

 

「おひさ」

 

ひなたちゃんは興味津々で――なにしろひなたちゃんと同じくらいの幼い女の子だからね――黒いくせっ毛の中の顔をのぞき込んできていて、ちょっと離れたところでは巨人の子が土下座?をしていて。

 

「――ぶくぶくぶく……」

 

「? エリーさん?」

「あーあ、気絶しちゃった」

 

振り返ると、エリーさんが地面に崩れ落ちた姿勢で泡を吹いていて。

 

「?」

 

「ぐっじょぶ」

「あ、どうも」

 

むせるのが収まって――追加で受け取った飲みものは、警戒してたけど普通の冷たいぶどうジュースで安心して飲み干して。

 

「……ぷは」

「いいのみっぷり」

 

そういやこの子、どっから来たんだろう。

さっきまで居なかったよね?

 

「てんいしてきた」

 

「へー」

 

君、すごく長い髪の毛は一体……あ、なるほど、頭のすぐ後ろに光る渦を作り出してそこにしまってるんだね。

 

もしかしてその先って、一緒にゲームしてたあの部屋かな?

 

「『げーむ』、たのしんでる?」

「ゲーム……あ、はい。UIさんは便利ですね」

 

無表情だし話のタイミングが妙にずれてて話しかけにくいし、そんな黒髪の子はどこか満足そうに頷いて立ち上がる。

 

「えんぐん」

「あとじゅっぷん」

 

「援軍……呼んでくれたんですか」

「ん」

 

「さっき、星――★を使うってのも」

「ん」

 

「エリーちゃんとわたしが来たから……次はりおちゃんたち?」

「ん」

 

「ありがとうございます」

「ん」

 

――理央ちゃんが、来てくれる。

 

そう思ったら、だるい体も急に元気にあふれてくる気がする。

 

「まおうぐん」

 

すっ――黒い翼をぱたぱたとしながら、彼女が上を指す。

 

「ここをみつけたへんきょうぶたい、くる」

 

「いまのせんりょくで、じゅっぷん、たえる」

「ないないのじかんさ」

 

「?」

 

心持ち上機嫌に説明してくれるけども……うん、やっぱりよく分からない。

 

けども、援軍が10分後に来るってことだけは分かるんだ。

やたらと広くてでっかすぎるダンジョンでたくさんのモンスターたちと交戦している今は、それだけが分かれば充分。

 

少し前までは、この状況が数ヶ月とかかかりそうだからどうしようって話していたんだ――逆に急がされるんなら、やる気も出てくる。

 

期限が決まっているからこそがんばれる――エリーさんが、そう説明してくれたよね。

 

だから、あと10分――戦い抜こう。

 

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