ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。 作:あずももも
「………………………………」
上空を――今まではワイバーン、亜竜たちが支配していただけの高所を、今や数十のユニコーンによる航空騎兵たちが駆け回っている。
彼らは柚希のテイムのおかげで10秒に1回程度、距離で減衰のしないレーザー攻撃――「無属性魔法」の攻撃を繰り出せる。
「………………………………」
ユニコーンたちが一時的に進化し、載せている見目麗しくて何よりも男女ともに紐しか身につけず、従って見ても良し、乗られても良しなえっちな存在に興奮しての、反則的な戦力。
さらにはテイム主の柚希という匂いも見た目も性格も声もことごとくに魅了してくるご主人様が存在することで――あるいはサキュバスとインキュバスの王であるリリスが君臨することで、その威力は跳ね上がっている。
それは、この近隣の世界の中で柚希とユニコーン、サキュバスにインキュバスという組み合わせが実現したからこその唯一無二な力。
それらが数十本ひっきりなしに地上へ降り注ぎ――1回の攻撃で、敵を全体の%単位で削り取っていく。
たったの1人で――いや、1人と2匹――3人が支配する戦場は、流れが完全に変わっている。
それ以外の航空騎兵たちは、彼らの補助を――「彼ら全員で柚希たち1騎」に相当する力で、地上を蹂躙していく。
「めがみさま、すごい」
「あれはまおうさまだぞ」
「せいじょさまらしい」
「さきゅばすでもあるらしい」
「………………………………?」
「………………………………?」
「よくわからないけど、まもる」
「まもる」
「めがみさまもそうだった――あのこもおれたちのこと」
「つたわってくる。あたまわるいおれたちのこと、ほんとうにともだちっておもってくれてる。だから」
――ずしっ、ずしっ。
巨体を横一列に並べ直し、少しでも敵の吶喊をと移動してきていた巨人たちの前で爆ぜていく、敵の先頭戦闘部隊。
そのおかげで稼いだ時間は――巨体による壁で修復されていく。
先ほどは不意打ちで何体かやられても、柚希の指揮の下でなら防御力が上がり――そう簡単には崩れない壁になるのが、彼ら巨人だ。
「「うぉにゃあこけぴ――――――っ!!」」
そのあいだを駆け回り、突如として爆発四散した仲間に動揺するモンスターたちは、数匹ずつのキメラたちに狩られていく。
ちなみにその指揮系統は「かわいすぎる娘に命令されたい」→「母よ!」「息子です!」→「そんなことより女装痴女って良いよね」だ。
よって柚希が脱げば脱ぐほどにその結束は強固になっていく完璧な布陣だ。
酷いペットたちだ。
おまけに、柚希が実は男という事実で余計に燃え上がっている。
性癖も酷いペットたちだった。
――――――どぉん。
その先では――部屋の奥でポップし、四隅のうち三隅から合流してきつつあった敵軍――「魔王軍辺境部隊支配下に入っている」モンスターたちが瞬時に蒸発、あるいは爆風で吹き飛ばされ、または非破壊オブジェクトである床が沸騰するついででスリップダメージを受けていく。
上空からのレーザーによるシャワーは、それほどまでの脅威。
だからこそ指揮官の存在する軍隊は、一定の戦力を対空戦闘へと割り振っていき――そのおかげで突撃の勢いは弱まり、味方は体勢を立て直せるだろう。
「………………………………」
だが。
「……まおうは、おりてくる」
その様を、黒き女神は見つめていた。
その戦いを、小さな両手をぎゅっと握りしめて観戦していた。
「さいしゅうけっせん、だから」
「この戦場/ダンジョンの遙か上方から迫りつつある脅威」を認識しつつ、それでも「友達/推し」の活躍を応援している。
HPが15%以下で回復するために固まっている、ユズの「友達」たちを背にして――彼女は、その戦いを眺めている。
「――てんじょうのたたかいは、そろそろちじょうへとおりはじめる」
彼女は、滅多に動かさない口を滑らかに動かす。
「かみがみのたたかいは、ひとびとのたたかいに。しんわからひとのよに」
彼女がそう告げると、巨大な魔法陣が展開され――
「んしょ」
――たと思ったら、そこへ出現した黒い渦へ彼女の腕を躊躇なく突っ込んだ!
「んー」
ごそごそ。
肩口までを穴へ突っ込み――まるでタンスと壁のスキマに落っこちた物を探すように、その中で腕をかき回している様子の彼女。
その姿は紛れもなく、ただの幼女。
けども――
「ん……あった」
――にゅるんっ。
彼女の戻した腕と一緒に現れてきたのは、
【ふぁっ!?】
【なんだ今の】
【画面どころか視界すら歪んだぞ】
【なんか見えちゃいけない亜空間ろろろろろ】
【こわいよー】
【いきなり画面が小さなおててに包まれて……ふぅ……ミクロサイズになって幼女に食われる性癖……捜索の旅に出るか……】
【えぇ……】
配信機材。
少し前まで柚希のユニコーンの角にぶら下がっていたそれは、魔王城のテーブルの上に忘れられていた。
しかしながら全人類の情報源としては最も大切なそれは、今や女神の手元にある。
「みんな、みて」
むふん、と――得意げな黒髪の少女は、そのカメラを戦場の中心へ合わせる。
「ゆずのかつやく。ゆうしゃのかつやくを」