ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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534話 敵の突撃

【テイムモンスターが30匹、HPを喪失し魔力で構成する実体を維持不能のため、戦線を離脱しました】

 

【魔力プールにて修復モードへ移行します】

 

【戦線構築に必要なモンスターからリペアし、HP50%で戦線復帰をオート選択しました】

 

【味方損耗率:20%】

 

【敵魔王軍の中央突破:オート指揮モードを続けた場合、200秒後に達成の見込みです】

 

【テイマーによるマニュアル指揮が推奨されます】

 

ぴこぴこぴこぴこ。

 

数秒おきに伝えられるUIさんのメッセージに慌てた僕は――「こういうのって、戦記物とかで負ける将軍さんの典型的なパターンだな」ってどこかで僕自身のことを見下ろしながら。

 

「――引いて! みんな、とにかく引いて! できるだけ削られないように下がって!」

 

それでも、みんなを失うっていう恐怖から手が震え、具体的な指示も何もない声を発する。

 

――今までずっと、テイムした仲間は数が限られていたから。

 

ここまでの劣勢は――わりとよくあったけども、それでも逃げ遅れたり1番弱っちいのが僕自身だったから。

だから、こんな気持ちは経験したことがなかったから。

 

「真ん中の子たちは左右に避けて! 僕のことは良いから、とにかく敵を素通りさせてから陣形を……」

 

UIさんに映るマップを見つめながら、1匹でも多く生き残ることができるように――冷静じゃないって分かってる曖昧すぎる指示を、情けない指示を大声でかけていく。

 

――急に変わった戦況へ対応できていない僕には、これしかできないから。

 

「エリーちゃん、これって……ふつうじゃ、ないよね?」

 

「……想定をはるかに超える規模の援軍が来ているようです。モンスターの補充ペースが、先ほどまでの数十倍に……相手のポップエリア周辺へ膨大な魔力が注がれています。しかもこの感覚は……転移魔法でどこかから……」

 

「みかた、きえる……みんな、きえるの? まおうさま……ゆずが、きてくれたのに」

「ないないっ」

 

たったの2分、3分。

 

それだけで、これまでみたいにモンスターとしての攻撃ルーチンとか連携とかを気にして戦っていたはずの敵が、急にそれらを全部無視して――自分たちのHPも気にせずに突撃してきた。

 

これまではミサイル対ユニコーンさんたち、飛行系モンスター対ワイバーンさんたち、大型モンスター対巨人さん、そして小型モンスター対新しい子たちって形で均衡した――からこそ、エリーさんが数ヶ月続きそうって言ってたような、膠着した戦場になっていたのに。

 

いろんな種類のモンスターさんたちが居たはずなのに、それを活かして僕たちと膠着状態に持ち込んでいたはずの彼らが、意味のないサイズの個体までが意味もなく突撃を始めている。

 

敵の全軍――ボスフロアだと思い込みたい強さと多さだけども――が、突然に動きを変えてきた。

 

それへ僕たちがうろたえているうちに最前線へ行ってくれていた子たちが倒され、巨人さんたちも何体かが倒されて――気がつけば、敵の突撃を止めるだけの力が無くなっている。

 

数でも押され始めていて、勢いでも押されていて――気持ちでも、完全に押し込められている。

 

それを自覚できているのに、僕の体は追いつかないんだ。

 

「……これが、敵に指揮官が居る状態……そういうのがないからこそなんとかなってた僕たち人間が、ダンジョンを攻略できてた理由が……」

 

おでこが冷たい。

寒すぎて冷たい汗がながれている。

 

――人間は、ダンジョン適性さえあれば、あとは適切なパーティーを組んでレベリングをすれば、モンスターよりも強くなれる。

 

けども――HPが減っても攻撃力は衰えないモンスターに対し、人間はケガ1つでとたんに動きが鈍くなるし、心も怯える。

 

腕、足、お腹、胸、そして首に顔と、その場所でも極端に変わるし、なんなら吹っ飛ばされて背中や頭を硬いものにぶつけるだけでトドメにもなる。

そんな、弱い生き物だから。

 

そこまで行かなくても治癒魔法を使えたって痛いものは痛いし、恐いものは恐い。

レベルとスキルでそれなりに軽減されるけども、部位欠損してもへっちゃらなモンスターと、そんなところじゃなくなる人間との、差。

 

――だから、最初期はテイマーに目覚めた人たちの扱いはひどかったらしい。

 

そりゃそうだ。

だって、「悪い心を持ったテイマーの人が、たくさんのモンスターを率いて攻撃してきたら」――誰だって、そう思うから。

 

それでも世界中ですごい数の人たちがダンジョンを制覇した結果、今じゃ小学校の遠足でダンジョン探検ができるくらいには安全になって、だから僕のテイマーっていう遅咲き過ぎる適性も受け入れられた。

 

だけども、僕はその気持ちが今になって分かるんだ。

 

本来は敵である理解不能で人を食べて回るモンスターなんてのと友達になっているテイマーなんて、やっぱり怖いんだって。

 

――ぎゅっ。

 

「ユズ様、どうか冷静に……この場を支えられるのは、ユズ様だけです」

「ゆずきちゃん……元気、出して」

 

ひどい顔をしていたのか、両腕を抱きしめてくれるあったかさの先の2人は――泣きそうな顔をしていた。

 

僕は男なのに、女の子たちを泣かしそうになっている。

 

………………………………。

 

弱音、吐いてる場合じゃないよね。

 

経験がなさすぎてこんな事態を招いたのは僕なんだから、僕がなんとか解決しなきゃ……ね。

 

だって僕は、男なんだから。

 

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