ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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535話 追い詰められても

「敵の指揮官……どこから見てるんだろ」

 

遙かな先の天井を見上げる。

 

巨大な――巨人さんたちサイズのダンジョンらしい四角の空間。

その天井は、薄暗くて不気味だ。

 

そこからその指揮官な誰かが――

 

「……ワタシがユズ様を襲ったとき、あるいはおやびん様が――さらにはあのミヅチが……と申せばお分かりになるでしょうか。ワタシたちは、ある程度ならば離れた空間からでも……視界の通っていない場所からでも一方的に支配下のモンスター、その周囲の情報を得て操ることが可能です。その距離にまで――非常に強力な魔族が近づきつつあるのでしょう」

 

「あ、はい、あのしっちゃかめっちゃかな感じですね」

「し、しっちゃか……ワタシの罪は、斯様に重い……」

 

「?」

 

敵の指揮官がどこかなってことにばかり意識を向けていたから適当に返事をしていた――理央ちゃんやお母さん相手はこれで30分は粘れるんだ――僕は、なぜか崩れ落ちているエリーさんを発見した。

 

「エリーちゃん、大丈夫。ゆずきちゃん、絶対そんなこと思ってないから。半分くらいちょうちょなだけだったから」

「それはそれで……うぅ……」

 

……今の僕、ちょうちょ?

 

………………………………。

 

これでもきりりとしてるつもりなんだけども……ひなたちゃんでさえ、ちょっと打算的っていうか怖い面が理解できちゃうリリスモードにならないといけないかなぁ……。

 

「それにしても、あのモンスターさんたちは、戦場全体を見てあの中央突撃を選んだ……んでしょうか」

 

そのテイマー――指揮官がモンスターを使い捨ての駒として運用までしたら、こんなことが。

 

ううん、僕は知っている。

 

図書館でわくわくしながら読んでいた戦乱の時代の英雄譚では、英雄たちはみんな奇想天外な戦い方をしたりしていて……今みたいに、ある程度の損耗を覚悟の上で不意を突くなんてのはよくあることなんだって。

 

――そうして負けて消えていった人たちは、たくさん居たんだって。

 

「巨人さんたちが前線でばらけて持久戦しちゃってたから、真ん中ががら空きだった……のかな。ごめんねゆずきちゃん、ひなたも気づけなくって。せっかく呼んでもらえたのにね」

 

「ううん。最初から戦ってたのは僕たちなんだ。ひなたちゃんは何も」

 

UIさんの力を借りなくても、前を向いているだけで――僕たちの正面、まだまだ遠いけども確実に立ち上る砂煙は、少しずつ近づいてきている。

 

「………………………………」

 

僕の横で大剣を構えながらも、声の震えているひなたちゃん。

 

――間に合わなさそうなら、この子だけは。

 

テイム状態なら魔力次第で復活できるみんなはともかく、人間のひなたちゃんと――僕自身は、絶対に大ケガをしちゃいけないから。

 

なぜかエリーさんが突如として真下をのぞき込んでいるけども、今はそんな場合じゃない。

 

「……普通のダンジョンじゃボスモンスターでもこういうことをできるのはそんなに居ないけども、『外』から来た親玉が居ると……てことは、これからは敵のルーチンとか戦略がいきなり変わることもありえるのかな。……こんな場面で考察することじゃないけど」

 

敵の突撃――地上型モンスターたちは大小問わずフルスピードで走ってきていて。

 

その上空を、敵同士へのフレンドリーファイヤを気にせずに前線へ低空で飛び込んでくるようになったミサイル。

 

それなりの頻度で誤爆して勝手に自滅しながらも何割かはそのままこっちへ向かってきて――巨人さんたちが叩き落としたり、それともキメラの子たちが体を張って墜としてくれてる。

 

けども、そのせいで味方の後ろの方にも少しずつ被害が出続けている。

 

……良く見たら遠くの方に、小さな軍用車みたいなのに乗り込んで、そこからしゅぱしゅぱミサイルを飛ばしてる車が見えるけども、彼らがドワーフ?なんだろうか。

 

人にしてはやけに小さい――大きいので僕の背丈もなさそうだ――し、マップにはモンスターとして映ってるし。

 

僕が圧倒されて悩んでいるあいだにも敵は完全に僕たちの前線を突破、中央付近で再構築しつつあったモンスターさんたちの陣地も勢いで吹き飛ばしていく。

 

――HPがなくなるまで走り続けてくる大部屋中のモンスターたちは、まさに死兵。

 

もともと、モンスターたちは自分が死ぬことを――だって自我とかほとんどなくって、僕たち人間を食べるか倒すかすることだけしか本能にないから――恐れない。

 

戦争物の本でよくあるように、死を覚悟した兵士はとても危険。

だって、死ぬ直前まで突撃してきて――その勢いを怖がった敵を倒していくから。

 

ただでさえ自分が倒されることを気にしない彼らは、モンスターだからこそ死んでも復活できる。

 

それが介入してきた「何か」の力で無限に近く湧いてきたら?

 

それはまるで、僕が小さいときにあった11年前に、世界にダンジョンがあふれて――場所によっては文字通りに平らになった、あのときを再現した映像のよう。

 

「ゾンビアタック」――特殊な状態やスキルのおかげで無敵状態で敵を削れるような、ゲームでのハメ技みたいな戦法を意図的に取られたら、神様が着いてくれていようと、僕たちはもう――

 

「ゆず」

 

その神様が、僕の真ん前に来ていた。

 

「……ごめんなさい。集中できてなくって」

 

僕の悪い癖。

無駄に考え込む、癖。

 

これが普段なら特に意味のないことをぼんやり考え続けてるせいで「ちょうちょ」とか笑われるだけで済んでるけども、戦場では命取りなんだ。

 

……完全にふらふらしたら何かができそうな気はするけども、

 

「それはきけん」

 

「……危険なんですか」

 

「はばたきすぎるの、きけん」

「分かりました、がんばります」

 

思考放棄は、ダメ。

 

だったら、僕は。

 

「……手の空いている巨人さんたちや体の大きい子たちは、迂回しつつ中央手前――僕たちの方へ来てください。そこで、迎え撃ちます」

 

【全部隊へ共有しました】

 

最後まで、指揮官として――テイマーとして、がんばるんだ。

 

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