ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。   作:あずももも

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537話 5分間の戦いへ

「――――――ふぅっ」

 

僕は、ぐっとおなかに息を込めて――ふと、話しかける。

 

「……ねぇ、おまんじゅう?」

 

「きゅい?」

 

ぽふっ。

 

僕は、すっかり慣れた感覚でおまんじゅうの背中に乗り――体を倒して彼の首筋のふわふわとしたたてがみに顔をうずめて……ちょっとだけ、甘える。

 

「んーっ」

 

「きゅひっ」

「ぴぴっ」

 

最初からの友達で、男同士の友達として――おまんじゅうにだけは、弱いところも見せられるから。

 

「僕たち、最初から強すぎて……そのせいで全力を出したいときに出せなくって。けども何回もみんなとはぐれて魔力切れになるまで戦ったり、してきたよね」

 

「……きゅっ」

 

おまんじゅうのツノへ、魔力が腫れあがるほどに蓄積される。

 

僕は、体を起こす。

 

――覚悟が決まった。

 

そんな感覚。

 

「チョコ」

「ぴ?」

 

おまんじゅうのおめめの横とか首元、胴体や僕のまたがっているところを守るようにしてぺたっと張りついてるチョコが、こっちを見た感覚がする。

 

――座ってるおまたを伝って、僕の首筋までをうすーくだけども保護してくれている君は、いつも優しいんだ。

 

「君はいつも、僕たちを助けてくれたよね。壁になって、ボディスーツになって。……そして今は、おまんじゅうの攻撃と防御を手伝ってくれてる」

 

「ぴっ」

 

「君たちは――僕の、大切な友達だ。……ちょっと無理するけど、一緒に戦ってほしい。1番無理を言えるのは、君たちだから」

 

「――――――きゅいっ」

「――――――ぴっ」

 

――「任せて」。

 

2人からの、気持ち。

それを表すように、気のせいかおまんじゅうがひとまわりぐぐっと大きくなった気がして、

 

――――――ぐぃぃぃぃん。

 

平べったくなった一部がおまんじゅうのツノを包み込んでいたチョコが、うねうねと螺旋の形に薄く伸びていく。

 

これまでで1番に長い、砲塔へと変身していく。

 

「わ……♥ なっがーい……♥」

「あれが、ユズ様やおまんじゅう様のご立派様……♥」

「貫かれたーい……♥」

「インキュバスへのお情けは……ないのですね……」

「あれで後ろからうねうねと……ごくり……」

 

「こ、こらっ! こんな大切なときに発情しないでくださいませ皆様!?」

 

「「キュヒヒヒヒ……!」」

 

「ああもう、ユニコーン様たちまで……」

「ないない?」

 

螺旋、それはライフリング――砲塔内のエネルギーと命中精度、飛翔力を回転の力で向上させる力。

 

伸びきったチョコが作り出した形状――ぐるぐると巻いた彼自身の内側に形成される凸凹のおかげで、おまんじゅうのツノは――大きくなってるときの50センチくらいっていう長さから、5メートルくらいにまで細長く伸び。

 

「――じゃあ、行くよ。僕たちが全力を出せる、久しぶりの戦いだから。魔力も供給されるし、援軍も来るんだ……たったの5分っていう短い時間だけど、だからこそ、限界まで絞り出せる」

 

僕たちの攻撃が――初心者講習のときにはスライムさんたち相手にダンジョンの床まで溶かす攻撃をしちゃって。

 

ずいぶん我慢させられたあとに、後ろに来ていたクマさんへとっさにピンポイント攻撃をできるようになってから、ようやく戦闘に参加できるようになって。

 

でも燃費は悪いもんだから、長期戦では存分に戦いきれずに昏倒しちゃって。

 

空飛ぶヘビさんを串刺しにする攻撃は、あの、魔力を遠慮なしにぶっ放す感覚は、女神様――今来てくれてる子とは色違いの、金髪の子に教えてもらって。

 

「ここは、魔力がたくさんある場所――ならっ」

 

ばさっ、ばさっ。

 

僕たちは、一斉に飛び立つ。

 

視点が上がるにつれて、戦場の押され具合が――敵が細長い矢となって僕たちの真ん中を貫いてこようとしているそれが、はっきりと目で分かる。

 

――みんな、待たせてごめん。

 

でも、ここからは――反撃だから。

 

「僕は、ようやく――――戦える。たくさんの仲間と一緒に」

 

――――――びーっ。

 

ユニコーンさんたちの角から、一斉にビームが下方へ発射される。

それは突撃している敵の先端へ着弾し、じゅっと蒸発しながらその周囲の敵も吹き飛ばしていく。

 

「……おまんじゅう、チョコっ」

 

「きゅ――――――」

「ぴっ」

 

ぱぁぁっ。

 

角の先端から――これまでとは違って。

 

「最初に撃ってもらったとき」みたいに、範囲攻撃のレーザーが飛び出す。

 

それはよく見ると細いレーザーの束で、つまりは1点から何十本も発射される――シャワーのヘッドを回したときに痛いから僕が苦手な設定の、あれのようで。

 

狙った場所は――発射直前に広がりそうって思ったから、敵の奥のほう。

密度はそこそこに高くて、そこそこの数のあるモンスターの群れ。

 

それが――真っ赤になった床と、その上に転がっている魔石だらけの姿へと変貌していた。

 

【:】

 

【テイマー・ユズの拡散攻撃により、135体の排除を確認しました】

 

「――すごい……ユズ様の魔力とおまんじゅう様方のレベルで、ここまで……」

 

「おまんじゅう、チョコ。もっともっと撃って――敵の補充が間に合わなくさせるのが、僕たちのお仕事みたいだね」

 

「きゅひっ!」

「ぴぴぴっ!」

 

そうして僕たちは、たぶん、初めて――――――全力を出したんだ。

 

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